行革本部で旧「新国立競技場」の検証作業が続く。
2013年8月の時点で、ザハ案に基づき、複数のプランが作成され、その中には1300億円に近いコストのものも含まれていたのがわかった。
2013年8月19日の検討資料を見ると
# 0 1 2 3 4 5 6
面積 22 22 22 22 22 29 29
万平方
メートル
可動 X X X ○ ○ ○ ○
屋根 なし あり
屋根 35 50 68 ○ ○ ○ ○
千平方
メートル 全面
可動 X ○ ○ ○ ○ ○ ○
席 なし あり
可動 X X X X X X ○
ピッチなし あり
立体 X X X X ○ ○ ○
通路 なし あり
キール△ △ ○ ○ ○ ○ ○
アーチ短い 長い
アーチ△ △ ○ ○ ○ ○ ○
スパン250m 350m
工事費1358 1464 1552 1689 1861 2244 3031上限
億円 1570 1746 2020 2365 2748 3535下限
と複数の案が検討され、もっともコストダウンしたものは概算で1358億円と、予定コストの1300億円に近付いている。
ただし、可動屋根なし、屋根は観客席のすべてを覆わない35000平方メートルのみ、キールアーチは地上に達しない長さで、250mスパン、立体通路も可動ピッチも可動席もなしというシンプルなものになっている。
しかし、この1300億円プランは取り上げられなかった。
8月下旬に、再度複数プランが検討されたが、今度は上記の#6からさまざまなものを外してコストダウンする手法がとられている。
その結果、キールアーチスパン300m、外装パネル半減、立体通路縮小、可動ピッチなし、面積22万平方メートル、屋根の遮音性能見直し、設備・音響見直し、1428-1851億円というプランが選ばれている。
最終的にこれが総工事費1852億円として提示されたプランになる。
この作業は4社からなる設計JVによって行われ、ザハ氏は途中のいずれの案も見ていない。
コンペで最優秀をとったザハ案だが、コンペの条件を逸脱していたブリッジを修正するという条件が付いたので、ザハ氏はそれを受け入れて修正すると同時に、南北を逆転させている。
さらにコンパクト化の指示に基づき、ザハ氏から350mのスパンを300mに縮める提案も出され、面積が29万平方メートルから22万平方メートルに小さくなった。
設計JVとザハ氏の間のやり取りは、面積を減らす、駐車場の台数を減らす、商業施設・博物館の面積縮小といった「機能」を落とさざるを得ないというJVからの提案をザハ氏側が受け入れるといったものに限られ、コストがいくらになりそうかといった数字のやり取りは一切なかったという。
1852億円のプランについては、ザハ氏側に対して提示され、ザハ氏が同意したという。
なぜ1300億円までコストダウンできなかったかといえば、そこまで変えてしまうともはやザハ案ではなくなってしまうからだという。
オリンピック招致の成功にあのザハ案が果たした役割が大きいと関係者の多くは考え、国際公約だととらえていたので、財務省はまったくみとめていない1300億円のコストをさらに超越してもザハ案をやらなければならないという雰囲気だったことがわかってきた。
オリンピックの招致をIOCは、建物のデザインで決めているのだろうか。だとしたら、IOCはオリンピック招致のためのルールをもっとまともなものに変える必要がある。
日本サッカー協会は、いまだにワールドカップ招致といっているが、自民党の行革推進本部は、招致のためのルールが変更されない限り、ワールドカップ招致に手を上げることには反対する。
もちろん、8万人規模のスタジアムにもだ。
(2015年8月25日「河野太郎公式ブログ ごまめの歯ぎしり」より転載)