「小さくはじめるマーケティング」をうたい文句に、フリーの立場で企業の事業開発やマーケティング支援などを行っている轡田いずみさん。
会社を辞めて独立し、自宅を拠点にリモートワークをする選択をしたのは2歳になる子どもと過ごす時間を少しでも長く確保するためでした。
轡田さんのワーキングスタイルやリモートワークについての考え方などをインタビューしました!
轡田いずみ(Izumi Kutsuwada)
Stilla marketing(スティッラ・マーケティング)代表。スタートアップから大企業まで、国・規模・業種様々な会社の事業開発・マーケティングを支援。上智大学を卒業後、大手機器メーカー、大手教育系企業にてグローバルマーケティング・商品開発に携わる。本業の傍らインドやインドネシアでの新規事業開発にも参画。出産後、独立。2歳児の母。
スティッラ・マーケティングHP:http://stillamarketing.com/
仕事人間だった私が、出産を機に働き方を見直した理由
‐お仕事の内容について教えてください。
轡田さん(以下敬称略):いろいろな会社の事業開発やマーケティング支援をしています。
留学や旅、仕事で世界30ヶ国以上に滞在した経験があったり、独立するまでは機器メーカーや教育系企業で海外事業に携わったりしていたので、海外に関わるお仕事が多いです。
例えば言語学習アプリを開発しているアメリカの教育スタートアップでは、日本市場のマーケティングや広報を担当。ほかにも北欧の飲食関連会社での商品やイベント企画、日本企業のインドでの市場調査を行うなど、長期案件・単発案件さまざまなご依頼をいただいています。
‐フリーになったのはどうしてですか?
轡田:長男の出産がきっかけです。仕事が大好きで、結婚後も夫にサポートしてもらいながらバリバリ働いていました。
妊娠・出産後も半年ほど働いたのですが、仕事に力を注げば注ぐほど子どもと過ごす時間が短くなってしまうことに葛藤を覚えるようになりました。また、転職したばかりの夫を今度はサポートしたかったこと、子どものアレルギーが悪化したこと等も重なり、一度仕事を手放してこれからの働き方を考えることにしました。
最初からフリーランスで働くことを目指していたわけではなくて、柔軟に働ける方法となるとパートやアルバイトかなと考えていました。そんななか、知人たちからマーケティングのお仕事を手伝ってもらえないかと声をかけてもらい、案件がまとまった量になったので、独立する流れになりました。
‐フリーになって子育てとの両立はできるようになりましたか?
轡田:そうですね。現在は、アレルギー治療の通院や病気の突発対応を見越して、受ける仕事量を調整しています。働く時間帯や場所も自分で決められるので、家庭の状況に合わせて稼動日や時間帯は柔軟に組み替えています。
また会社員時代は子どもが起き出す頃に出勤していたのですが、現在は家族でゆっくりご飯を食べてから登園させられますし、仕事の状況によって早めのお迎えにする日もあります。
通勤がないこともあり、仕事に使える時間は勤めていたときとあまり変わっていないのですが、子どもと過ごす時間が増えた実感はありますね。仕事を思いっきりやりながら子育てもゆったりできている実感をもてるのはありがたいです。
‐お子さんのためだった、という感じですか?
轡田:子どもは保育園が好きですし、子どものためというよりは自分の気持ちとして、もうちょっと成長を間近で見ていきたい、子どもの成長にあわせて働き方を組み立てたい、というところです。このような働き方に変えてから、仕事と子育ての間で葛藤を覚えることがほとんどなくなりました。
‐仕事と育児のバランス、が大事なんですね。
轡田:普段、子どもと一緒に過ごす時間を十分に取れている分、仕事も制限せず、思いっきり取り組めているような気がします。例えば出張や休日に仕事をする日があっても、また別のところで家族の時間は取り返せる安心感があって。その日一日だけを見るのではなく、1週間、1ヶ月といった長いスパンで仕事や家族との時間のバランスが取れるように意識しています。
自由な働き方だけれどコントロールが難しいところも
‐普段はどのようなワーキングスタイルですか?
