心身とも健康に年齢としを重ねること―世界に先駆けて超・少子高齢化社会を迎えた日本にとって、これほど喫緊の課題はありません。2015年、戦後のベビーブームで生まれた最後の人たちすべてが65歳を超え、日本はいよいよ本格的な高齢化社会に突入しています。
医療費や介護費は増大する一方、健康保険料や税金を支払う生産年齢人口(15~64歳)は減り続け、現行制度のまま健康保険や介護保険を維持して行くことは難しくなっています。
来たる2025年には、団塊の世代がすべて75歳を超えることになり、このままでは医療費、介護費は天井知らずに膨張。試算によると介護費だけで20兆円に上ると予測され、ただでも逼迫する日本財政に決定的なダメージを与えます。
目前に迫る財政破綻の危機をどう回避するのか、その答えは高齢者の健康維持をいかにはかるか、つまり「健康寿命」をいかに伸ばすかにかかっていると思います。
では、どのように健康寿命を伸ばすのか。自分自身も55歳という節目を来月に控え、その切り札として「サク・トレ(サクセスフル・トレーニング)」の普及と、その指導者である「プラチナ・トレーナー」の育成を進めることを、これからのライフワークにしたいと考えています。
【「サク・トレ」とは 】
「サク・トレ」の「サク」は、「サクセスフル(successful)」、「トレ」はトレーニングの略で、科学的・医学的・心理学的データと理論に基づいた、心身ともに健康に年齢を重ねる(サクセスフル・エイジング)ための健康維持・機能改善型トレーニングです。
サクセスフルと合わせて「サク」には、「継続的な」という意味の「サクセッシブ(successive)」や花が咲くの「サク」、物事がサクサク進むの「サク」の意も込められています。
「サク・トレ」の一番の特色は、従来のように鏡張りのトレーニングルームに高額のマシンを何台も設置しプールも併設といったようなハード面重視のトレーニングではなく、高度な指導技術と医学的・科学的知識、そして何より高い人間性を兼ね備えたトレーナー(「プラチナ・トレーナー」)が、各クライアントの健康状態や希望に応じた「オーダーメードメニュー」を作成、そのメニューに基づききめ細かく指導を行うソフト重視型のトレーニング。
一般のトレーニングジムが、施設やマシン、所謂「ハコ・モノ」に投入する高額な経費を、できるだけ「ヒト」、つまりトレーナーの育成や雇用に投資することにより、クライアントを本当の意味で心身ともに健康にできる「プラチナ・トレーナー」を必要な人数配備したトレーニングを実現します。
プラチナ・トレーナーは、単にトレーニング技術を習得するだけでなく、大学でスポーツ医学や健康管理などについて専門教育を受け、またクライアントの心情を理解し弱者に寄り添える人材となるため心理学も修めます。
将来的には、プラチナ・トレーナーの認定・資格制度が整備され、その育成や雇用に公的な支援・助成がなされることが望まれます。
また、従来型トレーニングが、一般的に痩身やマッチョ系の筋肉増強を目的とするのに対し、「サク・トレ」の目的はあくまで健康増進や機能改善。たとえ美しい体型を作り上げるとしても、無理なダイエットやハードなトレーニングを行うのではなく、姿勢の矯正や適切な筋肉増強運動、継続的な運動および栄養指導を積み重ねることによって実現して行きます。
トレーニング前に、クライアントの健康状態をチェックした上で、各人の体力や健康状態に最適のオーダーメイド・メニューを作成します。トレーニング中も細やかな観察とアドバイスを重ねて毎回詳細なカルテを作成、蓄積して行きます。将来的には、こうしたデータをクライアントのかかりつけ医と共有し協力関係を構築することによって、予防医療にも貢献することを目指しています。
きめ細やかなアドバイスを受けたり、自分の健康状況や仕事や家庭の事情などについても話しをして行くうちに、クライアントとプラチナ・トレーナーの間には、自然と良好で深い人間関係が醸成されて行きます。こうしたコミュニケーションは、クライアントの身体だけでなくメンタル面でのヘルスケアにも大きく貢献します。
また、足腰をはじめ健康に不具合がある人ほど本来は正しいトレーニングが欠かせないのですが、歩行の難儀さなどからジムに通うこと自体が難しいのが実状です。また、仕事で忙しい人ほど運動不足になりストレスも溜めがちなためトレーニングが必要ですが、定期的に継続してのジム通いは難しいものです。
「サク・トレ」では、健康不安を抱える高齢者や多忙な方たちがトレーニングを定期的に継続できるよう、近所の集会場所や自宅への「出張・派遣型トレーニング」を中心に実施するのも大きな特徴の一つです。
【終わりに】
多くの人に「かかりつけ医(ホームドクター)」がいるように、各家庭がプラチナ・トレーナーの資格を持つ「ホームトレーナー」に定期的に健康をチェック&ケアしてもらうようになれば、予防医療の実践が可能となり、医療費の高騰を抑制し、要介護者を減少させることができると思います。
自宅介護は家族への負担が大きく、家庭不和や家庭崩壊すら招きかねず、雇用先での仕事にも影響を及ぼします。組織で重責を担うべき働き盛り世代が介護により離職せざるをえない理不尽を、私自身、経営者として毎年経験しています。しかもその大半が女性です。
労働人口の減少に歯止めをかけ、生産性を保ち、女性の社会進出を妨げないためにも、要介護者をこれ以上増やさないことは、これからの日本にとって最重要課題の一つです。
また、近年著しく体力が低下している子どもたちや若年層は、早期に要介護者となることが予想され、近い将来には自分の親と自分の子ども双方の介護を同時に負担する時代が到来するという、恐ろしい予測もなされています。
そのような事態が起こらないためにも、政府や地方自治体によるホームトレーナー制度の確立やプラチナ・トレーナー養成への助成を早期に検討・実施してもらいたいと願っています。