今回の忌まわしいイスラム国の一件は、中東の問題、あるいは、日本の対応などビューポイント(=視点)によっていろいろな見方が出来る。
まず日本の問題で言えば、8月に湯川遥菜さん、10月に後藤健二さんがそれぞれ拘束されて以降、日本政府は釈放に向けた努力をしてきたと思う。しかし、それをするにも、安全保障・軍事に関する日本の情報収集能力は限られている。とくに中東地域では、日本の当事者能力はないに等しい。
内戦の激化で在シリア大使館は大使館機能を隣国のヨルダンに移転し、シリア国内には外務省の職員がいない状況がずっと続いてきた。このため、一部で指摘されているような、ヨルダンではなく、トルコを仲介交渉役に立てるという選択肢はそもそもなかった。
イスラム国が簡単に日本人人質を解放しないことは明白だった。彼らは自らの宣伝のために最大限、最後まで日本と後藤さんを利用した。自分たちの存在を世界に見せつけることで、世界中からさらに若者を集めようとしている。
アメリカやイギリスは常にテロに対しては全力でつぶしにかかってくる。日本のように揺れ動かない。イスラム国にとって、日本は利用しやすい国だった。
日本政府は8月から12月にかけ、人質解放に向け、イスラム国とunder the table、つまり裏取引でやろうとしていたのだろうが駄目だった。日本にはアメリカのCIA(中央情報局)のような組織がないからだ。今回、NSC(国家安全保障会議)は機能したが、CIAのような組織がないと情報が取れない。しかし、国家情報をめぐる特定秘密保護法の成立でさえ、あれだけもめたので、日本版CIAの創設となれば、国論が真っ二つの事態になるだろう。
イスラム国は今回、安倍首相の中東訪問のタイミングを計って、実行したとみられる。そして、日本は常に受動的な対応しかとれなくなっている。これは安倍政権以外でも同じことだ。