リモートワーカーは情報発信が命。自宅にいながらチャンスをどんどんモノにする!

ニットデザインや手芸教室の講師をしてきた沼里さんですが、「ハンドメイド作家育成アドバイザー」としてリモートで行う活動を始めました。

とても優しく明るい雰囲気の沼里良枝さん。元看護師というのも納得です。

手芸歴40年以上で、長年ニットデザインや手芸教室の講師をしてきた沼里さんですが、2015年からは「ハンドメイド作家育成アドバイザー」としてリモートで行う活動を始めました。いったい、どのようなお仕事なのでしょうか?

沼里良枝(Yoshie Numasato)/ハンドメイド作家育成アドバイザー

1967年生まれ。5歳からハンドメイドを始め、ニットデザイナーを希望するも親の反対により看護の道へ。しかし看護師をしながら編み物の資格を取得し、手芸雑誌に作品が掲載されるなど、夢に向かって少しずつ準備を進める。

結婚後は国内外を転勤しながら自宅で手芸教室を開催。コンテストの入賞などをきっかけに、ニットデザイナーとしても活躍の幅を広げる。

2015年より、プロの手芸作家を目指す人を対象に「ハンドメイド作家講座」を開講。2016年5月19日には『ハンドメイド作家になりませんか?』をブティック社より出版予定。

ホームページ:http://mittunoringo.com

セミプロのハンドメイド作家が、本物のプロになれるように

―「ハンドメイド作家育成アドバイザー」とは、どんなお仕事なのでしょうか?

沼里さん(以下敬称略):今、ハンドメイドがブームになっています。スマートフォンで手軽に作品を販売できるようになったのも大きいですね。

でも一方で、知らないうちに著作権を侵害してトラブルになったり、作品の魅せ方がいまいちで思うように売れなかったりと、新しい問題も起きるようになりました。

こうした問題を解決するノウハウを伝え、"手芸が得意な人"から"プロのハンドメイド作家"にステップアップするお手伝いをしています。

―このお仕事を始めるきっかけは何だったのですか?

沼里:あるハンドメイド作家の方がブログに作品をアップしたところ、盗作疑惑が浮上して炎上し、ブログもネット販売もあきらめざるを得なくなったんです。

私は長年手芸業界に身を置いていたので著作権に関する知識があり、彼女の相談に乗っていました。そのとき思ったのが、「大ごとになる前に、色々教えてあげていれば......」。

実は彼女だけでなく、多くの作家が知識不足のためにトラブルに巻き込まれてやめていくのを見てきました。

ハンドメイド業界を健全に盛り上げるために、正しい活動ノウハウを伝えたい。使命感にも似た気持ちが湧いてきました。

―それで「ハンドメイド作家講座」を立ち上げたのですね。

沼里:そうです。講座は全5回で、著作権やプロのハンドメイド作家としての仕事内容や心構え、税金や申告などについて学びます。

5回のうち2回はブログと写真についての講義で、その分野のプロが講師を務めます。実はこの講師2人は、高校時代の同級生。ご縁に感謝です。

―講座はどこで開催するのですか?

沼里:都内の会場を借りています。でも出向くのは当日だけで、テキストづくりなどはすべて神奈川県内の自宅で行っています。15ページくらいあるのですが、毎回アップデートは欠かしません。税金や著作権のルールが変わる場合もありますし、なにより講座をより良いものにしたいですから!

―在宅で働けるのは、リモートワーカーならではですね。

沼里:リモートワークですと自由に働ける分、際限なくやってしまうこともあります。特に最近は、書籍の執筆もあって忙しいですね。ニットや刺繍のデザイン・制作の仕事もしているのですが、締め切り直前は連日深夜までの作業になることも。

好きなことだから、日程がタイトでもついつい引き受けちゃう。オーバーワークにならないように管理するのは、今後の課題です。

在宅のリモートワーカーだからこそ、インターネットで情報発信を

―講座の参加者はどう集めているのですか?

