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2014年12月21日 14時39分 JST | 更新 2015年02月19日 19時12分 JST

オリンピックは大丈夫なのか? 11

新国立競技場問題の続きです。

10の設問に対してどのように考えればいいのでしょうか

オリンピックは大丈夫なのか? 10

「新国立競技場問題を考える10の設問」

それでは槇文彦先生のヒントを見てみましょう。

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「マキクンノ コタエ」

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「無蓋化し子供施設を併設」

http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/building/news/20140827/674791/?P=1

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1.オリンピック時8万人収容の規模をもった有蓋施設は、建設費だけで容易に2,000億円を超えることが想像されるだけでなく、ポストオリンピックの50年以上、スポーツ、室内イベントに8万人の需要即ち市場性が恐らくないまま、厖大な維持、修繕費を支払い続けていかなければならない。

2.室外スポーツ、室内イベントは本来相反する機能を相互にもっている為に、理想的な室外スポーツ施設でもなければ理想的な室内イベントホールでもないという矛盾は永久に解決できない。スポーツ関係者は誰も有蓋化に賛成していない。

3.不完全な半屋外競技場の天然芝に365日間適正な日照、通風、芝表層に湿度を与える為に、高度な技術と莫大な維持費が必要とされることが明らかになったが、それですら普通の屋外競技場の天然芝のクオリティを再現できるという保証は全くない。

4.同様に施設の屋内化に必要な可動式屋根装置は、地上60mから70mの高所における膜式天蓋をスムースに可動、操作させ得る技術的信頼性の保証は全くなく、特に提案されているC種膜は耐久性が低く、又その為に必要とされる10年毎の全面取換えの容易性についての説明もないまま、膜式可動装置の支持材も含めて厖大なコストが建設費、維持費にかかることだけは明らかになっている。

5.一方室内イベントホールの性能はC種膜式可動天井による遮音性能欠如、スタジオジャンピングによる周縁への振動の影響に対する無対策、巨大なボリュームに対する電気音響、暖冷房コスト、市場性確保の懸念等、理想的なイベントホールから程遠いものであることが明らかになっている。又、健全な芝育成の為、使用頻度は年12日以内に抑制されている。

6.可動式有蓋複合施設に決定した唯一の理由は、年間平均12回のイベントからの収入に期待するところが大きいとしているが、その収支計画をみる限り、有蓋とした為に予想される厖大な修繕維持費(様々な支出の一部)はイベントによる7億円収入を遥かに超える額である。更に他の主要収入、源として公にされた特別ルーム、パートナーシップ制の需要についてまったく精細な説明がない。従ってこの施設の収支計画は希望的観測に過ぎず、既に破綻しているといえよう。

と現在、強引に進めようとしている新国立競技場計画案に対して厳しく批判してらっしゃいます。

要は「JSCはじめコンペプログラムはコンサートイベント活用を重視するあまり、スポーツ施設としての根本機能やオリンピック以降の活用と維持管理について破たんをきたしている。」と喝破されています。

おっしゃるとおりと思います。

だから、「開閉式屋根という現時点で限りなく不可能かつ維持管理に問題があり芝生の育成に支障をきたす全面屋根はやめて、スタンド上部の庇だけにしなさい。」というご意見です。

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同時に、「次世代を担う子供達にこそ活用しやすいスポーツ施設としての市民に親しみやすい機能を拡充するべきだ。」とのご提案です。

ポストオリンピックを見据えた重要なご指摘を皆さん参考にしてください。

つづいて伊東豊雄先生

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「イトウクンノ コタエ」

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「改修だとコスト半分」

http://toyokeizai.net/articles/-/38360?page=2

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現競技場の聖火台とは反対側のスタンド約4割を撤去し、2段または3段のメインスタンドと固定屋根を新たに造り、8万人の収容条件を満たす案。サブトラックは敷地南側に新設する。コスト高の要因となっているコンサートなどの利用は想定しない。

5月12日示されたイメージは配置やボリュームを当てはめた必要最小限の検討図。伊東氏らしい「軽さ」や斬新なデザインを期待していた向きには肩すかしだったろう。

伊東氏は「改修をするなら誰が考えてもこれに近い形になるのでは。シンプルでローコストでいい。費用は現在の1800億円ほどの計画に対し、ラフに見て半分で済むだろう。ただし、私自身がこれを進めていくつもりはないし、そういう立場にはない」と強調。傍らの中沢氏は「伊東さんが触媒となり、国民的な議論が広がることを期待したい」と述べた。

この伊東豊雄先生の改修案については以前解説したことがありますから、こちらも参考にしてみてください。

現国立競技場はチューンナップ出来るのか(4)

