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2018年06月06日 12時36分 JST | 更新 2018年06月06日 12時36分 JST

300万人のハンセン病患者が今も見つけられるのを待っている。

誤解や偏見は、根深いのです。

日本財団
政府から任命されたアシャと呼ばれるヘルスボランティア(中央)と彼女が見つけたハンセン病の患者さんと筆者(右)。

2005年末、インドでは人口1万人あたり患者数1人未満というハンセン病の制圧目標が達成されました。多くの人が不可能だと考えていたこの成果は、ハンセン病治療薬の開発に匹敵する、大きな出来事でした。

しかし、それ故に世界のハンセン病との闘いに、達成感や安堵感が生まれ、制圧活動にゆるみが見え始めました。各国政府の治療活動に対する意識の低下と、予算削減が進行し、年間の患者発見数は20万人から25万人の間で推移しています。患者発見の遅れから、すでに何らかの障害のある新規患者も多く、しかも子どもの新規患者が減少していません。ハンセン病蔓延国には、蔓延率の極度に高い「ホットスポット」と呼ばれるアクセスの難しい地域が数多く存在し、未確認患者数は、全世界で300万人に達するという試算もあります。

そんな状況を打開するために、私たち日本財団はWHO(世界保健機関)と共催で、2013年7月に17か国のハンセン病蔓延国の保健大臣、次官などを招いて「国際ハンセン病サミット」をバンコクで開催し、さらなる活動の活性化を図ることを目指す「バンコク宣言」を採択しました。

日本財団
17か国の保健大臣などが参加した「国際ハンセン病サミット」

しかし、新規患者の発見は、一時的に有病率を高めることになり、患者数が多いことをいまだに「国家の恥」とする意識が強いこともあって、なかなか事態は打開されないままにありました。そんな中、積極的に新規患者の発見活動を展開している国もあります。例えばインドやインドネシアです。両国とも国レベルでは制圧目標は達成したものの、州や県などの自治体レベルでは、高い有病率を示す地域も少なくありません。

インドでは、各州で新規患者を発見するキャンペーンを実施し、大きな成果を挙げました。また政府から任命されたアシャや、コミュニティで選出されたミタニンと呼ばれるボランティアによる、戸別訪問による草の根的な患者発見活動も定着しています。

インドネシアではハンセン病についての知識を啓発する歌と踊りをテレビなどで放映し、早期発見に結びつけることが行われています。また周囲の差別の眼を気にして、病院に行きにくい状況を打開するために、保健センターなどでハンセン病だけに特定しない皮膚疾患全般の診療キャンペーンを行うことで、受診者の心理的障壁を取り除き、新規患者発見の成果を上げています。

日本財団
コミュニティで選出されたミタニンと呼ばれるヘルスボランティア(右から2人目)と彼女が見つけたハンセン病の患者さん(左端)。

患者にとって、これらのキャンペーンで早期発見されることは、本来幸運なはずなのですが、残念ながら現実はまだそれほど単純ではありません。私が出会った多くの患者たちは、治療薬で完治することがわかっていながらも、安堵するどころか、その表情は苦悩に満ちていました。自分が「呪われた病気」にかかってしまったことへの絶望や、完治してもなお差別されることに対する恐れによるものです。それほどハンセン病に対する誤解や偏見は、根深いのです。