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2015年10月04日 15時24分 JST | 更新 2016年09月30日 18時12分 JST

超リベラル家庭で育った19歳が、自民党マンガ「大宰相」を読んでみた

「大宰相」VS19歳学生ライター


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難しい本のレビューを書くのが難しいのは、その本自体が理解できないということもあるだろうが、「その本に書かれていることを自分の価値観で判断することができない」から難しいのだと思う。すなわち、その内容の意味をどういう文脈に捉えるか、という価値判断をする体系が自分の中にないということ。

「大宰相」。タイトルからしてすごい。宰相ってそもそも何だよ、いや意味はわかるけどビスマルクの枕詞でしか聞いたことないよ。選挙ドットコムの人に「選挙に関する漫画とかアニメとかのレビューはどう?」と言われ、オッ、そういうの好きですね〜〜と軽く飛びついたところ、出てきたのが「大宰相」だったのである。

......いや分厚くない?

戸川猪佐武原作、さいとう・たかを作画「大宰相」は、ジャンプコミックス2倍以上の厚みで全10冊を誇る、自民党の歴史を辿る一大スペクタクルだ。ページを開くとおじさんがぎっしり。うわあ。女性は「元新橋芸者の政治家の妻」ぐらいしか出てこない。読んでいる途中で画面のおじさん圧に負け、アイドルアニメ休憩を挟まざるを得なかった程度にはおじさんだらけである。

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こんな感じで登場人物(おじさん率100%)紹介が6Pもある

第1部......敗戦国という負の意識


さっそく余談で恐縮だが、私は文学部史学科日本史専攻に所属しており、日本史は一番の得意科目である。しかし、中世史専攻の私にわかるのはせいぜい戦争終結までで、戦後については正直あやふやだ。高校でも、戦後まで丁寧に教えられた記憶はない。私自身現代史は苦手で、首相を美少女化して丸暗記する方法を取っていたぐらいである。それゆえ、「戦後社会」のイメージが、ない。

第1巻は、1948年から1965年までを描いている第1部と、終戦工作から第3次吉田茂内閣開始までを描いた第2部に分かれる。

正直第1部はよく分からなかった。冒頭に書いた通り、理解はできても、内容を事実としてしか受け止められない。

第1部冒頭は、吉田内閣の発足に際して、GHQから「吉田は保守的すぎるので、自由党が第1党になることは憲政の常道として認めるが、首相は幹事長の山崎猛が好ましい」と告げられるシーンである。これ内政干渉じゃないのか?と思ったのだが、被占領国は内政干渉を受けても仕方ないのだろうか?そういうものなのか?とそのまま流していたところ、すぐ後に自由党総務会長の斎藤隆夫という政治家が、「内政干渉ではないか!!」と考えるシーンが出てきた。あっ、この状況で内政干渉って、一応ダメなのか......なるほど。この斎藤隆夫、昭和41年に衆議院で反軍演説を打って議員資格を剥奪された気骨ある政治家、として説明されており、なかなか好感が持てそうな感じである。だが、言わない!内政干渉だと感じても、口にはしないのだ!

山崎を首班にしようと動く政治家たちの中、「内政干渉ではないか!」と声をあげたのが、当時1年生議員だった田中角栄である。「司令部の内政干渉を許していいのか」という若く素朴な疑問に吉田は動かされ、山崎ではなく吉田首班で行くことを決める、という流れだ。

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「第2章 角栄登場」のワンシーン

なんとなく当時の空気が偲ばれる。敗戦国という枷に向き合って、国としてどう動くか、という問題は、現在の我々からすれば想像できないやりづらさだろう。「もはや戦後ではない」というフレーズに、私はああそう。以外の感想を抱いたことはなかったが、これを踏まえて考えると、被占領国であるという負い目が晴れることは凄まじい空気の変化なのではなかろうか。

第2部......ちょっとずるい?公職追放


第2部になるとぐっと読みやすくなった。知っている名前がわんさか出てきたからである。終戦工作のために動く政治家たちから物語は再び始まるが、ポツダム宣言受託後に皆揃って気にしているのは「国体護持」だ。つまり天皇制。

当時の人間が天皇について異常に執着しているのは、一体どういう精神状態だったのだろう?終戦当時に50代60代だった人たちは、子供の頃からどっぷり皇国史観の勤皇教育を受けてきたわけではないのではないか、と思うが、そういうものと関係なく、あの当時の国会というのは「そう」しないと追放される空気だったということだろうか。当時の教育史も勉強したいところである。

また、GHQの公職追放については、私の浅い認識が塗り替えられた。私のイメージの中の公職追放は、「ここに関わっていた人は全員アウトです!以上!」というような簡潔なものだったのだが、実際はかなり"政治的"に使われていたようで、鳩山一郎の追放も、鳩山が総理になるのが確実になったタイミングで行われている。GHQが政治を操るために、ある程度公職追放というシステムを利用していたのかもしれない。内政干渉......内政干渉ってどこからどこまでなんだろうなあ......。

葉巻と政治家のイメージ


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吉田茂が出てくるたびに着物姿で葉巻を吸っているので、「こんなのドラマでしか見たことないよ」と思ってゲラゲラ笑っていたのだが、調べてみたら吉田茂は葉巻愛好家としてかなり有名だったらしい。そうなんだ......。「大物政治家」のステレオタイプイメージとしての「着物姿で葉巻をくわえている」というビジュアルは吉田茂から来ているのだろうか?気になるところである。

今回の一言まとめ

当時の価値観、今と繋がってそうで繋がってないのでは?!

次回は第2巻。企画ごと選挙ドットコムから追放されないように頑張りますので、今後もよろしくお願いします。


寒川 倫:フリーライター

1995年生まれの大学2年生。「正しい倫理子」名義でねとらぼで執筆中。日本中世史、特に中世人の心性史を勉強している。3つのアルバイトとサークルをこなしつつ、できる範囲で政治活動に参加する日々。Twitter: @rinsura_com

https://note.mu/rinriko/