日本の気候変動対策目標案に対し声明を発表

日本の新しい気候変動対策目標案について、「2030年までに2013年比で20%削減」という目標が、政府内部で調整されていると、一部の報道で報じられています。

日本の新しい気候変動対策目標案について、「2030年までに2013年比で20%削減」という目標が、政府内部で調整されていると、一部の報道で報じられています。この内容は、1990年比に換算すると、約10%の削減となり、日本が掲げる目標としては低過ぎるといわざるをえません。WWFジャパンは、この状況を非常に危惧し、緊急の声明を発表しました。

低すぎる削減目標

日本の国内では現在、日本の新しい気候変動対策目標案について、温室効果ガスの排出量を「2030年までに2013年比で20%削減する」という目標が、政府内部で調整されているという報道が流れています。

この内容は、1990年比に換算すると、約10%の削減にしかならず、日本が掲げる目標としては低過ぎるといわざるをえません。

さらに、その中で設定されている「2013年」という基準年の選択は、近年、最も排出量が大きかった年を基準とすることを意味しており、低い削減目標を大きく見せようという意図も疑われます。

WWFなど温暖化問題に取り組むNGOは、日本が少なくとも1990年比で40~50%削減する必要があることを指摘しています。

気候変動の脅威を抑えるためには、より野心的な削減目標を掲げ、その実現をめざす必要があります。

WWFジャパンは、この状況を非常に危惧し、日本が掲げるべき目標はどのようなものなのか、また、日本は、国際的な気候変動対策に対してどのように貢献すべきかについて、以下のとおり声明を発表しました。

2015年4月10日 声明

日本の2030年温暖化目標「 90年比1割減」はありえない 「2030年の目標は、1990年比40~50%削減」可能

日本の新しい気候変動対策目標の議論が佳境に入っている。国際的には、2015年3月末までに国連に提出することが期待されていたが、日本はそれを果たせなかった。このため、せめて6月のG7および国連気候変動会議までに、提出することを日本政府は目指している。

政府審議会での議論はいまだ続いているが、一部報道では、その案として「2030年までに2013年比で20%削減」という目標が政府内部で調整されていると報じられた。この目標案は、1990年比に換算すれば約10%削減でしかなく、技術先進国・日本が掲げる目標としてはありえない。この目標では、国際的に公平かつ野心的な目標とは到底見なされず、2015年12月に開催されるCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)へ向けての国際的気運を削ぎ、日本は国際的信用を失うだろう。

また、2013年という基準年の選択は、近年、最も排出量が大きかった年を基準とすることで、低い削減目標を大きく見せようという意図が疑われる。そのような小細工で、恣意的にEUやアメリカ目標と比較したところで、国際的な信用は得られない。京都議定書で使用した1990年か、もしくはIPCC第5次評価報告書で示された必要な削減量との比較から、2010年を使用する方が適切である。

WWFジャパンは、気候変動に取り組む他のNGOと共に、日本の目標として、2030年までに1990年比で40~50%削減を提言している。これは、単に国内での排出削減可能性だけでなく、世界全体で必要な排出削減の中で、日本の責任と能力を考慮した上で、提言するものである。この背景には、WWFジャパン自身が行った定量的なエネルギーシミュレーションがある。このシミュレーションは、40~50%削減が、技術的にもコスト的にも十分可能であり、むしろ化石燃料をすべて輸入に頼る日本にとっては国益にかなう選択であり、あとは政治的意志の問題だけであることを示している。(参考資料①・②)。

また、日本は、資金や技術を通じて、海外での排出量削減にも貢献するべきである(国内排出量削減とは別)。さらに、気候変動の影響に対応する適応についても、基本方針を掲げるべきである。

COP21は、国際的な気候変動対策にとって、極めて重要な局面になる。日本は、公平かつ野心的な目標を通じて、COP21での合意成立に貢献するべきである。

参考情報

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