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2016年03月15日 13時26分 JST | 更新 2017年03月11日 19時12分 JST

製品への顧客ロイヤルティを知りたい!NPS調査を実施して得られた5つの学び

こんにちは。Six Apart でマーケティングを担当しているミコトです。

製品のサイトに訪れてくださった皆さんは、どんなふうにサイトを見てくれているのでしょうか。私は去年の4月に入社してからずっと、製品サイトのアクセス解析を行っています。Googleアナリティクスを学んでわかったことについては、以前記事を書きましたが、サイト内での行動を解析するだけでは分からない部分もたくさんあります。例えば、製品サイトに来たけれどすぐに帰ってしまった方は、どんな期待をもって来てくださったのか。サイトの解析だけでは、本当の理由を知ることはできません。

しかし、できる限り訪問者の期待や思いをくみ取りたいと考えるのがマーケ担当の心理です。予算をかけて、より細かくユーザー行動を解析できるツールを入れることもできますが、得られる結果からどんな改善が見込めるかを先に想定しておかないと、宝の持ち腐れになってしまうこともあります。

どんな数字を知ることができれば、どんなことが分かって、どんな行動に繋げられそうなのか。そんなことを考えていたある日、「NPS®(Net Promoter Score、及びNPSは、ベイン・アンド・カンパニー、フレデリック・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの商標)」に出会いました。日本語で言うと「推奨者の正味比率」ということです。

ネット・プロモーター経営 〈顧客ロイヤルティ指標 NPS〉 で「利益ある成長」を実現する 』という本を参考に学び、実践してみた記録と反省をまとめました。

NPSとは、指標化することと、その指標に基づいた活動のこと

NPSとは「企業がいかに自社の顧客を大切に扱っているか」「顧客ロイヤルティを生み出せているか」という定性的な概念を、「この企業(あるいは、この製品、サービス、ブランド)を友人や同僚に薦める可能性はどれくらいありますか」という単純な質問によって定量的に「指標化」すること、またはその指標に基づいた「活動」のことを指します。

NPSが「指標」と「活動」という2つの意味を持っているのは、重要なポイントです。NPSの「S」は、当初「スコア(Score)」とされていましたが、"NPSの本質は、NPSを「指標」として収集した後、その指標に基づいて改善のための行動を起こし、働きかけることにある"という考えから、現在は「システム(System)」の略とも言われるようになっています。

ちょっと複雑に聞こえますが、顧客が自社製品や自社サービスへ抱いているロイヤルティ「絶対これがいい!これじゃなきゃだめなの私♡」の気持ちがどれくらいか、誰が見ても同じように判断できる形にし、「べ、べつにこれじゃなくてもいいんだからね!!」というお客さんにはどうすれば「もう手放せない♡ あ、あの子にも薦めてあげよ♡」と思ってもらえるか、企業が「考え、学び、改善する」活動のこと。というとわかりやすいでしょうか。

たった一つの質問で顧客ロイヤルティを指標化するとは?

NPSの調査方法はシンプルです。自社製品を利用している顧客に対して、以下の質問をアンケートなどの手法で尋ねます。

「0~10点で表すとして、この企業(あるいは、この製品、サービス、ブランド)を友人や同僚に薦める可能性はどれくらいありますか」

回答された0~10の値によって顧客を「批判者」「中立者」「推奨者」の3つのグループに分けて、分析します。

グループ別に特徴を見ていきましょう。

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「9または10 を付けたグループ:推奨者(プロモーター)」

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  • ロイヤルティの高い顧客。
  • 通常は何度も再購入する。
  • その企業とのやり取りによって、自分たちの生活が豊かになったと感じている。
  • 友人や同僚に対して実際にその企業に対して好意的な話をする。
  • 調査への回答に時間を割き、建設的なフィードバックや提言を与えてくれる。

「7または8を付けたグループ:中立者」

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  • 満足はしているがあくまでも受け身であり推奨者とはまったく異なる態度や行動を示す。
  • 自分が支払った分の見返りは得ているがそれ以上ではないと思っている。
  • 友人や同僚にその企業を紹介することはほとんどない。紹介したとしてもその時は限定付きで、それほど熱心でもない。
  • 競合他社の割引価格や豪華な広告が目に留まれば、そちらに移ってしまう可能性もある。
  • 対象の企業やサービスに対してさほど熱意を持たず、長期的な資産とすることができない。
  • このグループに対しては、心から喜んでもらえるように、サービス、製品、プロセスを改善し、一部の人を推奨者に変えていくことを目標とする。

