「私たちの世界を変革する」持続可能な開発目標ってどんなもの?(第十六回:目標1)

CAREは、今後も活動を通じ、地域の継続的な生活の向上、あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせることにつなげていきます。

前回は、「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals, SDGs)」※の目標2についてご紹介しました。今回は、目標1について紹介したいと思います。

※「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals, SDGs)」:2016年から2030年までの15年間に、日本を含む世界のすべての国々が達成すべき目標。貧困・格差、気候変動などの課題について17の目標が定められている。「誰一人取り残さない」がキャッチフレーズになっている。

目標1「あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる」

世界で極度の貧困状態で苦しむ人は「8億6300万人」

SDGsの目標1は、ずばり、「あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる」です。

2000年から15年間かかげられたミレニアム開発目標(MDGs)により、1990年代、世界に存在した19億人の極度な貧困生活者、いわゆる1日1.25ドル以下で生活する人々の数は半減されました。

しかし、2015年のMDGsのレビューによると、1990年以降極度の貧困状態にある人々の割合は半減したものの、依然として8億6300万人が極度の貧困状態にあり、この状態を脱した多くの人々がこの状態に戻るリスクを負っています。

また、紛争発生により、2014年には1日あたり4万2000人が家を離れたとされています。ポストMDGsとして作成されたSDGsでは、地域ごとに差異が生じ、依然として苦しんでいる人々が存在することを念頭に、「誰一人取り残さない」ことを誓っています。

SDGsの目標1では、貧困削減の方針がより明確になりました。

目標1の「あらゆる場所」はイメージされやすい途上国だけでなく、地球上のすべての場所であることを指しています。貧困という言葉の定義は、各国・地域によりさまざまですが、ここでは「各国定義によるあらゆる次元の貧困状態」としており、1日1.25ドルとされる貧困ライン以上で生活していても貧困状態にあるすべての人を助けることを目標にしています。

次に、「あらゆる形態の貧困」は、以下の点を取り入れています。

  • 所得の欠如または安定した蓄えをつくる収入源の欠如を意味すること
  • 餓え、栄養失調、教育などの基本的サービスを受けられないこと
  • 社会的差別や意思決定過程からの除外
  • 気候変動や社会変化からの貧しい人の回復力を含み、貧困問題解決に向けた新たなアプローチ

貧困問題解決に向けた経済開発・発展や投資の役割が明確化され、安定した仕事・平等を実現することで貧困問題を解決するという方針が記されています。

女性のエンパワーメントと男性の意識改革が鍵

筆者が所属するケア・インターナショナル・ジャパンでは、こうした状況を解決するため東ティモールで活動を行っています。

CAREの支援活動の特徴は、団体のキャッチコピー「変える、女性も女子も活躍する豊かな世界に」が示すとおり、「女性と女子」にフォーカスした自立支援です。

また、支援の届きにくい遠隔地域での活動に力をいれていることも特徴としてあげられます。そして、その活動は、90か国以上に及び、年間6,500万人に支援を届けています。

東ティモールの活動に戻ると、東ティモールの国民の84%が農村部で暮らし、41%が貧困ライン以下で暮らしています。

同国の主な生業はコーヒー生産ですが、農業生産・輸送システムは脆弱で気候変動とそれに伴う災害が多発し、世帯収入は不安定です。

貧困が深刻な多くの地域と同様に東ティモールでは家父長的文化があり、女性が生計を支える重要な役割を担っているにもかかわらず、家庭の内外での女性の決定権は男性と比較して非常に低くなっています。

SDGsの目標1.4*¹にあるように、このような地域における女性をエンパワメントし、さまざまな決定・経済的資源の管理において男性と女性の同等の権利実現を目指すことは、貧困削減に向け非常に有効な手段です。

農村地域の生業の改善には、農業分野で重要な役割を担っている女性の積極的な参画が不可欠です。貧困問題解決に向けた新たなアプローチを踏まえ、具体的にはさまざまな農業技術研修やビジネス研修及び実演活動を通じて30の農民グループの能力の開発・発展を図っています。

またその際、農作業や家畜の世話、市場でも農産物の売買等において重要な役割を担っている女性が、意思決定に積極的に参加できるように女性のエンパワメントと男性の意識改革を行っています。

CAREは、今後もこのような活動を通じ、地域の継続的な生活の向上、ひいては、あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせることにつなげていきます。

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*¹目標1.4

2030年までに、貧困層及び脆弱層をはじめ、すべての男性及び女性が、基本的サービスへのアクセス、土地及びその他の形態の財産に対する所有権と管理権限、相続財産、天然資源、適切な新技術、マイクロファイナンスを含む金融サービスに加え、経済的資源についても平等な権利を持つことができるように確保する。

広報インターン

金山 真也

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