そして磯崎新先生です。

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「イソザキクンノ コタエ」

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新国立競技場は「粗大ゴミ」「亀」

http://architecturephoto.net/38874/

A、サスティナブルな競技場として現在地で更新するが、一過性のイヴェントであるオリンピック開会式にはつかわない。オリンピック競技場の基準にそったフィールドに整備すると同時にポスト・オリンピックに運用されると思われる諸施設を組み込む。群衆の流れなど周辺環境に配慮し、景観形成に細心の注意をはらう。

B、主競技用のフィールドで開会式を打ちあげた、かつてヒットラーの演出したベルリン大会以来のフォーマットを超えるメディアの時代のライブ性(10万人程度でなく、同時に10億人がテレビやインターネットを見る)をいかす舞台として、二重橋前広場で2020年の東京オリンピック開会式を挙行する。

江戸城の堀、石垣、櫓を背景にして、競技場フィールドより広い舞台を前に立体的な桟敷を設ける。約12万人収容可能。50に分解できる。終了後、全国各県にオリンピック記念公園(競技場)をつくり分散移設。空中を飛翔するカメラをはじめ、あらゆる角度からの映像を全世界に流す。

C、国際コンペの審査結果を尊重する。この段階の決定には一般的に二つの解釈がある。①、「案」を選ぶ。そのままの姿で実施する。(建築家は無名で、案の物理的な姿を評価する)②、その案を作成した「建築家」を選ぶ。プログラムに変更があるとき、その建築家が条件に適合する新しい案の作成者になる。(建築家の潜在的能力が評価される)

二重橋前の広場は確かに東京が誇るべき景観ですよね。

石垣と堀と松

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そこを開会式のセレモニーに使おう。仮設でつくってオリンピック後50に分解して日本中の公園に移設する。

同時多発的に開会式は他会場でも中継して、そうすれば競技場はもっと小さくなる。

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以上が日本の建築ビッグスリーの先生からいただいたヒントです。

注目すべきは、どの先生も設問4.と5.に入っている「コンサートのため」の機能を捨てろ!とアドバイスしていますね。

つまり、今の新国立競技場案は本来必要とされる機能をないがしろにして、後回しにしてまでコンサート会場のための施設に特化し過ぎているのです。

コンサートの観客動員数を増やしやすいように、ライブが雨天中止になってしまわないように、ということばかり考えてつくられたのが、新国立競技場コンペの募集要項なのです。

どんな試験でもそうですが、すべての問題を解こうとして、時間が間に合わなくなり、出来るはずの問題まで間違ってしまって、試験に落ちるということがあります。

今の、新国立競技場設計案はコンサート会場にしようしようとするあまりに全体が失敗しているのです。

槇先生がご指摘のように、コンサート会場として全体を屋根で覆うがために、不可能な計画をして3000億円近い多大な費用をかけざるをえなくなっており、そのためにライブ収入当て込んでいますが、それも芝生育成のためには年間12日という稼動率なのです。

で、そんなにライブやれんのか?という疑問も浮かぶわけですが、次のような記事もあります。

国立競技場単独ライブをおこなったのはわずか6組

https://www.huffingtonpost.jp/2014/05/31/kokuritsu-music_n_5422764.html

民間の大手芸能プロダクションと民間の大手広告代理店の売り上げを増やすためだけのイベントに、そこまで税金投入していいんでしょうかねえ。

ここまで、問題の傾向と対策が理解できたところで、もう一度ザハ・ハディド先生の回答を見てみましょうか

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「ザハクンノ コタエ」

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大間違いの答えです。

なんで間違ったのか?

この件でザハ・ハディドさんは当選案のコメントをしていないため、日経アーキテクチャー2013年4-10号でのインタビュー記事を抜粋します。(聞き手:畠中克弘、協力:山崎一也)

---新国立競技場はどのような意味がありますか。

ザハ:アイ・ドント・ノウ。そんなふうには考えていません。5年後、10年後にはこの作品の意味が分かるかもしれませんが、現時点では分からない。

---デザインコンペの勝因をどのように自己分析していますか。

ザハ:アイ・ドント・ノウ。それは私が答えるべきものではありません。

---コンペ当選時のパースと表彰式のパースでは建物の向きが180度変わっていました。

ザハ:そこに十分な土地がなかったからです。

---向きを変えることに問題はなかったと。

ザハ:ありません。

---新国立競技場は2019年のラグビーワールドカップだけでなく、2020年のオリンピックメーンスタジアムと想定されています。それを踏まえてどのようなスタジアムを構想したのですか。

