「生理が止まるのは、かっこいい」。そんな勘違いをしていた私が女性ブランドを立ち上げる理由

どうしても実現したい企画だった。

54年ぶりに11月の東京に積雪があった日。

私は役員らおよそ30人の前で「女性の生理を、ファッションの力でポジティブなものに変えたい」と15分間のプレゼンをしていた。

男性ばかりの会議室で足の震えを抑えるのがやっと。もちろん理由は気温の寒さではない。

結果は、成功。私は、晴れて9月15日から『EMILY WEEK』という、生理用品も扱うセレクトショップを立ち上げられることになった。

このブランドは、生理週間を軸に、女性の4週間の「バイオリズム」に寄り添ったアイテムを提案するのが特徴だ。女性のカラダは、ひと月のうちでホルモンバランスが4パターンに大きく変化し、体と心のコンディションを左右する。

その変化に合わせ、例えば生理期には肌触りの良いオーガニックコットン製の生理用品や心を落ち着かせるオリジナルブレンドのハーブティ、生理前のどうしてもイライラしてしまう時期には体を温めるバスソルトやシルク製の下着などのアイテムを用意した。

また、それぞれの週で揺れ動く気分をフォローするアロマブレンドを用意している。カラダの変化に合わせた商品は、日々忙しく過ごす女性に「カラダと向き合うきっかけ」を作る。

私は、「JOURNAL STANDARD」、「IENA」、「Spick & Span」などのアパレルブランドを展開するBAYCREW'Sで働いている入社2年目の社員だ。社内で希望者が新規事業を立ち上げることが出来る「スタートアップキャンプ」を生かして、ブランドの立ち上げを提案した。

どんなに足が震えても、声が震えても、どうしても実現したい企画だった。

それは、何より自分自身が「女性ホルモン」に振り回される人生を経験していたからだ。

Aki Hayashi

生理が止まることを「かっこいい」と思っていた

初潮があったのは小学6年生の時。

小学校6年生の時
小学校6年生の時
柿沼あき子

校庭に全校生徒が集まる朝礼で立っていると、急に視界がぼやけて、カーテンが閉まるように目の前が真っ暗になり、冷汗と過呼吸のような激しい動悸でその場から動けなくなった。

数日後、ショーツには少量の血がついており、保健の授業でなんとなく聞いていた「生理」と理解した。

この症状は、中学、高校になっても生理前に発生した。

市販の頭痛薬を飲むと治まることが分かり、頭痛薬を通学バッグに常備するようになった。

心配する母に婦人科受診を勧められ、はじめて婦人科へ行ったが、身体に異常は見られず、身体を冷やす格好はしないように、とだけアドバイスを受けた。

高校2年生の夏から美大を目指し、本格的に美術予備校に通い始めた。

受験直前には、毎日10時間以上絵を描き続ける日々。予備校の女性講師は「生理が止まるほど描け、その方が楽だから」と言っていた。私は単純な性格なので"生理が止まるほど描く"なんて芸術家っぽくて格好いい!なんて考えで、食事も睡眠もろくにとらず、本当に生理が止まったことに喜んでいた。

受験期に描いたデッサン
受験期に描いたデッサン
Aki Hayashi

第一志望の美大受験当日。

指定の席についてデッサンを描く準備をしていると、下腹部に違和感を感じた。

まさかこのタイミングで2ヶ月以上止まっていた生理が突然やってくるとは...。いつもより量が多く止まらない。用意もしていなかったので、トイレからしばらく出られず受験時間を大幅にロスしてしまった。後日、生理だけのせいではないが、受験は予想通りの結果となり浪人が決まった。

大学を卒業し、ベンチャー企業へWEBディレクターとして就職。

サークルのようにフラットな雰囲気の職場がとても楽しく、周囲に早く認められたい気持ちもあったので、会社が許す限り夜遅くまで働いていた。

長時間会社にいる生活がつづくと、二十歳をすぎて少し軽くなっていた生理からくる症状がまた徐々に重くなり、生理初日は頭痛と腹痛に耐えられず、毎月必ず会社を休むようになった。

