【チャールストン】アメリカ南部の食を変える、新世代サザンフード

南部の食(サザンフード)といえば、アメリカの料理評論家にさえ、これまでずっと敬遠されてきたカテゴリー。けれどこの数年、サウスカロライナ州のチャールストンが、気鋭シェフの集まる町としてグルメ界の注目を集めています。

南部の食(サザンフード)といえば、アメリカの料理評論家にさえ、これまでずっと敬遠されてきたカテゴリー。けれどこの数年、サウスカロライナ州のチャールストンが、気鋭シェフの集まる町としてグルメ界の注目を集めています。

中でも注目は、2012年夏の『ニューズウィーク』誌(US版)で「World's 101 Best Places to Eat(世界のホットなレストラン101軒)」の1軒として名が挙がった「ハスク(Husk)」。厨房を仕切るショーン・ブロック氏は、現在35才とはいえ、すでにジェームス・ベアード賞も受賞済み。チャールストンの老舗「マックレイディーズ(McCrady's)」の料理長も兼任するベテランシェフです。南部料理の伝統に新風を吹かせた第一人者として知られる彼だけれど、ハスクではあえて地元ルーツを振り返り、この土地ならではのメニューを考案。食材はそのほとんどを近郊農家から仕入れ、アフリカンギネア・フリントコーンやチョッピー種のオクラなど、一般の食卓から姿を消し始めていた南部特有の穀物も積極的に取り入れています。19世紀後半に建てられたビクトリア朝式の建物を改築したレストラン自体も、土地の味を活かしたその料理と雰囲気ぴったりです。

そんなカントリースタイルのハスクに対し、マックレイディーズは優雅で都会的。こちらは18世紀に建造されたジョージア様式の邸宅を利用。マホガニー材の壁に囲まれたこじんまりとした空間をバカラのシャンデリアが照らし出す個室(シェフズ・テーブル・ルーム)をはじめ、印象の異なるダイニングスペースが複数階に広がっています。全体的な雰囲気はちょっと古くさい金持ち気質な部分もありますが、スギのグリルやカラードグリーン、干し草に包んで焼いた地元産オーガニックチキンをはじめ、この店自慢のコンテンポラリーなサザンフードをひとくち口にすれば、グラスやフォークのデザインをどうこう言う気もしなくなります。

もちろん、この町の人気シェフは彼だけではありません。ゴージャスな「ベルモンド・チャールストン・プレイス(Belmond Charleston Place)」内にある「チャールストン・グリル(Charleston Grill)」では、同じく南部のアラバマ州出身のシェフ、ミッシェル・ウィーバーさんが活躍。メニューをPure(ピュア)、Southern(南部風)、Cosmopotlitan(コスモポリタン)、Lush(ラッシュ)という4つのコンセプトに分け、素材の味を活かすシンプルな調理法で仕上げたものから、地元の味をモダンにアレンジしたもの、エスニックな味付けを取り入れたもの、フレンチ風のスローフードと、美食家も思わず悦に入る華麗な味のバラエティを提供しています。ここでは賑やかな店内の雰囲気もメニュー同様、完璧に新世代サザンスタイル。

一方、古い馬車置き場を修復して生まれた「シルカ1886(Circa 1886)」は、温かみがあり、こっそりスカーレット・オハラになりきりたくなる空間です。シェフのマーク・コリンズ氏が手がけるのは、典型的サザンフードに国際色豊かなアクセントを取り入れたメニュー。タイ風レッドカレーを使った豚スネ煮込みや、ウチワサボテンのラッシーを添えたツナステーキなど、ほかにはない料理に出会えること確実です。

食べほうけ道中にぴったりのチャールストンだからこそ、思う存分味覚を楽しんだ後、ゆったり横になる場所だってキーポイント。チャールストン・プレイスは便利だけれど、ホテルはやっぱりプライベートで落ち着いた空間が好きという方は、「レストレーション・オン・キング(Restoration on King)」の広々としたスイートへ。4つの複合ビルで成り立つこのホテル。一番古い建物は1863年に造られたもので、どの空間もひっそりとしていて個人宅のような雰囲気。しかも、ここで紹介したレストランはどれも徒歩でアクセス可能。ということは、食後のエクササイズ=散歩もしやすいというわけです。