厚生労働省が、がんなどと闘病しながら働く患者が治療と仕事を両立できるよう支援する初のガイドラインをまとめ、23日発表した。ガイドラインは企業向けで、病気を理由にした退職勧奨の防止や、治療よりも仕事を優先させる労働環境をなくすことなどが狙い。がんだけでなく脳卒中や心疾患、糖尿病など継続治療が必要な病気も対象にしている。
ガイドラインは、両立支援のための環境整備として、企業管理者への研修や相談窓口の設置、時間単位休暇・時差通勤制度の導入などを求めた。就労中の患者と医師、企業が情報共有する方策として、主治医が病状や就業上望ましい措置や配慮を所定文書に記入、これを就労患者が企業に提出することなどを定めた。
企業側は、産業医らの意見を聴き、就労患者の意見も聴取した上で適切な措置を講ずることが求められる。指針はまた、個別ケースについて両立支援、職場復帰支援プランを作成することが望ましい、とした。このほか、治療と仕事の両立のためのメンタルヘルスの重要性も指摘している。
ガイドラインなどによると、日本人の2人に1人が生涯のうちにがんになる時代になり、2011年推計で年間約85万人が新たにがんと診断され、その3割が就労世代。仕事をしながらがんで通院している人は約32.5万人(2010年国民生活基礎調査に基づく推計)。
入院日数は減る傾向にある一方外来患者は増えている。治療法は日進月歩で5年生存率も向上し、10年生存率でも早期がんは全部位平均でも約86%。がんと診断されても「いかに付き合い治療するか」が大切で「がんと共存する」の対応策が求められている。
厚労省はこうした実態、傾向を受け、企業にとっては働き手でもある患者が極力安心して治療と仕事を両立できるよう初のガイドライン策定作業を進めていた。07年にがん対策基本法が施行され、がん対策推進基本計画のほか必要に応じた施策の策定を求めている。今回の策定も同基本法に基づく就労支援策の一環。
関連リンク
・厚生労働省「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」
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