「6から0を付けたグループ:批判者」

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  • 自分自身の扱われ方に不平や不満を持ち、失望すらしている。
  • その企業との取引が愉快なものではなかったと感じている。
  • 友人や同僚に、対象の企業やサービスについての悪口を言う。
  • 苦情を寄せては、コストを押し上げる。
  • このグループの不機嫌な言動によって、従業員のモチベーションが損なわれる。

このグループ分けに関して特に着目すべきポイントは、中立者です。中立者といえば、良くはないが悪くもないという判断をしそうになります。ですが、中立者の傾向として「代わりのサービスや製品が見つかればそちらに移ってしまう可能性もある」など行動や態度に着目して、推奨者と比べると大きな違いがあります。また、批判者は企業や製品のイメージを低下させるだけでなく、社内の従業員にまで悪い影響を与える存在であることも見逃せません。

どうですか、NPS面白いですよね?私がNPSを面白いなーと思うのは、単なる「満足度」調査とは似ているようで違うところです。

例えば、以下2つの質問。

「現在お使いの洗顔料に満足していますか?」

と聞かれるのと

「現在お使いの洗顔料を知人に薦めたいと思いますか?」

では、回答する時の心構えがかなり違います。前者は「最近、肌の調子どうかな?」と自分のことを考えますが、後者は「使ってる洗顔料、安心して薦められるかな?」と"洗顔料"自体のことを考えませんか? 自分自身が回答する側に立って考えるだけでも、単純な満足度調査とNPSでは視点が少し変わることが分かります。

実際にセミナーで、NPS調査を実践してみた

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昨年の10月末にNPSを知り、興味を持ったので、さっそく翌月から調査してみることにしました。

今回調査の対象としたのは弊社が2015年2月5日に正式リリースしたサービス型CMS、 MovableType.net です。昨年15周年を迎えた Movable Type から見ると、弟分みたいなサービスです。

私たちは、製品の機能や特長をご紹介するハンズオンセミナーを、月に数回開催しています。そのセミナーに参加してくださる方は、どこかで弊社の製品のことを知り、もっと話を聞いてみたいと思ってわざわざ足を運んで参加してくださっている方です。なのでセミナーを受講し、製品の話を聞いてみてどう感じたかを伺いたい!と以前より思っていました。そこで、セミナーに参加いただいた方にご協力いただき、NPSの質問を含めたアンケートにご回答いただきました。この場を借りて、ご協力くださった皆様に御礼申し上げます。

今回、私たちは以下の様な条件でアンケートを行いました。

  • 少人数制のハンズオンセミナー参加者に対して配布(サンプル数が少ない)
  • 回答率は9割以上
  • 質問数は10問
  • 質問内容はその人について、セミナーについて、NPSを含めた製品について

現在回答数はたったの50弱ですが、反省点や興味深い傾向に気がつきました。

実際の調査から得られた、5つの学び

1. 推奨者が「調査への回答に時間を割き、建設的なフィードバックや提言を与えてくれる」は事実
アンケートの最後に今後期待する機能があれば教えてくださいという自由記述の項目を設けてみたのですが、NPSの質問に対して10または9を付けている人は、製品に対する要望などを自由記述欄に記載している割合が高いことが分かりました。このことから、推奨度の高い人は製品の未来に期待を寄せてくださっていることを実感しました。
2. 「公式SNSのアカウントを後でフォローする」と回答した人が本当にフォローしてくれることは期待できない
製品の最新情報はSNSでいち早くお知らせしているため、製品に興味を持ってくださった方にはぜひともSNSをフォローしてもらいたいという思いから、「公式SNSアカウントを知っているか、フォローしているか、この後フォローするか」を聞く設問を設けてみました。しかし、後でフォローするという回答が複数あるにも関わらず、フォロワーがセミナー後に急増することはありませんでした。おそらくその人たちはセミナーが終了し、家に帰るころにはそのことを忘れてしまっているのだと思います。これらの結果から、セミナーに来てくださった方々へのアフターフォローをどうするか、まだまだ考える余地がありそうだと感じました。
3. 「そのスコアをつけた理由」は、聞くべき
今回のNPS調査で失敗したなと思ったことは、NPSの質問の後に「そのスコアを付けた理由」を聞かなかったことです。

