18歳・19歳が政治で最も関心のあるテーマは?-NHK世論調査

NHKが昨年11月から12月にかけて18歳、19歳を対象にした世論調査を行った。

NHKが昨年11月から12月にかけて18歳、19歳を対象にした世論調査を行い、その結果を公表している。

その中では、約60%が「投票に行く」とし、約53%が政治に「関心ある」、約74%がいまの日本の政治に「満足していない」と回答した。

日本は「格差が大きすぎる」

日本社会について聞いた質問では、「日本の所得格差は大きすぎる」という意見は約73%で、NHKが2009年に16歳以上を対象に行った世論調査の約74%と変わらない結果となった。

最も関心があるテーマは「雇用・労働環境」

また、「政治に関するテーマで最も興味があるテーマは?」という質問には、約53%で「雇用・労働環境」が最も高く、「社会保障政策」、「景気対策」が続く。「子育て支援や少子化対策」と「外交・安全保障」が同列だが、調査を行った時期が安保法案可決から約2ヶ月後、フランス同時多発テロ事件が起きた直後であることを考えると、参院選が行われる頃には安全保障への関心はもう少し低いと見るのが妥当だと思われる。

的確に動向を押さえる自民党、ズレている民主党

こうした若者の世論調査の結果を見ても、自民党は的確に動向を押さえ、手を打っているような印象を受ける。具体的には、景気対策としてのアベノミクスに始まり、雇用・労働環境や子育て支援・少子化対策としての「一億総活躍」だ。また、社会保障に関しても、小泉進次郎議員を事務局長にした「2020年以降の経済財政構想小委員会」を発足し、対策していこうと見せている(関連記事:若者政策まで自民党に取られた民主党はどこに存在価値を見出すべきか?)。

一方、民主党は選挙対策としての「野党共闘」に走り、「若者、若者、若者の年」としながらも、このタイミングで安保廃止案を提出し、「市民」ばっかり向いているような印象を受ける。本当に、若者向けの政策を掲げるなら、自民党とは違った形での、景気対策、雇用・労働環境改善策や子育て世代への支援などを掲げるべきだと思うが、まともな対案を出せていない。

民主党が掲げている大きな若者向け政策の一つは、「給付型奨学金導入」だが、18歳・19歳でさえ、「教育政策」への関心は6番目だ(約26%)。もちろん重要な政策の一つではあるが、「災害対策」とほとんど変わらず(約27%)、この政策によって大きく支持が動くとは思えない。

もし本当にこの政策を重視するのであれば、米大統領選で躍進しているバーニー・サンダース氏のような大学の学費無料化といった抜本的な政策を必要とするだろう(関連記事:若者からの支持を集める民主党サンダース氏、共和党ルビオ氏)。

実際、米国と同様に、日本の大学授業料も上がり、2015年度の国立大授業料は年間約54万円で、40年前よりも15倍に値上がりし、大学生2人に1人が奨学金を借り、卒業時に数百万円の借金を背負う状況となっている。そこで、学費無料化ぐらいの政策を訴えれば若者票が動くかもしれないが、現状は公明党が公約にしている「返済不要の給付型奨学金」などとあまり変わらないレベルの政策を掲げようとしている。

結局、高齢者にも若者にも嫌われない、無難な政策を掲げるにとどまっており、対策を出せないようでは、支持・投票行動にまでは結びつかない。批判も大事ではあるが、批判するだけでは、政権与党が何をしようとしているかはメディアを通して伝わっても、野党が何をしようとしているのかは伝わらない。

自民党は悲願の憲法改正を行うために、高齢者に3600億円も使って一時的な給付を行い、高齢者からの支持を集めようとしている。その代わりに、厚生労働省は4月から、シングルマザーになった人に対する経済的な支援を拡充し、就職を目指し教育訓練を受けるひとり親や、ひとり親を雇う企業への資金補助を増やすとしている。

また、子どもの教育支援策も拡充、市町村民税の非課税世帯を対象に、子どもの高校や大学の授業料に充てる貸し付けの上限額を、これまでの1.5倍に引き上げた。さらに今国会で非正規雇用の待遇を改善する「同一労働同一賃金」の実現にまで動いている。

アベノミクスの効果が切れつつあり、今後さらに景気が悪化すれば、消費税増税延期を理由に衆議院解散総選挙を行いそうだが、その時に民主党がアベノミクスの批判に終わり対案を出せなければ、自民党の「消費税増税延期」という景気対策に敗れ、大敗すると考えられる。

若者も「年金や介護などの社会保障が充実するなら、税負担が今より増えてもよい」

日本は、近年増加しているものの、意外にGDPに占める社会保障費の割合は少なく、NHKの18歳・19歳向け世論調査でも「年金や介護などの社会保障が充実するなら、税負担が今より増えてもよい」と考える割合が63%という結果も出ている。

そのため、民主党は北欧モデルを掲げ、増税する代わりに年金や介護を充実させる政策を出す。また、生活保護といった事後的な対処だけでは限界があるため、最も将来の収入に影響する就学前教育を充実させるという対案を出すのも選択肢の一つだろう。大学を無償化するよりも格差縮小につながる可能性が高い。

現状の民主党は本当に政権を取ろうとしているのかよくわからないが、自民党とは違う理想の国家モデルを示し、きちんと財源を示した上で景気対策や雇用など多くの国民が重視している点で対策を出されることを期待したい。

(2016年2月21日「Platnews」より転載)

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