ザハ:もっとも大切なことは、オリンピックだけでなく、あらゆるスポーツイベントに対応可能なスタジアムを構想したということです。陸上、サッカー、ラグビー、そしてイベント、、、。

---新国立競技場では敷地の条件をどのように考えましたか。

ザハ:東京の中心地にあり、都市のダイナミズムと直結しています。

---イベントが開催されないときもアクセスできるように考えたそうですね。

ザハ:ブリッジによって、人々は常にこのスタジアムを訪れ、使い続けます。スポーツのイベントだけでなく、あらゆるイベント、例えばファッションショーが行われるような場所でありたい。

---新国立競技場のプレゼンを見て設計の複雑さをより強く感じました。

それは「複雑さ」ではなく、「複合的」ということでしょう。

---施工の難易度は高そうです。

ザハ:そんに難しい施工ではないと思います。なぜならメーンはスケルトン構造だからです。形態はすでに解決しており、構造はそんなに複雑とは思いません。建物全体が量塊とケーブルネットによるものであり、テンション構造によって開放的にもなるし、閉じることもできる。

難しいというのはカタールの空調付きスタジアムのようなものを指すのではないでしょうか。

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そこに十分な土地がなかったから、、って分かってるやんけ!

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「あらゆるイベントのための施設」と言い切っていますね、ザハくんは。

なぜ、ザハくんが間違ったかというと、新国立競技場全国模試をおこなった安藤忠雄さんの出題が間違っていたからです。

まあ、出題ともいいがたい、なんか地方の町興しとかで商店街に食い込んで、夏の盆踊りイベントのチラシを作成した広告代理店のポエムみたいなものなんですけどね。

それでは、新国立競技場コンペ時の出題を見てみましょう。

これを読むと、どんだけ異常な出題をしていたかが、わかります。

このような狂った問題を出されると、どんな世界的な建築家でも間違った答えを出してしまうのは明らかでしょうね。

尚、この出題は、JSC発表の公式資料において

「有識者会議の下に設置されたスポーツWG(座長:日本サッカー協会名誉会長 小倉純二氏)・文化WG(座長:作曲家 都倉俊一氏)からの要望を、建築WG(座長:建築家 安藤忠雄氏)がとりまとめ、同デザイン競技募集要項の検討を行い、同年7月同有識者会議で了承されました。」と明記されております。

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安藤忠雄さんからの国立競技場の予想問題はこれだ!

設問1.日本を変えたい、と思う。(新しい日本をつくりたい、と思う。もう一度、上を向いて生きる国に。)

設問2.(そのために、)シンボルが必要だ。(日本人みんなが誇りに思い、応援したくなるような。世界中の人が一度は行ってみたいと願うような。世界史に、その名を刻むような。)

設問3.世界一楽しい場所をつくろう。(それが、まったく新しく生まれ変わる国立競技場だ。世界最高のパフォーマンス。世界最高のキャパシティ。世界最高のホスピタリティ。そのスタジアムは、日本にある。「いちばん」のスタジアムをゴールイメージにする。)

設問4.(だから、)創り方も新しくなくてはならない。

(私たちは、新しい国立競技場のデザイン・コンクールの実施を世界に向けて発表した。そのプロセスには、市民誰もが参加できるようにしたい。専門家と一緒に、ほんとに、みんなでつくりあげていく。)

設問5.「建物」ではなく「コミュニケーション」。

(そう。まるで、日本中を巻き込む「祝祭」のように。)

設問6.屋根はコンサート時には閉じてサッカーのときには開けられるようにしてほしい。

設問7.建築物の高さは70メートルを超えること。

設問8.客席を8万席設けること。

設問9.全体面積約18万㎡のうちVIP席関連を2万㎡設けること。

設問10.上空から見た鳥瞰パースを出すこと。

参考:

新国立競技場基本設計条件(案) - 日本スポーツ振興センター

http://www.jpnsport.go.jp/newstadium/Portals/0/shinchokujokyo/20131211_kihonsekkeijokenan.pdf

これだから、ザハがやろうが誰がやろうがロクなものは建たないんです。

特に設問1から5は、建築物に対する要望ですらなくて、老人のたわ言です。何を言っているのかすら分かりません。

 

この安藤忠雄さんがまとめたといわれる出題には、もともとの懸念事項、正しい設問にあった

「設問1:現国立競技場にはサブトラックがないので陸上の大会が開けません、どうにかしてください。」

も入っていないんです。

ということで、もうしょうがないんで、私なりに、槇先生、伊東先生、磯崎先生という、日本建築界のカリスマ講師陣のヒントをもとに回答を考えてみたいと思います。

(2014年11月28日「建築エコノミスト 森山のブログ」より転載)