アンケートを作成するときに、できるだけ回答率を上げるためには自由記述を減らした方がいいのではないかという思いから、そのスコアを付けた理由を聞きませんでした。いざ分析をはじめてみると、他の質問の回答からその人の属性や、その人が製品に対してどんなイメージを持っているかを、ある程度は想像できます。ですが、良いイメージを持っているのに推奨度が中立者だった場合など、良くないスコアがついている場合ほど、その数値を付けた具体的な理由を聞いておけばよかったと感じました。他の質問を削ることを検討してでもここは必ず聞くようにした方がいいです。
4. アンケート項目は、結果を見ながら改善することが重要
今回のアンケートは単純にNPSを測りたいというだけではなくて、セミナーに参加してくださった方が、どこで製品に興味を持って、セミナー後どんな行動をとってくれそうかということも含めて調査することを目的として実施しました。そのため、製品の特長として必ず理解していただきたいものに関しては、あえて、「MovableType.net はウェブサイトごとに14日間の無料トライアルがあることを知っていましたか。」と聞くなど工夫し、すべての設問を何度も見直し校正を重ねて準備しました。

しかし、いざ配布して結果を集計していると、NPSのスコアを付けた理由を聞いておけばよかったことに加え、質問が複雑で回答率が低い項目があったなど改善点が出てきます。

NPSの値というのはその前後の質問項目を変えたところで大きく変化しないそうなので、今回のアンケートの目的を達成できなかった項目に関しては、積極的に改善していくことが必要だと思います。
5. コミュニティの存在を改めて大切に感じた
Movable Type のユーザーコミュニティの皆様が主催のセミナーでも、アンケートを配布していただき、NPS調査を行いました。その結果、コミュニティ主催セミナーだけあってセミナー認知経路のほとんどが「知人の紹介」でした。NPSの質問とは「知人・同僚に薦める可能性はどの程度ありますか」という、他者への推奨度を測るものです。ユーザーコミュニティに参加し、私たちの製品を好きでいてくださる方、勉強会などを積極的に開催してくださる方々は、まさにNPSでいう推奨者です。シックス・アパートにとって、コミュニティの皆さんがとても大切な存在であることを改めて感じました。

より本格的なNPS調査を実施する際に、考えなければならないこと

今回実施した調査の経験から、NPSの大規模調査を行う場合に考えるべきポイントをまとめました。

「誰の」意見なのか

Movable Type や MovableType.net などのCMSは、ウェブサイトの構築・運用を支える製品なので、サイトを作る人や、サイトを管理する人、記事を更新する人など、知識や立場の異なる人たちが多く関わります。今回のアンケートでも、製品に対する立場によって意見やNPSの結果は大きく異なることがみえてきました。

アンケートの結果を元にアクションプランを考える前に、その結果は「製品をどんな立場で利用している人の意見なのか」を考える必要があります。

「いつ」「どこで」「どうやって」回答してもらうか

書籍によると、通常NPSの調査を行う場合には、質問項目を5つに絞ることで数字の信頼性と回答率を保つことができるそうです。今私たちがセミナーでアンケートをとっている環境は、椅子と机があって比較的ゆっくりと回答していただきやすい環境にあることと、少人数での開催ということもあり10つの質問でも高い回答率を確保できています。もっと大規模に調査する場合、メールで調査するのか、電話で調査するのかという「調査手法」や、購入後どれくらいの人に調査するのか、電話をするなら時間帯はどうするのかといった「タイミング」にも考慮する必要があるでしょう。

最後に

NPSの調査を実施してみて、1番大変だったのは集計と分析です。出てきた数字をどうクロスさせるか、因果関係または相関関係はありそうか、その後のアクションプランはどうするか、など、まだまだ勉強中です。とはいえ、少ない回答数からの結果を見ただけでも、 MovableType.net が「思わず誰かに薦めたくなるCMS」となる為には、さらなる改善の余地があることや、外から自社製品がどう見えているかがわかりました。

これらの結果を元に、今後もより一層みなさまに、使いたい!好き!と感じていただける製品にすべく、さまざまなチャレンジをしていきます。

Six Apart ブログ製品への顧客ロイヤルティを知りたい!NPS調査を実施して得られた5つの学び記事から転載