2016年8月29日から福岡で中西部太平洋まぐろ類保存委員会(WCPFC)の北小委員会が開会されます。かつての2.6%まで資源が失われ、深刻な危機が指摘される太平洋クロマグロ(本まぐろ)について、今回は初めて、全米熱帯マグロ類委員会(IATTC)と合同で開催する会議も予定されています。漁業の継続が難しいレベルまで低下している太平洋クロマグロの保全をめぐり、どのような措置が合意されるのか。その行方が注目されます。
太平洋全域のマグロ資源管理を話し合う初めての機会に
太平洋の海洋生態系の頂点に立つ太平洋クロマグロ。
東アジア近海からメキシコ沿岸まで、大洋を回遊するこの大型魚は、資源としても重要な魚種であり、日本はその最大の消費国です。
しかし、長年続いた過剰な漁獲により、その資源量は危機的な状況に陥っています。
北太平洋マグロ類国際科学委員会(ISC)は2016年7月に発表した最新報告の中で、太平洋クロマグロの資源量が漁業開始前と比べ2.6%まで減少している「枯渇状態」にあることを指摘。
資源量、回復の水準、いずれも指標としては漁業の継続が難しいレベルまで低下していることを示し、警鐘を鳴らしました。
そうした中、8月29日~9月2日まで、福岡で開催されるWCPFC北小委員会では、今回初めて、IATTCと合同で太平洋クロマグロに関する合同会議が行なわれることになりました。
8月29日午後~8月31日の午前にかけて開かれるこの会合は、日本近海を含む太平洋の中西部でマグロ資源を管理する国際機関WCPFCと、同じく太平洋の東部を管理するIATTCが、初めて合同で行なうもので、太平洋全域を視野に入れた資源管理の在り方を議論する場となります。
資源回復につながる各国の合意を
実際、危機的な状況を回避するため、これまでWCPFCとIATTCには、まずは太平洋クロマグロの資源量を当初のおよそ20%まで回復させる、長期的な計画を採択し、成魚と未成魚を共に保全することが求められてきました。
しかし残念ながら、両機関ではそれを実現する上で十分な措置を合意することに、これまでもたびたび失敗してきました。
日本をはじめ両機関に加盟する各国政府が、今回の会合において、厳しい漁業管理措置に向けた前向きな意思を示さない限り、資源量が残りわずかに2.6%となった太平洋クロマグロに回復の光が差すことは期待できません。
今回の会合に参加するWWFジャパン海洋水産グループ長の山内愛子も「科学的根拠と予防原則をふまえた「長期的な資源回復計画」に合意できなければ、WCPFC北小委員会とIATTCは共に機能不全に陥っていることになる」と懸念を指摘しています。
「一時禁漁」も視野に
WWFはこの会議の開催にあたり、WCPFCおよびIATTCに対し、次の要望と提案を行なっています。
1.各国の漁獲規制の基礎となる限界管理基準値(これ以下になると回復が不可能と目される「生物学的」な資源量)と、目標管理基準値に合意すること
2.2030年までに合意した限界管理基準値を上回るレベルまで、資源を回復させることを目標とした長期的な回復計画を採択すること
3.漁獲が制限される幼魚のサイズを30kgから85kgに引き上げること。また、成魚の漁獲量制限を導入すること
4.漁獲状況の調査を徹底するために漁獲証明制度(CDS)を導入すること
WWFは2016年内にこれらの措置が合意されない場合は、太平洋の全域において太平洋クロマグロの一時禁漁の実施を検討する必要があると考えています。
きわめて不透明な状況にある、太平洋クロマグロの未来。
これから始まる5日間の会合で何が合意されるのか、その展開が注目されます。