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2018年12月14日 13時28分 JST | 更新 2018年12月14日 13時28分 JST

2019年4月施行 改正労基法のポイントと 労働組合の取り組み

今回の法改正を活かすカギは、それぞれの職場における「36協定」。

今年7月、労働基準法改正をはじめとする「働き方改革関連法」が成立した。労働時間法制に関わる部分については、労働政策審議会での検討を経て省令・告示が公布され、一部を除いて来年4月1日に施行される。

今回の改正は、時間外労働の上限規制、年次有給休暇の取得促進、勤務間インターバルの努力義務化など、労働時間法制の「大改革」というべき内容だ。法を活かすには、36協定の締結をはじめ、労使の取り組みが欠かせない。

労働組合に求められる役割は重大だ。改正のポイントをしっかり学び、職場・地域での取り組みを始めよう!

ポイントは労働時間法制の見直し

労働時間法制のどこがどう変わるのか。厚生労働省労働基準局の黒澤朗労働条件政策課長に、改正ポイントを例示も交えて解説してもらった。

黒澤 朗

厚生労働省労働基準局 労働条件政策課長

少子高齢化による人口減少社会を迎え、誰もが納得して働ける環境の整備は喫緊の政策課題。その認識を共有して、「働き方改革」の議論が行われた。そして、その大きなテーマの一つである「長時間労働の是正」については、労使合意を経て、罰則付き時間外労働の上限規制導入、年次有給休暇の取得促進、勤務間インターバルの努力義務化、健康確保措置の強化などに関する法改正(労働基準法、労働時間等設定改善法、労働安全衛生法)が行われた。

この労働時間法制の見直しを中心に具体的な項目について解説する。

1 時間外労働の上限規制(労基法36条)

時間外労働の上限を法律に明記し罰則付きで規制

法定労働時間は、「原則1日8時間、週40時間」。これを超えて残業させる場合は、労基法36条に基づく労使協定(36協定)を締結して労働基準監督署に届出を行い、規定の割増賃金を支払う。この基本的枠組みは変わらない。

改正点は、時間外労働の上限規制だ。改正前は、「月45時間、年360時間」という「限度基準告示」を定め、行政指導を行っていたが、臨時的な特別の事情がある場合は、特別条項を結べば、青天井に残業させることができた。

これに対し、今回改正では、法律(労基法36条)に時間外労働の上限時間として「月45時間、年360時間」が明記された。当然、違反には罰則が課される。

また、特別条項についても、従前の「年間6回・6カ月まで」に加えて、①年720時間、②休日労働を含め「複数月平均80時間以内、単月100時間未満」という要件が入った。健康確保の観点から過労死ラインの「月80時間」を超えないようにする規定だ。

改正法の施行は2019年4月、中小企業については、1年の猶予を経て2020年4月の施行となる。また、中小企業の月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率(50%以上)の適用猶予は2023年に廃止される。

適用の猶予、除外の事業・業務

時間外労働の上限規制の適用が猶予されたり、除外される業種・業務もある。

自動車運転の業務は、施行5年後に適用するが、その上限は「年960時間」とし、特別条項の「年間6回・6カ月まで」「複数月平均80時間以内、単月100時間未満」の規制は適用しない。建設事業は、施行5年後に全面的に適用するが、災害の復旧・復興事業には例外規定を設ける。医師は、施行5年後に適用するが、その限度時間数などは別途省令で定める。鹿児島・沖縄の砂糖製造業は、施行5年後に全面適用とする。研究開発業務は、医師の面接指導、代替休暇の付与等の健康確保措置を設けた上で、上限規制の適用除外とする。

36協定の新たな指針と届出様式

法改正に基づく労働基準法施行規則の改正として、36協定の届出様式を変更し、過半数代表者についても、「使用者の意向に基づく選出は認められない」とした。また、限度基準告示に代わる新たな「36協定で定める時間外及び休日労働について留意すべき事項に関する指針」の策定も行われた。ここも、非常に重要なポイントだ。

新指針には、「時間外・休日労働はできる限り必要最小限にとどめる」こととあわせて、「使用者は、36協定の範囲内であっても労働者に対する安全配慮義務を負う」「労働時間が長くなるほど過労死との関連性が強まることに留意する」ことが明記された。

さらに、「特別条項」については、臨時的な特別の事情について、できる限り具体的に定めることとし、「業務上やむを得ない場合」など抽象的な表現は認められないとした。「複数月平均80時間以下」に関しては、「月末2週間と翌月初2週間の4週間に160時間の時間外労働を行わせるといった短期集中の過重労働は望ましくない」ことにも留意すべきだ。

