呼び名・ショック-『スコットランド人夫の日本不思議発見記』(25)

私は一瞬たじろぎました。

スコットランド人である夫は、オーストラリアで2カ月間ほど日本語を習っていたのですが、その時、最も不可解に感じたのは「日本人の呼び名」だったそうです。

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そんな疑問を投げかけられ、私は一瞬たじろぎました。

個人を識別する「Mr」、「Mrs」、「Miss」のような名称がないと、ややこしくないのか、と。

そこで私はドヤ顔で答えました。

「サイトウさんって呼んだら、家族どころか、日本中のサイトウさんが振り向くよ」。

すると夫は「それは効率が悪い!」と大笑いしました。

しかし、日本は世界屈指の「名字大国」なので、違う名字であふれていて、そんな状況になることはめったにないと付け加えました。

ビジネス関係や医者、学校の先生、弁護士など以外は、基本「下の名前」で人を呼ぶ習慣がある英語圏では、「名字で呼ぶ」という行為はよそよそしく感じられるのかも知れませんし、

「サイトウさんの奥さん」、「サイトウさんのご主人」という呼び方は少し面倒かもしれません。

そんな夫が初めて私の両親と会った時のこと――。

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「初対面でまさかの呼び捨て‼」と、私は目眩を覚えました。

しかし、それに対し、厳格な父親が、まさかの笑顔で握手に応えていました。

このなんとも言えないヒヤヒヤな呼び方が、今後も続くと考えただけで身の毛がよだった私は、夫に日本式の呼び名を教えました。

「日本では配偶者の両親を『お父さん』『お母さん』と呼ぶものだ」と。

すると、夫は眉根を寄せ――

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余談ですが、こちらでは日本でいうところの中年の男性や女性を指す「おじさん」「おばさん」といった抽象的な呼び方がありません。ゆえに、親戚はもちろん、近所の年配の方々とも「下の名前」で呼び合います。

近所の子供たちは私を「下の名前」で呼びます。しかし、私の名前を知らない子供たちは「チハナのお母さん」「モモカのお母さん」と、日本と同じような感じで呼んできます。

(終わり)

★コラム著者の4コマコミックエッセイ