東大が見せた底力、学生自主企画の「合格お祝いイベント」に参加してみた

東京大学は本郷キャンパスで例年実施してきた合格者番号の掲示を取りやめてしまった。総合図書館などの改修にともない、掲示場所が確保できないというのがその理由だ。だが、それでは味気ない、自分たちの味わった興奮を後輩たちにも味わってもらいたい、と現役学生の有志たちが立ち上がった。そして、3月13日に新入生歓迎イベント「Freshman Festival 2014」が開催されたのだ。

東京大学は本郷キャンパスで例年実施してきた合格者番号の掲示を取りやめてしまった。総合図書館などの改修にともない、掲示場所が確保できないというのがその理由だ。

だが、それでは味気ない、自分たちの味わった興奮を後輩たちにも味わってもらいたい、と現役学生の有志たちが立ち上がった。そして、3月13日に新入生歓迎イベント「Freshman Festival 2014」が開催されたのだ。

開催場所は、駒場キャンパスの生協コミュニケーションプラザと第二体育館。そのうち第二体育館では、例年本郷で行われていた「合格発表」の様子を再現するというのがコンセプト。合格者は、模擬的に表示された番号を見て、先輩たちからバンザイ三唱や胴上げの祝福を受けた。

私も会場に足を運んだが、その熱気には圧倒された。応援部による演舞演奏や、ジャグリングなども披露され、まさに例年の合格発表の日が再現されていた。

複数の合格者に話を聞いたところ、掲示のない発表は「寂しかった」とのこと。

文科一類に合格した鈴木駿也さんは、「胴上げ最高でした! 合格発表当日はネットでひとりで見てちょっと淋しかったですし、受かった実感がなかったので、今日は来られて本当によかったです。感謝しています」と語りました。

東京大学新聞オンラインより

そして生協コミュニケーションプラザの会場では、上級生と新入生の交流会のほか、新入生による「東大で学びたいこと」をテーマにしたプレゼンのコンテストも開かれた。

コンテストに参加した新入生は、「知らない人ばかりの前でいきなりプレゼンをすることになって緊張しました」といいながらも、東大での抱負を語っていた。

理科一類に合格した田中絃貴さんは、3歳から11歳までアメリカのニュージャージー州に住み、また高校2年生の時に留学プログラムに参加した経験があって、異なる地域にいる人たちのさまざまな考えに触れることの大切さを学んだという。そして、日本で一番、さまざまな地域から人が集まる東京大学を選び、いろいろな「良さ」を融合した「ハイブリッド」を目指したいとのこと。

合格者番号の掲示がなくなったのは残念だ。だが、「伝統を絶やしてはいけない」と、学生が行動したのは素晴らしかった。短期間での準備にもかかわらず、なんとおよそ200人もの新入生が集まったという。初めての試みで手探りでのイベントだったが、場所を提供してくれた生協や教養学部も暖かく見守っていた。聞けば、胴上げについても、安全を確保するために、きちんとルールが決められていたという。

私が東大に入学したのは20年前の1994年。そのときの入学式では、当時の教養学部長だった蓮實重彦先生がこんなことをスピーチしたのを覚えている。「入学おめでとう、というが、実は祝福されているのは、君たちではなく、大学そのものなんです。新しい人が加わり、大学はまた生まれ変わり、祝福されるのです」

学生によって自主的に企画されたお祝いイベントこそ、まさに大学が新しい人を迎え、祝福されていることを象徴している。ここから新しい伝統がつくられていくにちがいない。

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