特別条項を結ぶ場合は、36協定で必ず健康福祉確保措置を定めなければいけないとされたが、指針は、9項目の望ましい措置を例示。医師による面接指導、深夜業の回数制限などとあわせて、勤務間インターバルも挙げられている。

これを受けて、新様式の36協定届(時間外労働・休日労働に関する協定届)には、①対象労働者の範囲、②時間外労働・休日労働をさせることができる場合、③1日・1月・1年の時間外労働時間、休日労働日数、④有効期間、⑤「1年」の起算日、⑥協定の当事者(過半数代表)の選出方法のほか、⑦1カ月100時間未満(休日労働含む)、2〜6カ月平均80時間以内(休日労働含む)の要件を満たすことを確認するチェックボックスが設けられた。

また、特別条項についても、届出の省令様式が定められた。一般条項の項目に加え、①限度時間を超えて労働させることができる場合とその回数、②手続き、③限度時間を超える労働者への健康福祉確保措置、④割増賃金率(法定割増率25%を上回るよう努める)も記載する。健康福祉確保措置は省令様式の裏面に9項目が例示されており、そこから該当する番号を選んで記入することができる。

ちなみに新様式での届出は、上限規制が適用される2019年4月1日以降の期間のみを対象としている36協定からとなる。

2 年次有給休暇の取得促進(労基法39条)

使用者に年5日の時季指定による取得を義務づけ

年次有給休暇は、雇入れから半年後、その間に8割以上出勤した労働者に対し、10日間付与され、勤続1年を経るごとに付与日数が増える仕組み。いつ取得するかは、「労働者の申出による」ことが大原則だ。しかし、その取得率が5割を切る現状にあることから、今回、取得促進策として、年休が10日以上付与される労働者に対し、「毎年5日について使用者が時季を指定し取得させること」を使用者に義務づけた。具体的には、労働者が自ら取得した年休の日数に応じて次のように時季指定を行う。

○労働者が自ら取得した日数が0日の場合  使用者は5日を時季指定

○労働者が自ら3日取得した場合      使用者は2日を時季指定

○労働者が自ら5日取得した場合      使用者の時季指定は不要

省令では、「年次有給休暇管理簿」の作成を義務づけ、時季指定にあたっては、使用者はあらかじめ労働者の意見を聞かなければならず、それを尊重するように努めるという規定も入れた。

3 フレックスタイム制の活用(労基法32条の3

清算期間を1カ月から最大3カ月まで延長可に

フレックスタイム制は、1日の始業・終業時刻が労働者本人の希望で変更できる制度。労働時間は、週平均で40時間を超えないこととし、超えた時間は、割増賃金の支払いの対象とする。その清算期間は、これまで1カ月だったが、今回改正で3カ月まで延長できることになった。ただし、一定時期に労働時間が集中することがないよう、各月で週平均50時間を超えた場合には、その段階で割増賃金の対象とし清算を行う。

4 高度プロフェッショナル制度の創設(労基法41条の2

新たな制度導入の条件に健康管理時間の把握

新たな労働時間規制の適用除外制度として新設。改正法には、対象業務について「高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められる」もので、年収が「平均給与額の3倍の額を相当程度上回る水準」であることと規定された。具体的には、今後、労働政策審議会での検討を経て省令で定めることになるが、金融商品の開発、金融商品のディーリング、アナリスト、コンサルタント、研究開発が想定されている。導入にあたっては、事業場の労使委員会で対象業務などをあらかじめ決議することが必要であり、適用には対象労働者の同意を書面で得ることが前提条件とされている。

注目してほしいのは、導入の条件として健康確保措置が強化されたことだ。使用者には、①在社時間等の健康管理時間の把握、②年間104日・4週4日以上の休日確保、③(a)勤務間インターバル、(b)‌1カ月または3カ月当たりの健康管理時間の上限措置、(c)‌2週間連続の休日の付与、(d)‌臨時の健康診断のいずれかの措置の実施、が義務づけられた。これらが履行されない場合、制度は無効となる。

5 勤務間インターバル制度(労働時間等設定改善法2条)

普及促進へ、制度導入を努力義務化

勤務間インターバル制度の導入は、「労働時間等設定改善法」に事業主の努力義務として規定された。労基法上の義務ではないが、高度プロフェッショナル制度導入にあたっての選択的な健康確保措置の中の一つにも挙げられた。

