小学生を対象に、夏休みの自由研究テーマを紹介するイベントに参加した。その中で、筆者の提供したテーマは「身の回りのものはどこでつくられているのか」で、家にある色々なものの生産地を調べて、国に色を塗り、世界地図にまとめてもらうというものだ。
筆者も事前に自宅で取り組んでみた。やはり、中国産が家電製品や衣類を中心に数多く見つかり、次第に「また中国か・・・」とうんざりしてくる。
それでも根気強く探すと、台湾(スマートフォン)、マレーシア(エアコンのリモコン、ハンガー)、ベトナム(シャンプー)、タイ(洗濯機)、インド(下着)、バングラデシュ(下着)などアジア圏は結構見つかった。
欧米やアフリカはなかなかないが、冷蔵庫の中やスーパーのチラシにも手を広げ、生鮮食品まで調べれば見つけることができた。新しい生産地を見つけた時は、思わずテンションが上がる。
私たちの身の周りにある製品は実に様々な国から届いている。ここでは、一例として衣類を取り上げよう。
普段身につけている衣類は1年間(2014年)に38.9億点供給され、そのうち37.7億点が輸入されたものだ。輸入量37.7億点を国内供給量38.9億点(国内生産量+輸入量-輸出量)で割った輸入浸透率は97.0%に上る。
輸入量は一進一退だが、国内生産量は減少の一途を辿り、10年間で半分以下になってしまっている(図表1、2)。
輸入浸透率が97.0%ということは、残り3.0%が国内にある衣類の国内産の割合だ。家の中で、メイドインジャパンの服を探そうとしても、33着に1着しかない。見つけるのは大変な作業だ。
肝心のどこの国から来たかだが、中国製の比率が最も高い。ただ、その比率には大きな変化が見られる。
93年は46%と半分に満たなかったが、08年頃になると、8割程度を占めるまでに上昇した。それ以降は、減少に転じ、2015年の中国製の比率は65%。代わりに、ベトナム、インドネシア、バングラデシュといった国の存在感が増している(図表3)。
中国には大量生産できる工場が多くあり、糸などの素材も現地で調達できる。技術も向上し、品質も高水準となり、競争力は強まった。一方で、人件費も高騰しており、発注先を人件費の安いベトナムやインドネシアへ移す企業も増えてきているようだ。
バングラデシュには欧米のファストファッションの工場が建ち並び、安価な服が日本に入ってきている。衣類は大量生産・1シーズン使い捨てのビジネスモデルが普及しており、今後も輸入シェアの勢力図は変わっていきそうだ。
業種別に輸入浸透率(名目輸入額/名目生産額)を見ると、どの業種も右肩上がりの傾向にあり、様々な輸入財が生活に浸透している(図表4)。最も上昇率が高いのは上記でも取り上げた繊維工業で2000年から2010年にかけて50.4ポイントも上昇している。
次に、木材・木製品・家具製造業(13.8ポイント上昇)、電気機械器具製造業(9.4ポイント上昇)と続いている。日本製品を見つけるのは年々難しくなっている。
家の中でも発見がある。お子さんと遊びに行く前に、自由研究も兼ねて、何カ国ゲットできるか、日本製がいくつ見つかるか挑戦してみると楽しい夏休みの思い出になるかもしれない。
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(2016年8月1日「研究員の眼」より転載)
株式会社ニッセイ基礎研究所
経済研究部 研究員