仕事を頑張りたいのに、身体がいうことを聞かない。

毎月訪れる生理期間が本当に鬱陶しく、嫌な一週間になっていった。

そんな私を変えたのは布ナプキンとの出会いだった。生理の悩みが少しでも改善されればと祈るような思いで買った布ナプキン。人によって効果や感じかたは違うとおもうが、試してみるとても心地よくリラックスできる感覚があった。一週間分買い揃えると、次の生理を楽しみにしている自分がいた。

今まで生理と嫌々付き合っていた自分が、自分の身体にきちんと向き合おうとしている。

布ナプキンによるそんなマインドの変化と共に、より快適な生理週間に向けて食事や睡眠など日常生活にも気を使うようになった。

そのせいか重くなる一方だった生理からくる症状は少しづつ改善していき、会社を休まなくても耐えられる程度になっていった。私は、この劇的なマインドの変化を今でも忘れることができない。

置き去りにされた「女性のカラダ」

Aki Hayashi

日々の忙しさの中で、毎月付き合わないといけない女性の生理。

女性活躍がめざましく、役職につく女性が増え就業時間も長くなっている現在、ホルモンバランスからくる女性特有の悩みは以前よりも増し、対応が難しくなっていると言われている。毎月発生する生理などは、働く女性の毎日に大きく影響する。

女性活躍に伴ういろいろな制度の確立が叫ばれる中、そもそも男性とは違う女性の身体について語ることが置き去りにされている気がしてならない。

そして、自分と同じように毎月のホルモンバランスの変化に振り回されている女性達へ、これから生理を迎える女性達へ、何かできないかと考えるようになった。

女性の悩みがそれぞれ違うように、対処法もそれぞれあっていい。平日は忙しくて病院に行けない女性も、会社帰りや休み時間にお店によって少しでもストレスを軽減できるアイテムを探したり、「生理」と楽しく付き合えるおしゃれなアイテムと出会う...。

私は、『EMILY WEEK』というブランドを通じて悩みに対する対処法の選択肢を広げ、生理期間から目を背けず、自分のカラダと向き合うことで得られる喜びをサポートしていきたい。

EMILY」に託した思い

EMILY WEEK

約55年前、アンネ社という会社から生理用の「紙ナプキン」が日本で発売された。

それまで「生理」はタブー視されていたが、アンネナプキンの発売をきっかけに生理期間は「アンネの日」と呼ばれ、少し口にしやすくなった。生理のイメージを変える「大きなイノベーション」だ。ナプキンがあれば安心して職場で働ける。今につづく女性活躍の裏側には、55年前に生まれたアンネナプキンによる生理用品の改善があったからだと思っている。

アンネナプキンと同じように、「ブランドの力」を私は信じている。

誰もが親しみやすい女性の名前「EMILY(勤勉な、賞賛する、などの意味がある)」をブランド名にして、WEEK(週間)を掛け合わせる。生理週間"Emily Week"が、毎日を頑張る女性を讃える週間になるようにと願いを込めた。

生理が止まるのは、かっこいいことではない。時には女性にとって「苦痛」でしかない生理や、ホルモンバランスの変化からくる女性特有の悩みについて、私は多くの人がこのブランドを通して自分と向き合い、前向きに捉える「きっかけ」を見つけて欲しいと思う。

EMILY WEEK

EMILY WEEKでショップにご来店いただき商品を購入いただいた方、先着100名に『Ladies Be Open』とコラボしたピルシートも入るポーチを差し上げます

※ポーチに入っている薬はイメージで、 ノベルティ対象外です。

※なくなり次第、終了とさせていただきます。

■EMILY WEEKショップ概要

<期間>2017年9月15日~

<住所>〒107-0062 東京都港区南青山5丁目12−4

<営業時間>11:00~20:00

公式instagram

HP

ハフポスト日本版では、「女性のカラダについてもっとオープンに話せる社会になって欲しい」という思いから、『Ladies Be Open』を立ち上げました。

女性のカラダはデリケートで、一人ひとりがみんな違う。だからこそ、その声を形にしたい。そして、みんなが話しやすい空気や会話できる場所を創っていきたいと思っています。

みなさんの「女性のカラダ」に関する体験や思いを聞かせてください。 ハッシュタグ #ladiesbeopen#もっと話そうカラダのこと も用意しました。 メールもお待ちしています。⇒ladiesbeopen@huffingtonpost.jp

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