No.4 天国?地獄? 写真家in上海 (ユルい人にでも出来る海外生活)

「ユルい人にでも出来る海外生活の極意」とは、自分の能力の無さ、限界を冷静に分析して、「自分みたいな者でも必要とされるニッチ=隙間」を探す、と言うのが一番のポイントです。

上海も春になってきました。写真は、ある館の庭園から見る高層ビル群...と言うなんとも上海的な景色です。庭と言っても公園くらいの広さがあります。租界時代の広大な屋敷はホテルになる事が多い中で、ここはプライベート。いつも誰もいないので勝手に入ってコーヒーと読書.....(いつか捕まるかも)。

さて、英語の話の続き

写真は初めてシンガポールに行った時、現地の社長と給料の交渉をした時の物です。Kingホテルのランチョンマットの裏。結構漢字で書いてある。日本人は漢字読めるから華僑とはコミュケーション可能なんだよね。

いきなりフォトグラファー級の給料を求める私に対して「現地のアシスタントはこんなに低い」とケチってる図。「無礼」と大きく書いてあるから何か失礼な事言ったんだろうな...英語出来ないはずなのに..。

前回、誰かのコメントに面白い意見がありました。「ユルい人にでも出来る海外生活」ってユルい人の方が海外向いてるのに.....。う〜ん困ったね、いきなり結論で言おうとしたことを言われてしまった(笑)。コメント見なけりゃよかったな。

3 英語も同じで「ユルくない人」「間違う事に慣れてない人」はなかなか喋るのが上手くならない。「絶対的に正しい何か」を想定すると宗教も思想も硬直して軋轢ばかりが増える。言葉も同じ。だから間違いを許さない環境に自分を追い込まない事は重要。発音や時制を少し間違えただけで0点になる学校では英語喋る気持ちなくなるよね〜。ネイティブスピーカーの前では卑屈になっちゃうし、上から目線の一方的な優しさもつらい。

ヘタな英語でなんとかコミュニケーションを取りつつ、必要最小限のツッコミを入れてくれるような環境が欲しい....と、言う事で前回の話に繋がるんだけどね。

昔、アメリカ人の彼女とシンガポールで暮らした時の話です(前回の英国人とは別人....なんかスイマセンね)。彼女、精神病理学の博士で政府のコンサルなどをしてる非常に頭の良い人だった。あまりに賢いので滅多に間違えた事言わない。偉ぶること無く知らない事は謙虚に聞く、素直な性格の人でした。ところが彼女の得意分野、例えば「アメリカ政治史」なんかでこちらが間違いを指摘すると結構ヒステリックな反応をするんですね。議論になって最後こちらが正しいことが証明されると1週間くらいは口きいてくれない。「間違う事に慣れてない」んで、どう対処したらいいか分からないみたい。

彼女は常にきれいなボストン英語を喋り、ピジョン英語に嫌悪感があるので絶対にローカル弁を学ぼうとしなかった。ベタベタのローカル弁で喋る私を見て「間違った英語を学ぶあなた事が心配だわ」といつも言ってたな〜。これ「コミュニケーションより正統性の方が大事」って事? 当時の私にとって「所属してる世界」はシンガポールを含む東南アジアだったので英米の「正統性」は土産物のラベルに書いてある「初代」「元祖」くらいの意味しか無かった。

ここでちょっとシングリッシュの動画を....。

オバサンをからかって悪い奴らですね。コークがコックになってスラングの男性器に聞こえる、と言う使い古されたネタです。

これはすごい。白人(米国?)の若者のシングリッシュ。アモウって言うのは白人を馬鹿にした呼び方です。

たしかにここまでディープだと普通の欧米の人は理解キツいかもね。

アクセント以外にシングリッシュの特徴として

1 複数形が無い。

2 時制による動詞変化が無い。I take many photo yesterday.

3 lah (語尾につける。)Can not lah~.

4 ah(語尾に付けて強調=is it? とかaren't youみたい感じ?) stupid ah~.

5 Siah Sian Walao などの福建弁?的な卑語。

複数形の区別、時制変化が無い事を「文化レベルが低いから」と彼女は言ってましたが、多分違うと思う。

マジョリティの母語である中国語の文法に似せて英語を喋ってるだけでしょ。そう考えるとシングリッシュと言う言語の正体が見えてきます。あれは中国語(福建、潮州などの言葉)をパーツごとに英語に変換しただけの物じゃないの?。基本的な文法構造が似てるんでうまくハマったんでしょうねえ。ちょっと羨ましい。

ハッ!もしかして日本の学校英語教育の難しさはそこ?日本語と異なる発音、文法、世界観を内包する言語を、最初から向こうのルールで逐語的に理解する....まるで空中に精密な楼閣を造るような感じ。自分たちの言語や生活と結びついた土台から出来てるわけではないので不安定になる。

