東北大学大学院理学研究科の磯部寛之(いそべ ひろゆき)教授らの研究グループが新しいタイプの有機EL(エレクトロルミネセンス)誕生につながる分子材料を開発した。これまでの発光ダイオード設計の常識を覆す成果で、近未来の照明になると期待される。
有機ELは、次世代の照明やディスプレーなどに広く使われると期待されている発光材料。有機発光ダイオード(OLED)とも呼ばれるデバイスで、青色発光ダイオード(LED)と同様に電界発光という現象を用いた発光デバイス。今回開発されたのは、炭素と水素という二つの元素だけから成る「トルエン」を環状に連ねた新しい分子材料。これを使うことで単一層という最も単純なデバイス構造でありながら、理論限界に近い高い効率で光を発する有機ELを実現できる、という。
現在の有機ELでは、発光効率を上げるために多層構造の設計指針の下、性質の異なる有機物質をそれぞれ薄膜にして積層するという手の込んだ構造が必要だった。今回研究グループは、炭素と水素という二つの元素だけを使った炭化水素を材料に単一層で発光効率が高い新たな有機ELをつくる分子材料の開発にこぎつけた。研究は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業(ERATO)の一環として行われた。
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関連リンク
・科学技術振興機構プレスリリース「近未来のかたち」
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・2014年12月19日ニュース「印刷で作れる多層の有機EL素子を開発」
・2009年5月27日「ホモ接合型の有機EL素子で3原色発光」