『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』―映画は、経営は、リスクを取っているか? 宿輪純一のシネマ経済学(98)

誰もが知っている正義のヒーロー:スーパーマンとバットマンが、死力を尽くして戦うというというアクション大作。一番の見所は、何といっても二人の死闘である。

(BATMAN v SUPERMAN: DAWN OF JUSTICE /2016)

※原題はvsではなくvのみ

誰もが知っている正義のヒーロー:スーパーマンとバットマンが、なんと死力を尽くして戦ってしまうというという意外なアクション大作。一番の見所は、何といっても二人の死闘である。

クラーク・ケント/スーパーマンは『マン・オブ・スティール』に続きヘンリー・カヴィル、そして、ブルース・ウェイン/バットマンは『アルゴ』などのベン・アフレックが演じる。個人的に長年のファンのダイアン・レイン(筆者より2歳年下)も出演する。

スーパーマンが地球の危機を救ってきたため、世界の人々はスーパーマンを「英雄」と認めながらも、一方で、地球外から来た脅威(異星人)とし、地球から追放すべきという排除派の世論も強まっていく。しかも、スーパーマンはダークサイドに落ちていく・・・。

スーパーマンの前作『マン・オブ・スティール』では、スーパーマンと敵のゾッド将軍がニューヨークで激しい市街戦を繰り広げ、街が壊滅状態に。ブルース・ウェインは自分のビルが崩壊し、耐えられない被害を負うことになり、スーパーマンを敵対視するようになった。繰り返しになるが、その後の二人の激しすぎる対決がとにかく見どころである。さらに後半になると本当の敵が登場し、ワンダーウーマンも登場し・・・・これ以上はネタバレになるので書けない。

筆者は長年のアメリカンコミックのファンである。マーベルコミックは、アイアンマン、キャプテン・アメリカ、ソーなどをアベンジャーとして結集させている。これはライバルのDCコミックの主人公が結集したもの。実は、スーパーマンとバットマンが一緒に活躍するのはこれが初めてではない。52年のコミック(漫画)では一緒にやっていた。

このように昔の作品を映画化し、それもシリーズ化し、さらに結集させている。このような"リメイク・シリーズ・グループ化"の流れは映画、特にアメリカの映画界に一般化している。これは、映画の制作費の高騰がある。

今回のスーパーマンも、マン・オブ・スティール2億3千万ドルだったが、今回の作品はなんと4億1千万ドルにまで膨れ上がっている。映画作品の制作費は過去最高額である。最近の高騰は著しい。例えば、例えば76年のロッキーは110万ドル、SFでも77年のスターウォーズ1,100万ドルである。

映画制作とは、会社の経営のようなものである。このような高騰の中で失敗は許されない。そのために、リメイク・シリーズ・グループ化して、安定的な売上げを目指す。つまり、ホームランは狙わず、バットを短く打ってシングルヒットを狙っていくようなものである。そのため、アメリカ映画には"尖った"作品が少なくなってきているのである。

一方、"尖った"作品は、ケーブルテレビに多くなっている。それは全体で契約するために、2、3本、ホームランか三振かの"尖った"作品があっても内包できるのである。そして、たまに、大ホームランが出る。

経営も、ある程度、リスクを取らないと小さくまとまっていくことになる。本当は「リスクが取れるのが、大企業のいいところである」と筆者は教えてきたのだが、現実はそうはなっていないのが残念である。

実は、筆者は、初期のコミックにおけるスーパーマンの方が好きである。そのころのスーパーマンは、ギャングに脅される真面目な市民や、夫が暴力を振るう奥さんを助けていた。なにか、江戸時代の遠山の金さんのようなイメージであった。

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