秋田県五城目町で、「村があるから村民がいるのではなく、村民がいるから村ができる」という考えを持ち、消滅の危機にある古民家を村に見立てて再生させていく取り組みが始まりました。
「シェアビレッジ」と名付けられたこの活動は、多くの人が1つの家を支える仕組みを作り、全国の古民家をネットワークして村に変えていきながら、「100万人の村」をつくることを目指すというもの。
維持するのが大変な古民家と、人がいない地域のために、会員を集めて古民家の維持費とその土地に遊びに行く人を生み出そうという活動です。
シェアビレッジの仕組み
シェアビレッジの仕組みは、まず人々に「年貢(NENGU)」と呼ばれる3,000円の年会費を支払ってもらい、会員になってもらうところから始まります。村民になった人たちは、自分の好きな時に自分の村へ行ったり、田舎体験をしたり、村民同士で交流したり、といったことが可能になります。
とはいえ、村民になる人々は都会にいながらも、田舎が好きな人々。都市にいると頻繁に地域に行くことは難しい。そこでシェアビレッジが開催するのが、都市部定期開催飲み会「寄合(YORIAI)」。都市部にいる村民を対象にイベントを開催することで、村民同士のつながりを強める機会を作ります。
村民同士が仲良くなると、住民同士で自分たちの村に遊びに行く「里帰(SATOGAERI)」というイベントや、年に一度のお祭りである「一揆(IKKI)」といった活動に参加できます。
シェアビレッジとなる最初の「村」
シェアビレッジの対象となる記念すべき最初の場所、秋田県五城目町に位置する築133年の茅葺古民家。五城目町は、人口約1万人、秋田駅・秋田空港から車で約40分の距離にある、日本の原風景が残るイナカ町。520年の歴史を誇る朝市を中心に、職人や造り酒屋が集積し、農林業をベースとした暮らしが営まれている地域。
茅葺古民家があるのは、五城目町の「町村」という小さな集落。「町」は「市場」を意味していて、「町村=市場のある村」として名付けられたそうです。「シェアビレッジ町村」として生まれ変わるこの古民家は、茅葺古民家写真集の表紙を飾ったり、JR東日本のポスターにも使われた家。しかし、茅葺の維持費や住む人がいないことから、解体も検討されていました。
この古民家を守るため、「シェアビレッジ」はまずここを舞台にスタートします。
シェアビレッジづくりに取り組む人々
秋田県五城目町で「シェアビレッジ」づくりに取り組むのはこんな人達。
東京、東南アジア、米国での事業展開を行いつつも、五城目町の小学校廃校をベースに活動しているハバタク株式会社代表取締役丑田俊輔さん(写真:左から2番め)。五城目町地域おこし協力隊として活動し、「シェアビレッジ町村」のほか、「食べものつき絵本」など、地域資源を活用した新たな事業の立ち上げに取り組んでいる柳澤龍さん(写真:左から3番め)。五城目町の酒蔵と協力して「農家がつくる日本酒プロジェクト」を行うなど、新たな農業のあり方に挑戦している大潟村松橋ファーム3代目の松橋拓郎さん(写真:左から4番め)。
そして、シェアビレッジ・プロジェクト全体運営を担当する村長は、トラクターに乗る男前農家集団トラ男を結成した武田昌大さん(写真:一番左)。出身地である秋田のために様々な活動を行ってきた武田さんが、長い間練ってきてついに形となったのが今回の「シェアビレッジ」プロジェクト。そのプロジェクトにかける想いについて、コメントをいただきました。
武田さん「あと100年以内に人口がゼロになる県をご存知ですか?それは僕のふるさと秋田県です。人が住まなくなった古民家はどんどん朽ち果て、集落はどんどんなくなっていきます。そうはさせん!!
村民を集め、少しずつお金を集めれば古民家を守ることができる。村民同士が横につながり、地域にいくことで新しい村を作ることができる。それがシェアビレッジです。
村があるから村民がいるのではなく、村民がいるから村ができるという逆転の発想です。さぁあなたも年貢の納め時ですっ!今すぐ村民になろう!」
クラウドファンディングサイト「Makuake」で村民募集中
「シェアビレッジ」の村民は、本日からクラウドファンディングサイトの「Makuake」でも募集を開始しています。目標としている村民の数は合計で1000人。クラウドファンディングで支援した人は、そのまま「シェアビレッジ」としての権利を得ることができます。募集期間は50日ほど。
日本各地の古民家を救い、都市から地域へという人の動きを活発にしようというこのプロジェクトに関心のある方は、ぜひこちらのプロジェクトページをチェックしてみてください。
(2015年2月27日の「マチノコト」より転載)