【パリ】6つのホテルで過ごすグルメな一日

カクテルに関してはロンドンやニューヨークよりまだ未熟。道路はロサンゼルスより不便だし、バゲットの質は東京よりも不安定だけれど、パリのグルメシーンは昔も今も、世界の食好きが気にする街。

カクテルに関してはロンドンやニューヨークよりまだ未熟。道路はロサンゼルスより不便だし、バゲットの質は東京よりも不安定だけれど、パリのグルメシーンは昔も今も、世界の食好きが気にする街。ワインだろうと、チーズだろうと、マカロンだろうと、本気を出したらこの街の魔法に敵うものはありません。味覚を通してこの街の今を楽しむなら、こんな美食道中をお薦めします。

2005年の世界パティスリーことLa Coup du Monde de la Pâtisserieでフランス・チームを優勝に導いたシェフ、クリストフ・ミシャラック(Christophe Michalak)。以来フランス国内では、料理本を出版したり、TV番組に出演したり、ユニークな持ち帰り用のお菓子を開発したり、さらにはMichalak Masterclassなる料理クラスを開講したりと、すっかりお茶の間の人気者に。とはいえ、アラン・デュカス(Alain Ducasse)の愛弟子でもあった彼の一番の舞台となっているのは、ホテル・プラザ・アテネ。ここではパティシエを務めるほか、朝食メニューでも大活躍。クグロフ、シュガータルト、塩キャラメルのルリジューズ、ピーチメルバのマカロンなど、師匠が極めたホットチョコレートのほかにも甘~い朝が待っているから、居心地抜群の客室から出てくるのも、そこまで苦にはならないはず。

ランチ:Hôtel de Nell

著名シェフ、イヴ・カンドボルド(Yves Camdeborde)の後を継ぎ、人気ビストロ、ラ・レガラード(La Régalade)を担うブリューノ・ドゥーセ(Bruno Doucet)。彼がパリ市内3軒目としてオープンしたのはここ、オテル・ド・ネルの中。ラ・レガラード・コンセルヴァトワール(La Régalade Conservatoire)は、ビストロ価格(テリーヌポット付きの3コースで37ユーロ!)で頂ける高級料理が売り。近年すっかりグルメなエリアとして知られるようになったフォーブール・モンマートル地区にあるこの店舗の大きな違いは、その空間でしょう。5ツ星に値するミニマリズムに、ジャン=ミシェル・ウィルモット(Jean-Michel Wilmotte)によるデザイン。そしてじっくりリラックスできるホテル・・・。お腹がいっぱいでも食べきらずにはいられない絶品ライスプディングを堪能したら、すぐ上にベッドがあるというのは重要なポイントです。

ティータイム:Le Burgundy Paris

パリでアフタヌーンティーと言うと、ヴェルサイユのような宮殿でのたしなみ、といった印象。そのせいもあり、歴史の比較的短いホテルは見逃しがちですが、実はそんな中に穴場ティー・スポットが。それがここ、ル・バーガンディー・パリ内のボードレール(Baudelaire)です。ここのティーメニューを手がけるのは、ピエール・ガニェール(Pierre Gagnaire)の下で鍛え、ミシャラック率いるプラザ・アテネの厨房でも腕を振るったミシュラン星付きパティシエ、ステファン・トランシェ(Stéphane Tranchet)。メニューはラズベリー・レアチーズケーキや、ストロベリー&ココナッツ・パフェ、シトロン・メレンゲタルトレットなど、季節のフルーツを盛り込んだティーデザートが中心。閑静なウィンターガーデンで、クスミ(Kusmi)社の紅茶、ホットチョコレート、またはアラン・ミリア(Alain Milliat)の特製ピーチジュースと共に召し上がれ。

食前酒:Jules & Jim

お洒落人が集まるオーマレ(Haut Marais)地区には、長居したくなる南向きテラス付きカフェがたくさん。でも私たちはどちらかと言うと、通りから見えない屋内コートヤードの方が気になるんです。夏なら緑の垂直型ガーデン、冬には焚き火が用意されるジュール&ジムのバーがそれ。ライブラリーとギャラリースペース、そしてちょっとアヴァンギャルドな天然樹脂材のカウンターが印象的なヌーヴェル・ヴァーグ風のカクテルバーは、宿泊客でなくても訪れることのできる知る人ぞ知る空間。厳選された熟成チーズや、ボルドーの著名ワイン学者ステファン・ドゥルノンクール(Stéphane Derenoncourt)の監修によるワインリストが用意されているほか、とってもフレンドリーな主任バーテンダー、リカルド氏のオリジナルカクテルは、いつ訪れてもグルメなあなたの味覚を楽しませてくれるはず。

ディナー:Hôtel Thoumieux

人気シェフ、ジャン=フランソワ・ピエージュ(Jean-François Piège)が手がけるオテル・ソーミュウのダイニングオプションは2つ。ひとつはシックなブラッセリー、もうひとつはガストロ・ショックとでも言うべき、実験的レストランです。地上階にあるブラッセリー・ソーミュウ(Brasserie Thoumieux)は、ミラーとベルベットに溢れるグラマラスな空間。メニューには、ブルーロブスター・マカロニ、新鮮イカ入りカルボナーラ、ブリオッシュ・バーガーなど、現代らしいアイテムが。一方、上の階にあるメイン・レストランでは、インディア・マダヴィ(India Mahdavi)のデザインによるユニークながら居心地良いスペースで、5〜7皿の冷製&温製オードブル、メインディッシュ1〜2皿、チーズ、そしてデザート3点からなる12コース・ディナーが展開されています。しかもワインメニューには2,000本近くのワインが揃っているんです。ここで食事を楽しめるのは毎晩20名限定。ご予約をお忘れなく。

カクテルタイム:L'Hôtel

左岸でなにかとっておきのスポットと言えば、ボザール通りにあるこの伝説的ホテルでしょう。オスカー・ワイルドが息を引き取った場所であり、これまで、ダリからシナトラまで、20世紀の輝かしい芸術家が数々訪れてきたロテル。ちょっとロマンス気分に浸りたい夜にぴったり。アーチの下に造られたプライベートプール、噴水のある中庭に、苺のツタが絡む壁型ガーデン、そして居心地のいいラウンジ・・・。バー・ド・ロテル(Bar de l'Hôtel)は、素敵な伴侶と共にグラスを傾け、ちょっと秘密の言葉を交わしたくなるような空間。お薦めカクテルは"ドリアン・グレイ"。ジンベースにタラゴン、パッションフルーツ・シロップ、パイナップルジュースとルバーブのビターをブレンドしたこのオリジナルカクテルは、思わずお代わりしたくなること確実です。