AIの未来は人間の倫理をぶち壊す?映画『Ex Machina(エクス・マキナ)』は『her』を全然超えちゃった

爆発的にヒットしているわけではないですが、アカデミー賞2部門にノミネートされヨーロッパを中心にじわじわと人気を集めている作品です。

どうも、wasabi( wasabi_nomadik)です。

最近すごい映画を観ちゃいました。

2015年にイギリスで制作された映画、『Ex Machina(エクス・マキナ)』です。

監督はアレックス・ガーランドという人。彼はイギリスの超有名な映画監督ダニー・ボイルとのコラボレーションで知られているそうな。

『Ex Machina(エクス・マキナ)』はアレックスのデビュー作となります。

爆発的にヒットしているわけではないですが、アカデミー賞2部門にノミネートされヨーロッパを中心にじわじわと人気を集めている作品です。

日本ではまだ公開されていないようなので、ネタバレはほどほどにしておきますが話のあらすじをざっくり説明すると、こんな感じ。

▪︎ 『Ex Machina(エクス・マキナ)』あらすじ

主人公はケイレブという若いプログラマー。彼はとある検索エンジンサイト(Googleを彷彿とさせる)で働いているのですが、ある日社内の抽選で選ばれ、CEOネイサンの自宅を訪問する権利を獲得します。

このCEOの自宅が一般社会から隔絶された森の最中にあって、ヘリをチャーターして行かないと辿り着けないというトンデモナイ場所にあるのです。

行ってみると世間話もほどほどに、CEOネイサンから本題が切り出されます。そう、抽選に当たった本当の目的は、ただの楽しいお宅訪問ではなかったのです。

ネイサンの自宅は人工知能開発のための「研究所」であり、ケイレブはここで開発しているAIのチューリング・テストを実施するように命じられます。

チューリング・テストというのはアラン・チューリングという数学者が開発した、ロボットか人間かどうかを確かめるために行うテストのことです。

本来ならばテストをする人間側は、実験中言葉を交わすロボットなり人間なりが見えない仕組みになっているのですが、今回ケイレブがテストするAIは、その段階はすでにクリアし、 ロボットなのか人間か区別がつかなかったという結果が出たほど精緻なAIであることが確認された設定です。 ケイレブは更なる高度なテストを行うためにここに呼ばれたのです。

そのAIの名前は、「AVA(エヴァ)」。はっと目をひくような美貌で、服を着せたらとてもロボットには見えません。顔も、表情も、話し方も全てが完璧で、ケイレブはエヴァをテストをしているつもりが、エヴァをだんだん人間として(?)魅力を感じ、恋心を抱くようになっていきます。

エヴァの側も「私をここから出して・・・あなたと一緒に逃げたい」なんて言い出します。ネイサンに言わせれば、それはエヴァがここから出たいがためにケイレブを利用しようとしているだけだ、と言います。それでもAIとの愛を信じて、研究所のドアを開けるためにケイレブは研究所のコードをこっそり書き換えるのです。そうしてエヴァを逃がすと待っていた結末が・・・

ここまで書いちゃったけど、Wikipediaを見れば全部ネタばれするのでこの映画が気になる方は注意してくださいね。

いや〜すごい映画でした!

結末がけっこう衝撃的なので、「AIって怖い!将来どうなっちゃうの!?」と思う人も多いかもしれません。

でも、私は超すがすがしい思いがしたんです。「好奇心の純粋さ」を観ているような気がしました。

今の世の中って、ネットの影響でいろんなめんどくさいことが一気に省ける時代になってきています。一昔前だったら、例えば有名な歌手になりたかったら色々な人間のメンドクサイ感情、嫉妬、ヒエラルキーの中をくぐりぬけなければいけませんでした。でも今は良い音楽を作ってYoutubeに載せればヒットするもっとシンプルな世の中になっていると思います。

どんどん高見を目指していけるんですよね。で、この映画を観てたら、「そのメンドクサイことが全て省かれた究極の未来に起こりえること」を観ているような気がしたのです。

それが良い事かどうかは分かりません。人間の価値がすごく低くなってしまうとも捉えられないことです。それでも、いろいろな事が頭を駆け巡りました。

「そもそも人間てなんなんだ?」

「そもそも生きるってなんなんだ?」

「こういう未来が待っているとして、改めて人間の価値とはなんなんだ?」

AIに関する映画は数多くあれど、ちゃんと哲学的にこれからの人間が考えるべき倫理を考えさせてくれるものってそうそうないので、本当衝撃を受けました!

▪︎ 『her』を超えたな、と思った理由

2013年に制作されたスパイク・ジョーンズ監督の映画『her/世界でひとつの彼女』は日本でも好評でしたが、私個人的には『Ex Machina』は余裕で『her』を超えましたね

『her』も途中まで面白かったのですが、結局最終的には「人間の感情」にテーマが戻ってしまってガッカリした覚えがあります。

「結局、ロボットはロボットだね」なんていう印象で終わってしまったからです。

でも、人間よりもロボットの方が今後いろんな能力の面で優れた存在になっていくことは明らかです。今後人間の仕事はロボットに奪われるとも言われていますし、もう実際そうなってきています。

その点、『Ex Machina』は違いました。

AIが人間を超えるのは当たり前。その事実を見せた上で、「じゃあ、人間はどうするべきか?人間の価値とは?」というのをちゃんと問題提起しているんです。

まだ日本で公開されていないようですが、DVDは購入できるようなのでチェックしてみてはいかがでしょうか?

(2016年2月6日 「WSBI」より転載)

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