「現地・現物」とか「現地・現物・現場」など企業によって言い方は様々だが、いずれも「現場主義」の大切さを説いている。モノづくりにせよ、何かを決めるにせよ、実際に現場に行き、現物を見ながら行うことが大切で、現場への関心が薄れたり、現場との距離が遠くなると、とかく問題が起きがちだというのは過去にいくつもの企業が証明しているところだ。
現場へ行くことが大切だという点は、投資の世界も同様だとバフェットは示してくれる。企業の対価とその価値の差を知るには、対象となる企業が内在する全ての価値を正確につかむ必要がある。不動産など帳簿に載っている価値はすぐにわかるが、帳簿に載らないブランド価値や信用の価値評価は簡単には出ない。
バフェットは言う。
「企業の内在価値を正確にはじき出す公式はありません。企業について知ることがまず大事です」
そして知るためには、とにかくたくさんの人に会って話を聞き、資料を集めて事実を掘り起こすことだと言っている。
実際、バフェットは猛烈な読書家であると同時に、結構マメに現場に行く人でもあった。かつてアメックスの株価が急落した際、レストランなどに足を運び、同社が従来通りの信用を保っていることを知り、投資を決めている。映画『メリー・ポピンズ』をオマハからニューヨークまで観に行ったこともある。そこまでして観たのには理由がある。
「私はこの映画がこの先何年もくり返し上映されるかどうか、自分の目で確かめたかったのです」
『メリー・ポピンズ』はディズニーが制作した映画だ。ディズニー株は当時、割安感はなかった。バフェットはディズニー株を買うにあたって、現物を調べたのである。
バフェットは、ディズニーに投資すれば『白雪姫』だけでなくミッキー・マウスやディズニーランドまで付いてくる素晴らしさに気づき、ディズニーの企業価値を知ることになる。投資に限らず、「耳で聞いて納得する」だけでなく、時には「現場に行き、目で見て確認する」姿勢も必要になる。
執筆:桑原 晃弥
本記事は書籍「1分間バフェット」(SBクリエイティブ刊)を再構成したものです。