銀行の貸出増の一因は賃貸住宅の建設ラッシュ、富裕層の節税対策などで【争点:アベノミクス】

賃貸住宅の建設ラッシュが、銀行の貸し出し増加の一因となっている。消費増税や相続税の実質増税を控え、節税対策による建設需要が増えており、地銀を中心とした金融機関の貸出増加要因となっている…
Reuters

賃貸住宅の建設ラッシュが、銀行の貸し出し増加の一因となっている。消費増税や相続税の実質増税を控え、節税対策による建設需要が増えており、地銀を中心とした金融機関の貸出増加要因となっている。

賃貸住宅に関しては、戸建てと異なり駆け込み需要や反動減を抑制する対策が政府から打ち出されておらず、その点も駆け込み需要の喚起につながっているようだ。

日銀が8日発表した貸出・預金動向によると、銀行・信金計の6月貸出(速報値)は前年比1.9%増と2009年7月(同2.1%増)以来の伸びとなった。

日銀によると、企業のM&A(合併・買収)や電力向け、REIT(不動産投資信託)のほか、住宅ローンや賃貸住宅建設向けの融資などが引き続き伸びているという。業態別では大手行が1.6%増(5月1.6%増)に対して、地銀・第二地銀が2.8%増(同2.7%増)と伸び率が拡大している。

住宅ローンや賃貸住宅建設向けの貸出増は、来春の消費増税に伴う駆け込み需要や金利・地価の先高観が主な理由。

5月の新設住宅着工件数は前年比14.5%増の7万9751戸と9カ月連続で増加し、季節調整済年率換算で102.7万戸と2008年10月以来の100万戸超えとなった。持ち家が13.5%増と9カ月連続増、貸し家(賃貸住宅)も11.6%増と3カ月連続で増加した。

特に一部の地銀では、賃貸住宅向け融資の伸びが目立っているようだ。政府は駆け込みと反動減を抑えるため、2013年末に期限が切れる住宅ローン減税の延長と拡充を13年度税制改正に盛り込んだ。だが、賃貸住宅には対応する税制優遇がなく、駆け込み需要を誘発しているもようだ。

第一生命経済研究所・経済調査部、エコノミストの星野卓也氏によると、賃貸住宅の伸びは「消費増税前の駆け込みと相続税対策」という。2015年の税制改正に伴う富裕者層の相続税の実質引き上げにより、節税対策として賃貸住宅の建設を検討する地主が増えているようだ。

これらのニーズを踏まえ、「住宅メーカーの販売促進活動などもあり、賃貸住宅建設向け融資が伸びている」(地銀)との声も聞かれる。

大和ハウス工業の月次受注動向(金額ベース)によると、賃貸住宅の受注が4月は前年比48%増、5月は同19%増と高い伸びが続いている。

ただ、人口減少基調の中での住宅供給増は「マクロ的にデフレ要因となる可能性」(大手金融機関)と、足元の増勢を懸念する声もある。

ちばぎん総合研究所(千葉市)の森康棋研究員は「賃貸住宅は高齢者向けなど新たなニーズが生まれている一方、需要を見極めずに建てられるケースもある」と指摘する。駆け込み需要が大きければ反動減も大きくなるため、今後の動向が注目される。

(ロイターニュース 竹本 能文;編集;田巻 一彦)

[東京 8日 ロイター]

注目記事