内戦が続くシリアを舞台としたドキュメンタリー映画で、サンダンス映画祭2014 ワールド・シネマ ドキュメンタリー部門 グランプリを受賞した作品、『それでも僕は帰る ~シリア 若者たちが求め続けたふるさと~』が、異例のロングランヒット!公開劇場である渋谷アップリンクでまだ上映が続き、横浜シネマ・ジャック&ベティでの上映もスタートしました(上映スケジュール)。
先週末、トークショーをお願いした屋良充紀(元プロサッカー選手)さんは、シリア内戦が始まる前に、日本サッカー協会派遣によりシリアサッカー協会配属コーチとしてユースや代表チームのコーチをされていました。
10月8日はW杯アジア2次予選のシリア戦となりますが、紛争の続くシリアの選手たちがどのような想いで、どのような困難を乗り越えて日本戦を戦うのか、そんな側面にも注目していただきたいです。
シリア代表選手や代表監督も知る屋良さんに今回のシリア戦について聞いてみました。
屋良 充紀さんインタビュー(日本サッカー協会派遣シリアサッカー協会配属コーチ)
Q.いつからいつの期間、シリアに派遣されていたのでしょうか?
2007年から2009年の2年間、ダマスカスに日本サッカー協会から派遣され、シリアサッカー協会配属コーチとして滞在していました。
Q.ユース代表のみならず代表コーチもされていたと
当初は、育成年代の指導ということでしたが、当時の代表監督にコーチをやってくれと言われて、やることになりました。
Q.今回W杯アジア2次予選の対戦相手となるシリア代表チーム監督のものでコーチされていたと。
そうですね。ファジョル・イブラヒムです。
Q.どんな監督ですか?
非常に柔軟な思考で、色々なものを取り入れようとしている。また、試合では熱く闘うことを望む監督です。
Q.そもそも、紛争が続くシリアですが、どこで、どのようにシリア代表チームは練習しているのでしょうか?
現在は、隣国で行っているようですが、以前国内で行った合宿では、6人程度だったようです。
Q.シリア内戦で亡くなってしまった選手もいるのでしょうか?
代表選手で、誰がというのは情報はありませんが、バセットの様(※注)に戦いに参加しているサッカー選手達がいるはずですので、恐らくいると思います。
(※注:映画『それでも僕は帰る ~シリア 若者たちが求め続けたふるさと~』主人公)
Q.今回代表選手として出場する選手の中で知っている選手はいますか?
ラジェ・ラフェ(Raja Rafe)は今回の代表選手に選ばれています。とてもいい奴です!
Q.どういう視点で今回のシリア戦を見て欲しいですか?
これは、代表戦で、ワールドカップをかけた闘いなので、そこらへんは、純粋に試合を観てもらいたいです。
Q.ホムスを舞台にした「それでも僕は帰る」をご覧になっていただいていますが、主人公でプロを目指していたバセットの夢が紛争によって絶たれてしまいました。将来のプロ選手を育成する屋良さんとして、どうこの映画を見ましたか?見て欲しいですか?今、プロを目指しているサッカー少年たちへメッセージがあればお願いします。
自分が住んだことのある国が戦争をしていることが信じられません。シリアに住む私のよく知るあの穏やかな人達がなんで?と思うことばかりです。とにかく、早く戦争が終わって欲しい。子ども達には、様々な境遇で、人生は良いようにも悪いようにも変わってしまうということ、今出来ることを精一杯やってほしい。そうすることで、自分の目指す夢が開ける可能性が広がると思います。ただ言えるのは、そういうことも、なんでも戦争がすべて奪ってしまう。二度と繰り返さないことを学んでほしいです。
▼屋良充紀さんプロフィール
神奈川県出身。1989年、プロを目指し単身ブラジルに渡る。ブラジル・サンパウロ州1部リーグ、サント・アンドレでプロ契約。その後2部リーグのマウアエンセ、エクアドル1部リーグ、グリーンクロスやコロンビア1部リーグ、サンタフェでもプレー。
1995年より、4歳から12歳までのサッカースクール「エスコリーニFC」を開校。2000年からは、横浜FCの下部組織Jrユースの監督も兼任、7年間務める。2007年より日本サッカー協会の「アジア貢献事業」で中東シリアに派遣され、シリアサッカー協会配属のコーチを務め、主にユース年代の育成、強化、ユース年代の指導者への講習会開催を行う。
サッカー指導以外にも、地方テレビ番組やラジオにも出演、各媒体のコラム執筆等も行なう。