先日、愛知県武豊町民会館「ゆめたろうプラザ」で、講演会「音楽がある、人生がある 音楽療法の魅力~ラスト・ソングを求めて」を行いました。
武豊町では毎年、「芸術と科学のハーモニー講演会」が開催されています。
近年講演を行った方は、金沢21世紀現代美術館元館長の蓑豊氏、脳科学者の茂木健一郎氏、昨年ノーベル物理学賞を受賞された、名古屋大学大学院教授の天野浩氏など。このような素晴らしい講演会に招待していただき、光栄でした。
講演会では、音楽の力、音楽療法、終末期医療における音楽療法に関して、ビデオや生演奏を含めながらお話しました。
•音楽の力とは一体何なのか。
•患者さんとご家族が有意義な時間を過ごすために、音楽療法士にできること。
•聴覚は最期まで残る感覚だからこそ、終末期医療で働く音楽療法士には重要な役割があること。
•音楽回想法によって患者さんがどのように心を開いていくのか。
•認知症の患者さんと、音楽を使ってコミュニケーションを図ることが可能であること。
参加者の方々は、音楽療法士さん、音楽療法学科の生徒さん、作業療法士さん、お医者さん、看護師さん、中学校の校長先生、自宅でご家族の介護をされている方など、さまざまな方が来てくださいました。
講演会の後、参加してくださった内科医の先生とお話する機会があったのですが、その時の彼の言葉がとても印象的でした。
「音楽療法がもっと普及するといいですね。医療ではエビデンスが大切だけど、こういう療法はエビデンスが出しにくいと思うんです。でも、重要なことだってわかるし、共感できます」
音楽療法は臨床やエビデンス(科学的証拠)に基づいた療法で、欧米では多くのエビデンスが出ています。しかし、エビデンスが出しにくい療法であるということも事実。なぜなら、人間の心やスピリチュアリティーに関して、科学的測定をするのは難しいからです。
先生とお話した後、アインシュタインの言葉を思い出しました。
Everything that can be counted does not necessarily count;
everything that counts cannot necessarily be counted.
~Albert Einstein
数えられるもののすべてに意義があるわけではない。
意義のあるものすべてが数えられるわけではない。
~アインシュタイン
まさに「芸術と科学のハーモニー」の難しさや、その大切さを考えさせられた一日でした。
今後、医療で音楽療法が取り入れられることはとても重要です。なぜなら、音楽療法を必要としている患者さんやご家族がたくさんいるからです。また、医療で取り入れられない限り、音楽療法は「レクリエーション」で終わってしまう可能性があるからです。
そのためにはエビデンスも必要ですが、もしかするとそれ以上に大切なことがあるのかもしれません。
それは、患者さんにとって一番いい医療とは何かを考え、患者さんのためになることを取り入れていく姿勢ではないでしょうか。
(「佐藤由美子の音楽療法日記」より転載)
著書: 『ラスト・ソング 人生の最期に聴く音楽』(ポプラ社)
Facebook: Yumiko Sato Music Therapy
Twitter ID: @YumikoSatoMTBC