(PADDINGTON / 2014)
本作は第28回東京国際映画祭で上映され、パディントンのキャラクターも登壇し、人気を博していた。日本ではパディントンは「かわいいぬいぐるみ」としての印象が強いのではないか。本作は、1958年に出版され、長年世界中で愛されている、マイケル・ボンドの児童文学「くまのパディントン」を56年目(2014年)に"実写"映画化した。もちろん、本作もほのぼのするファミリー映画である。『ハリー・ポッター』シリーズなどのプロデューサー:デヴィッド・ハイマンが製作を手掛けているので、雰囲気がなんとなく似ている。
熊のキャラクターは、そもそも"かわいく"根強い人気がある。ちなみに、熊のぬいぐるみ「テディベア(Teddy Bear)」の登場は1902年で、アメリカ合衆国第26代大統領セオドア・ルーズベルト(Theodore Roosevelt)に由来する。セオドア(Theodore)の愛称が「テディ(Teddy)」なのである。
近年、映画の世界でもそうであるが、"熊"のキャラクターが人気である。『くまのぷーさん』、『テッド』などなど、またネットの世界でも「リラックマ」、LINEの「ブラウン」など上げだすとキリがない。筆者ももちろん好きである。
さて、本作品についてであるが、ロンドンに住むブラウン(ヒュー・ボネヴィル)一家はある日、「パディントン駅」に行ったところ、真っ赤な帽子をかぶった「このクマをよろしくお願いします」と書かれたプレートを首からぶら下げたクマに出会う。南米ペルーから長旅を経てやってきたという。しかも、人間の言葉を話す。
そのクマに、一家は駅の名前を取って「パディントン」と名付け、彼が自分の家を見つけられるまで、家に住まわせてあげることにした。パディントンは初めての都会に慣れることができず、たびたび大騒動を起こしてしまう。そして"お約束"で事件が起こる。剥製(はくせい)師ミリセント(ニコール・キッドマン)が彼を剥製にするために捕まえようと狙う。そこでブラウン一家は"家族"としてパディントンを助け・・・
筆者はロンドン勤務も長かった。最後に住んでいたのはまさにこのパディントンであった。住宅地で、ハイドパークも、インドや中東の料理屋も近くにあって街並みも好きだった。もちろん、パディントン駅は、イギリス北西部を結ぶ国鉄の路線、地下鉄4路線、ヒースロー空港まで直通ライン「ヒースロー・エキスプレス」が乗り入れるロンドン北西部最大の鉄道駅。空港からのヒースロー・エキスプレスは20分(!)でヒースロー空港に行けるため大変便利で、乗った方も多いのでは。筆者も金融界から地下鉄で帰り、コンビニのスパー(SPAR)で夕食を買って帰る日々であった。
さて、最近は、そのイギリスは先進国でありながら、経済の調子が良い。堅調な経済背景にイギリスの中央銀行も利上げを検討している。イギリスでは改革的な試みがされている。その一つが、イギリスの中央銀行英国銀行(BOE:Bank of England)がカーニー総裁をカナダの中央銀行から招いたことである。日産がカルロス・ゴーンを社外から招いたのと同じで改革を実行するためである。(もちろん、イギリスとカナダの中央銀行に資本関係もない)
さらに、イギリスは国民全体に経済教育がなされており、国の経済・財政状況を理解している。これも経済的な強みである。キャメロン首相はきちんと国民に経済・財政状況を説明して、3年で財政赤字を約4割削減し、将来を議論し付加価値税(VAT : Value Added Tax:日本の消費税に当たるもの)を引き上げた。その後の総選挙でも与党の保守党は"圧勝"した。国民も経済・財政を理解し、政府も努力した。日本の政策は現状維持が主で改革的な政策が少なく、世界一の財政赤字国で財政破綻の可能性もあるのに、財政の改革や消費税を上げることへの国民の理解が不足しているように感じられる。また、今後の2020年までのGDP600兆(経済成長)及び財政黒字化の前提が「3%の成長率」を前提としている。今後5年間3%の成長率を実現する可能性は極めて低い。そもそも、2015年の日本の成長率予測は約0.6%増のレベルである。いままで25年間の「日本病」でだめだったのだから、"よほど"改革的な政策をする必要があるのはいうまでもない。その前に国民に"経済教育"をすることが重要である。
(2016年1月15日公開)
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