いわきの救急を何とかしたいんです

私は看護師です。今春、東京から福島県いわき市に移り住み、市内の公益財団法人ときわ会常磐病院で勤務しています。

いわきの救急を何とかしたいんです!

私は看護師です。今春、東京から福島県いわき市に移り住み、市内の公益財団法人ときわ会常磐病院で勤務しています。私が同院で働いてみようと思ったきっかけは、冒頭の明るく前向きな現在の上司の声です。福島県とのご縁は、2011年4月、震災後の医療ボランティアから始まりました。そして、原発事故時の看護を学ぶため、2013年の約1年間、南相馬市立総合病院で勤務させて頂きました。金澤幸夫院長をはじめスタッフ一人一人が、困難な状況下で前向きに考え続けて、救急患者の受け入れから仮設住宅での在宅診療まで、患者さんの視点で活動されていました。南相馬市で過ごした約1年間は、非常に学び多く、自分の生き方を考える期間でもありました。南相馬市の皆様とのご縁に心から感謝しております。

現在、私が働くいわき市の医療では、救急医療が需用と供給のアンバランスにより危機的状態にあると思います。

まず、救急医療の需用についてですが、総務省消防庁の2013年度消防白書1)によれば、2012年度の救急出動は5,805,701件(前年より94,599件、1.7%増)となり、2004年から連続して500万件を超えています。救急車による搬送者5,250,302人の内訳を年齢分別にみると、65歳以上の高齢者が53.1%を占めています。救急搬送は増加の一途をたどっており、搬送される方の半数以上は高齢者であることが読み取れます。

この傾向は、いわき市内において顕著にみられます。いわき市消防本部の調べ2)によると、東日本大震災が発生した2011年と2015年を比較すると、人口は345,516人から327,896人3)(2011年より17,620人、5.1%減)に減少していますが、救急出動件数は11,256件から13,790件(同2,534人、22.5%増)、搬送者は10,227人から12,397人(同2,170人、21.2%増)と増加傾向にあります。(図1参照)搬送者の年齢別内訳は、2015年は高齢者が55.7%を占めています。救急搬送は増加傾向にあり、今後さらなる人口の高齢化や、独居の高齢世帯や老々介護世帯の増加に伴い、救急搬送患者が増加することが予測できます。

次に、救急医療の供給についてですが、救急医療機関は対象とする患者さんの重症度により、軽症から順に1〜3次救急医療機関に分類され、機能分化により対応する仕組みになっています。市内では軽症〜中等症の患者さんは、1、2次救急医療機関である各医療機関で治療を受け、重症の患者さんが3次救急医療機関であるいわき市立総合磐城共立病院(以下、共立病院とします)に紹介されます。しかし、震災前から患者さんは共立病院に集中する傾向があり、震災後は、医療機関の医師や看護師が減少したことに伴う規模縮小などによりこの傾向に拍車がかかっています。

共立病院の3次救急では、いわき医療圏327,896人3)人に対してわずか3名の救急医(常勤)で対応しています。そこで、常磐病院は危機的状態にある救急医療に貢献できるよう、1、2次救急医療体制を充実し、また、救急搬送されるような状況が少なくなるよう、在宅診療体制も整備中です。東京の高度救命救急センターでの経験と、南相馬市での学びを糧に、精一杯頑張ろうと思います。皆様どうぞよろしくお願い申し上げます。

1)平成25年度消防白書

3)いわき市行政経営部行政経営課(各年4月1日現在)

(2015年6月11日「MRIC by 医療ガバナンス学会」より転載)

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