電気事業法改正案など廃案へ、成立なら発送電分離が改革されたのか【争点:エネルギー】

第183回通常国会が26日、閉幕した。「発送電分離」に向けた電力システム改革を盛り込んだ電気事業法改正案などの重要法案が廃案となったが、もし成立したとしたらどうなっていたのか…
Electricity pylons
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第183回通常国会が26日、閉幕した。生活、社民、みどりの風の3党が参院に提出した安倍晋三首相に対する問責決議案が野党の賛成多数で可決。与野党対立の影響を受けて、「発送電分離」に向けた電力システム改革を盛り込んだ電気事業法改正案などの重要法案が廃案となった。

電気事業法改正案には全国での電力の融通や、自然エネルギー発電など新たな電気会社の新規参入に道を開くことなどが盛り込まれ、今後の日本のエネルギー政策にかかわる大事な一歩として注目されていた。改正案が成立すると、どのように日本の電力システムが改革される計画だったのか、改めてふりかえってみる。

朝日新聞デジタルの記事によると、改正案では改革を3段階で進める計画だった。電力が余っている地域から足りない地域に電力を送りやすくするため、15年をめどに電力の融通を仕切る「広域系統運用機関」をつくる。翌16年からは、「電力販売の全面自由化」に着手し、大手電力会社以外の自然エネルギー発電会社なども、家庭や商店向けに直接電力を売れるようになる。家庭でも電力会社を選べるようになり、競争を促すことが期待されている。(朝日新聞デジタル「発送電分離、5年後めど 先送りの余地も 電気事業法改正案成立へ」より。2013/06/08)

さらに、18~20年をめどに、電力大手から送配電部門を子会社に切り離す「発送電分離」を進める計画だ。送電網をほかの発電会社にも公平に使えるようにして参入を増やす。

ただ、具体的な発送電分離の進め方を盛り込んだ法案は改めて提出しなければならない。この点、発送電分離に対する大手電力会社の反発は強く、自民党内に法案提出の年限を明記するのを見送るよう求める動きがあり、最終的に改正案では「15年の提出を目指す」という努力目標に後退した。

また、改正案に対しては「十分な審議時間」を求める野党と与党が対立し、審議に入ったのは法案提出から1カ月半過ぎた5月末とずれこんだ。結局、今月4日に自民、公明、民主3党が改革の時期を変えずに政府案の表現を一部変える修正案でようやく合意していた。

野党からは、「この法案にとどまらず、安倍政権のエネルギー政策の全体像を示せ」とも求められた。この点、茂木敏充経産相は「エネルギー基本計画を年内をめどにとりまとめる」としていたが、7月には参院選もあり、ひとまずふりだしに戻る。震災と原発事故を経験した日本の今後のエネルギー政策にかかわる重要な法案だっただけに、政治的な理由で今回、廃案となったのは悔やまれる。

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