沼里:インターネットがメインです。ブログとホームページはほぼ毎日更新し、講座に関することはもちろん、作品をアップしたりハンドメイドに対する考えなどをつづっています。

いくら素晴らしいカリキュラムをつくっても、人に見つけてもらわなければ仕事に繋がりません。存在感をアピールするには、インターネットはうってつけのツールです。

ハンドメイド作家は、センスがあっても発信力が弱いケースが多いですね。これを強化する方法も、講座で伝えています。

―インターネットは以前から活用していたのですか?

沼里:いえいえ、全然。手芸雑誌の編集者にすすめられてブログを始めたのは4年前です。パソコンに疎くて最初は大変でしたが、めげずに更新し続けました。

ブログの威力を実感したのは、コンテストに応募したときです。作品と一緒にブログのURLを送ると編集者が見てくれて、仕事の依頼が入るようになりました。

応募の直前に作品の写真をたくさんアップし、上のほうに表示されるようにするのがコツ。いかに目に留まるように工夫するかも大切なポイントです。

―新しいことをどんどん取り入れていますね!

沼里:最近はスカイプでプロのアドバイスを受けながら、ワードプレスで「ハンドメイド作家講座」のホームページを作りました。受講料も、ペイパルで対応できるように準備中です。パソコンが苦手なのに、我ながらがんばってるなと思います(笑)。

1年前には、プロフィール写真や本名を公開しました。これをきっかけに、手芸メーカーや出版社から次々とお仕事が舞い込むように。やっぱり、どんな人かわかると安心なんでしょうね。

実際に会う機会が少ない分、できる限り情報を開示することがフリーランスのリモートワーカーには必要だと思います。

―ご家族はお仕事についてどう考えていますか?

沼里:夫と大学生の娘と息子、中学生の娘がいますが、静かに見守ってくれています。たまに、「仕事ばっかりしないで家事してよ」と言われてしまうのですが(笑)。

以前は自宅でニットデザインや手芸教室をしていたので、本を出版したり講座を主催すると聞いてちょっと驚いているようです。「お母さん、そんなことできたの?」って。

―がんばるお母さんの背中を見せられるのは素晴らしいですね。

沼里:とことん突き詰めて集中する姿を見ていたせいか、あまり口うるさく言わなくても子どもたちは勉強するようになりました。在宅で仕事をする意外なメリットかもしれませんね。

中学生の次女は反抗期真っただ中でゲームに夢中ですが、いつか上の子たちのように自主的に好きなことを見つけて学んでいくと思います。

―今後の目標を教えてください。

沼里:講座にさらに力を入れて、プロのハンドメイド作家を増やすことです。私の願いは、「ハンドメイドが100年先も続きますように!」。

大量生産・大量消費が当たり前の世の中ですが、ハンドメイドのあたたかさはずっと残っていてほしい。そのためには、ハンドメイド業界を牽引するプロが必要です。これからも、25年間以上に渡って培ったノウハウを惜しみなく伝えていきます。

100年後、私はもういません。でも今蒔いている種が花開いていたら、こんなにうれしいことはないですね。

-ありがとうございます。ハンドメイドへのあふれんばかりの愛が伝わってきました。

実は沼里さん、心身を病んでしまい、日常生活を送ることすらままならない時期があったそうです。しかしそんな中でも、ハンドメイドはやめませんでした。

「好き」というモチベーションは、なによりも強い。ハンドメイドに情熱を注ぎ、リモートワークという方法を得て進化し続ける沼里さんの姿を見て、改めて思いました。

この記事の著者:平田 志帆(Shiho Hirata)

コールセンター勤務や専業主婦を経て、33歳のときに医療系メーカーの専属ライターに転職。産休・育休を経て復職するも、家庭の事情により両立が困難になりフリーに。現在は仕事と育児をほどよく楽しんでいる。この経験からワークライフバランスや女性の働き方に関心を持ち、それをメインテーマに活動中。


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