華僑英語を真似て、文法は日本語で、英語に変換できる語彙だけ増やしていく。ルー大柴(知ってるかな?)みたいな日系2世風チャンポン英語をひたすら喋ってると会話力だけはつくんじゃなかろうか。

昨日彼と映画見に行ったらメチャいい話で泣いたわ〜。

Yesterday boyfriend me movie go ne, very very good story, cr~y cry cry ne. (neはそうね--の「ね」です。)

明日6時に起きて7時集合だから、今日はあまり飲まないで早く寝ろよ。

Tomorrow 6am wake up , 7am meet, so toady too much drink No! ne, early early sleep OK?!

主語が省略されるのがちと辛いが「日本人が聞いて分かりやすい英語」になってる....かな。少なくとも英語の脳に切り替えないで話せる。

こう言う事書くと「ブロークン英語」は後で矯正するのが大変...どうせ欧米で通じない...と必ず言われる。

そこが教育の難しい所だよね。確かに英語の勉強が普通に出来る人にブロークンな英語教えるのは害にしかならないかも....でも「矯正以前にブロークン英語さえ出来ない人」もたくさんいる。私のような落ちこぼれを救う仕組みが「日本語文法英語」を使ってできないもんかね〜。語彙だけなら好きな分野の話は結構みんな英語で言えるんじゃないの? 私はパリに住んでても全く仏語喋れなかったけど「アニエス・ヴァルダ、ジャック・ドーシェ」とか映画監督の名前言ってるだけで「お前分かってるね」と仲良くなれたよ。

シンガポールやフィリピンを見てると日常ではローカル英語を使って、学校で正しい英語(アクセント以外)に補正する。特に若い人は必要に応じて切り替えてる。だから本当にローカル弁しか喋られない人は現地語の教育しか受けてない低所得者層だった。

もう一つの要因は、現地の言葉の語彙が思想、法律、数学、科学などに対応しきれてないので学校では英語(宗主国の言葉)で学ばざるを得ない、と言う問題。結果的にちょっと難しい話をしようとすると英語タームが必需になる。日本は明治時代にすごい努力をして訳語を造った。「共産主義」など中国に輸入されて中国語として定着した訳語も多い。だから大学レベルの授業がほとんど欧米語が出来なくても理解できてしまう国なんだよね。

おかげで英語学習のモチベーション下がりまくり(笑)。マンガもSFも英語でしか読めなかったら....多分もっとっ必死で勉強してたな〜。

思うがままにダラダラ書いたが「だからなんだ!」と言われると....この項、シングリッシュ考察という以外に結論も特にないです。

最後に

4「.......である。なぜなら......。」と言う思考回路

日本人は議論や主張する機会があまりない為か「英語で会話が続かない」と言う人が多い。学校でShow & Tellとかもっとやればいい思う。これ根深い文化なんで急に性格は変わらんと思いますが、普段から「.......である。なぜなら......。」と言う思考回路を身につけると良いですよ。「きゃ〜カワイイ!だって子供の時に飼ってた犬にそっくりなんだもん」と言う程度のロジックでOK。

よく海外TVの路上インタビューを見てると、みんな「俺は、私はこう思う....ベラベラ」と喋りまくってますが、内容は大抵大した事なくニュースの受け売り。でも社会が「君はどう思うんだ?」と常にプレッシャーをかけるんで、自分の意見らしきモノを「用意」してあるんですね。重要なのはただ感想を言うのではなく自分なりの理由をくっつける事。だから聞かれそうなトピックに(日本人らしい)気の利いた答えをストックしとくと「おお、初めて日本人からそんな率直な意見を聞けた。」なんて喜ばれます。ただ自分の英語力でカバー出来る意見や理論ばかり喋ってると「単純な人」に勘違いされる事も多い。黙ってアルカイックスマイルが一番賢そうに見えたりもするけどね。

経験的に言うと英語は「花粉症」みたいなものじゃないかな。段階的に症状が出るのでは無く、少しずつ毒素が溜まって、ある日突然鼻水ドバア〜。例えが悪いな(笑)。あきらめないでやってると、ある日突然回りの会話が聞き取れる...映画の筋が分かる....何回も聞き返されなくなってる事に気付く。

ま、偉そうに書いてますが、とにかく辞書開いたりする勉強が嫌いなので、未だに読み書き英語力低いです。でも仕事で困った事は最初からほとんどありません。「ユルい人にでも出来る海外生活の極意」とは、自分の能力の無さ、限界を冷静に分析して、「自分みたいな者でも必要とされるニッチ=隙間」を探す、と言うのが一番のポイントです。