努力義務であることから、休息時間についての定めはないが、E‌Uの労働時間指令を参考に「11時間」が一つのめやすとなる。その趣旨を理解し、労使で話し合って労働協約や就業規則で定めてほしい。ちなみに中小企業を対象とした厚生労働省の時間外労働等改善助成金「勤務間インターバル導入コース」の支給額は、新規導入の場合、「9時間以上11時間未満」が40万円、「11時間以上」が50万円となっている。

6 労働時間の状況把握(労働安全衛生法6683

実効性確保へ、客観的な把握を義務化

長時間労働に対する健康確保措置として、労働安全衛生法に、すべての労働者を対象とした客観的方法による労働時間の状況の把握義務を規定した。

改正法を実効あるものとするのは、職場の労使の取り組みだ。積極的な対応を期待したい。

労働組合の取り組み「より良い働き方」の実現へ 法を上回る取り組みを

内田 厚

連合副事務局長

連合は、「働き方改革実現会議」の議論を踏まえ、2017年3月に時間外労働の上限規制等に関する「労使合意」を確認。これに基づいて、今回の法改正が行われた。労働組合として、その意義を踏まえ、法令遵守はもとより、法を上回る取り組みを進めていくことが重要だ。

厚生労働省によると、45%の事業場で違法な残業が確認され(※1)、是正指導を受けた不払い残業は446億円(※2)。また、36協定を締結している事業場は49%にとどまり(※3)、うち4割は過半数代表者の選出方法が不適切と見られる(※4)。36協定を締結していない企業の3割は、36協定の「存在すら知らない」と回答している(※3)。

こうした実態の中で、法改正が不払い残業を助長するようなことになってはならない。それぞれの職場においては、各労働組合が、次の項目を重点に具体的取り組みを進めてほしい。

1 時間外労働の上限規制等

最大のポイントは、やはり36協定だ。上限は「月45時間、年360時間以内」を原則とする。やむを得ず「特別条項」を締結する時は、その必要がある場合をできる限り具体的に定める必要がある。

締結にあたっては、必ず業務量の棚卸しや人員体制等の見直しを行う。何も対策を講じないまま、上限を定めると、不払い残業が増えたり、サプライチェーンの関連会社などに影響が生じかねないからだ。業務の効率化、生産性の向上と一体的に長時間労働の是正を進めていただきたい。

なお、36協定締結に先立ち、過半数労働組合の要件を満たしているかを確認してほしい。要件を満たしていない時は、民主的選出手続を定め、労働組合役員が過半数代表者に立候補する。過半数労働組合、過半数代表者は、組合に加入していない労働者の声を集約し、職場のすべての労働者の代表として行動すべきことを再確認してほしい。

適用猶予業務については、限度時間に近づけるための労使協議を行う。適用除外業務についても、上限規制を適用するよう求めていく。

2 中小企業における時間外労働の上限規制

施行が2020年4月だが、法に先がけた対応を進めてほしい。月60時間超の割増率の猶予措置廃止については、2023年4月施行だが、これも前倒しで進めてほしい。また、労働時間等設定改善法には、事業主の責務として、下請業者などに対し「著しく短い期限の設定および発注内容の頻繁な変更を行わないこと」が明記された。これも労使協議に活かしてほしい。

3 労働時間の客観的な把握

これは、改正労働安全衛生法で「新設」された条項。厚労省のガイドラインも参照し、管理監督者やみなし労働適用者を含む、すべての労働者の実労働時間を把握する仕組みの導入と、その適正な運用ルールを策定してほしい。

4 年次有給休暇の取得促進

労働組合としては、100%取得をめざす。そのために職場ごとの取得状況を把握し、組合員に改正内容の周知を行い、労働者からの申出による取得を促す。使用者の時季指定にあたっては、労働者の意見聴取に関するルールを確認してほしい。

5 フレックスタイム制

清算期間を延長する場合には、必要性について労使で協議をお願いしたい。

6 「勤務間インターバル制度」

原則11時間の「勤務間インターバル制度」導入について、職場の実態を踏まえた労使協議を進めていただきたい。

今回の法改正を活かすカギは、それぞれの職場における「36協定」。「Action!36」でも、その適切な締結を呼びかける中で、労働時間法制への理解を深め、職場労使の話し合いを促し、長時間労働を是正して「より良い働き方」を実現していきたいと考えている。

(※1)厚生労働省「長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導結果」(2018年8月)(※2)厚生労働省「監督指導による賃金不払残業の是正結果(平成29年)」(2018年8月)

(※3)厚生労働省「平成25年度労働時間等総合実態調査(精査後)」(2013年10月)(※4)JILPT「中小企業における労使コミュニケーションと労働条件決定」(2007年10月)

※この記事は連合が企画・編集する「月刊連合12月号」の記事をWEB用に再編集したものです。