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2018年01月06日 16時50分 JST | 更新 2018年01月06日 16時50分 JST

知らず知らず看護師に積み重なる悲しみ…「プロフェッショナル・グリーフ」を知っていますか?

どのように乗り越えればいいのでしょうか?

pixabay

■ プロフェッショナル・グリーフとは?

病院、高齢者施設、在宅ケアなどの現場で働いていると、喪失を頻繁に経験します。

患者さんや利用者さんが亡くなったとき、私たち医療従事者も悲しみを経験しますが、それを表出する機会は少ないのではないでしょうか。

大切な人を失ったときに起こる深い悲しみをグリーフと言いますが、職業柄起こるグリーフは「プロフェッショナル・グリーフ」と呼ばれます。

日本では耳慣れないかもしれませんが、アメリカの医療者の間では、よく聞かれる言葉です。

このようなグリーフが長年積み重なると、さまざまな症状が現れます。仕事が思うようにできなくなったり、バーンアウト(※)したりするのです。

※燃え尽き症候群のこと

私も長年ホスピスケアに携わる中で、プロフェッショナル・グリーフを経験しました。

しかし、医療従事者は患者さんの死を個人的なものと捉えないようにトレーニングされていますので、このようなグリーフは自分でも気づかないことが多いです。

あなたの職場では、悲しみを表現できるような雰囲気はありますか?

私が、家族やペットとの死別というパーソナル・グリーフ(個人のグリーフ)を経験したときには、プロフェッショナル・グリーフが重なり、仕事が続けられないと思った時期もありました。

そんなとき役に立ったのは、グリーフについての知識とそれに向き合うための具体的な方法でした。

今回は、医療従事者が経験するプロフェッショナル・グリーフとそれを乗り越えていくためのヒントをご紹介します。

■ プロフェッショナル・グリーフ」と「パーソナル・グリーフ」の違いは?

「プロフェッショナル・グリーフ」であっても「パーソナル・グリーフ」であっても、グリーフは、身体的、精神的、社会的、スピリチュアル的な面で私たちに影響を与えます。

例として、下記のような症状が挙げられます。

・体がだるく、疲れやすい

・食欲がない

・夜眠れない

・溢れ出すような気持ちに圧倒される

・何も感じない(無感覚・無感情)

・突然イライラしてしまう

・周囲の人が自分の心の苦しみに気づかない、ということに驚いてしまう

・大切な人の死を防げなかった自分に罪悪感を覚える

・自分自身や周りに怒りがある

・物忘れがはげしくなる(例:頻繁に鍵をなくす)

・何か言いかけて、忘れてしまう

・物事に集中できない

・人生が虚しく感じ、意味がないものに思える

・忙しく予定を立てて、悲しみをまぎらわせようとする

このリストからもわかるように、グリーフの症状は幅広く、人によって異なります。

■ プロフェッショナル・グリーフの特徴

プロフェッショナル・グリーフはパーソナル・グリーフと違い、大抵の場合オープンにされることはなく、個人の心の中にしまったままになっています。

医療従事者はプロとして、患者さんの死を個人的なものと捉えないようにしていますし、日々の忙しい仕事に追われ、一人ひとりの死に向き合う暇もない、という現状があるからです。それでもグリーフは、知らず知らずに積み重なっていきます。

プロフェッショナル・グリーフの特徴をいくつか挙げてみましょう。

・グリーフが隠れていて、わかりにくい

・喪失が積み重なっていき、グリーフが慢性化する

・グリーフが怒り、不安、罪悪感、無力感、非難などの感情として現れる

・喪失が起こってからグリーフを経験するまでに、時間がかかる場合がある

・グリーフが燃え尽き症候群につながる

■ 私たちにできることとは?

グリーフの過程で最も大切なことは、自分のグリーフを認識し、何らかの形で気持ちを表現することです。そのためにできる方法をいくつかご紹介します。

・定期的にスーパービジョン(※)を受ける

・日記をつける

・音楽やアートを通じて気持ちを表現する

・信頼できる同僚に気持ちを打ち明ける

・「自分のための時間」をつくり、好きなことをする

・健康的な食事、充分な睡眠、適度な運動を心がける

(※専門家からの支援)

「音楽療法士は『普通ではないこと』を日々経験し、それを知らず知らずに家に持って帰ってきてしまう。まずはそれを認識しないといけない」と学生時代、恩師によく言われました。

これはすべての医療従事者に言えることではないでしょうか。

■ グリーフそのものは「普通のこと」でも...

グリーフそのものは、喪失の際に経験する「普通のこと」です。

でも、医療や介護の現場で働き、喪失を繰り返し経験するということは、それが日常の出来事であっても、決して「普通のこと」ではありません。

それを自覚することが大切だと思います。

そうすることで初めて、セルフケア(自分を思いやること)に目を向けることができるからです。

(参考)

佐藤由美子 著『死に逝く人は何を想うのか-遺される家族にできること』(ポプラ社)

Understanding Professional Grief(National Association of Social Workers)

(2017年12月29日「看護roo!」より転載)