轡田:取引先を訪問したり、取材の対応をしたりする日は一日、外出することが多く、アポとアポの間はカフェで仕事をしています。家で仕事をする日は9時から始めてお昼休みを1時間取り、その間に料理や洗濯、掃除といった家事をまとめてすませます。18時前には子どもを保育園へ迎えに行っています。
‐フリーランスやリモートワークのメリットはどのようなところだと思いますか?
轡田:繰り返しになりますが、仕事量や働く時間、場所を比較的自由に決められるので、子どもの病気など突発的な出来事があったとき、柔軟に対応できるのが大きなメリットです。
あとは、いろいろな会社と取り引きさせていただいているので、ある仕事で学んだことが別の仕事に生かせたり、別々の仕事をつなぐことができたり。自由に仕事を設計していける、という点はフリーランスならではの面白さです。
‐逆に難しいと思うところはありますか?
轡田:最初はペースをつかめず仕事を請けすぎてしまい、「まわらないかも!」ということもありました。自分以外に代わりがいない、という立場で、すべて一人でマネージメントしなければならないのがフリーランスの難しいところですよね。しかも子どもの状況も絡んでくるので、うまく仕事と家庭をコントロールしなければいけない、と思っています。
また、今は紹介ベースで仕事がまわっているので、本当にありがたいのですが、将来の仕事の保障がない、という点は不安定ですよね。ただ、もともと何もないところに仕事を創っていくのが好きなので、その点は楽観的に考えています。
‐ツールはどのようなものを使っていますか?
轡田:お客さんが使いやすいものに合わせて使っています。Slack、Skype、LINE、Facebookなどそれぞれですね。中にはアナログな方もいらっしゃるので、直接、お伺いしてお話しすることもあります。どのような場合でも、決裁等の重要な打ち合わせは対面で行います。
‐海外のクラウドソーシングサイトも活用されているそうですね?
轡田:「Upwork」というサイトを通じて教育関連の翻訳の仕事などをすることもあります。日本ではクラウドソーシングの単価の低さが問題になることもありますが、Upworkはより適正な単価が設定されていると感じます。単価が抑えられている案件もありますが、単価が高くても品質の良い仕事ができる人にお願いしたい、という案件もあり、雇用を生み出すプラットフォームになっている気がします。
このシステムだと育児や介護などで働くことに制約がある人でも力を発揮できる場があるし、企業にとっても世界中から必要な能力を持つ人を探せるのはメリットですよね。あと受注・入札のシステムなどを見ていてもワーカーの立場に立った設計がされているので、さまざまな情報を得て入札の戦略が立てやすかったり、躊躇なく提案していけたり、といったのも使いやすい理由です。
勇気をもって一歩踏み出せば、きっとチャンスが見えてくる
‐リモートで仕事をするうえで大事にしていることはありますか?
轡田:やはりカギになるのはコミュニケーションです。リモートワークでは仕事に対する熱量や求心力が希薄になってしまうこともありうるので、会える人とはなるべく対面でコミュニケーションするようにしています。
海外との取引も多いのですが、その場合でもメッセージの書き方には気を付けていて。素っ気ない文章になっていないか、この文章を読んで相手がどのような気持ちになるのか、というところまで意識しています。
‐これからリモートワークを始めようと思っている方にメッセージなどあればお願いします。
轡田:自分の夢や、仕事と育児のバランスを考えてリモートワークをしてみたい、と思ったら、小さくてもまず一歩を踏み出してみるといいかもしれません。勇気を持ってチャレンジしてみると意外にいろいろなチャンスが見えてくるはずです。私も最初は不安だったのですが、実際にやってみると会社でやっていたような仕事もリモートでできています。
このような知見を貯めていけば、いま不可能だと思われている業種でも、リモートで取り組むことができるようになるのではないでしょうか。リモートワークは、制約をもちながらも働き続けたい人にとって、大きな可能性を秘めていると思っています。
この記事の著者:吉岡 名保恵(Naoe Yoshioka)
和歌山県の地方新聞で記者をしたのち、国立大学の非常勤勤務を経て夫の転勤のためリモートワークに移行。2児の子育てをしながら在宅での仕事を10年以上継続し、子どもの小学校入学を機に2014年からライター業も本格的に再開。記者出身の女性ライターユニット smart sense を立ち上げるなど活動の幅を広げている。
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