「あまちゃん現象」とは何だったのか?テーマ曲の政治利用から経済効果まで 最終回目前に振り返る

「あまちゃん」のどこがそこまで魅力的だったのか。最終回を前に、ハフポスト日本版が今まで取り上げた「あまちゃん」の記事をおさらいすることで、現実社会への波及効果を追ってみよう。
猪谷千香

9月28日、NHK連続テレビ小説「あまちゃん」がついに最終回を迎える。最高視聴率27.0%(9月16日放送)を記録するなど、もはや社会現象になるほどの人気になっている。「あまちゃん」のどこがそこまで魅力的だったのか。ハフポスト日本版が今まで取り上げた「あまちゃん」の記事をおさらいすることで、現実社会への波及効果を追ってみよう。

まず一番最初に取り上げたのは、放送から2カ月後の6月14日。東京都議選の候補者の選挙カーで「あまちゃん」のテーマ曲を流していたことの報道だった。会社の前を選挙カーが通っていたので、以前から許可を取っているかどうか、編集部のスタッフ一同気になっていたのだが、どうやら無許可だったようだ。作曲家の大友良英さんが「流行を利用するような選挙活動はやめてほしい」とブログで苦言を呈したことで、この候補者は曲を流すことを中止した。

軽快なテーマ曲は、数多くの演奏動画を生むことになった。8月20日には、「あまちゃん」オープニング曲を声だけで再現した動画がすごいという記事を掲載。なんとヒューマンビートボックスという手法で、9パートを一人で再現したというものだ。ピアノの連弾や、初音ミクによるアカペラでのカバーも人気を集めている。

このテーマ曲が流れるオープニング映像で鳥が映るシーンがあるのだが、それに合わせてテレビに飛びかかるネコの動画も話題になっていた

もちろん、我々も真面目な記事を忘れていたわけではない。「あまちゃん」の主要なロケ地は岩手県久慈市。地元のシンクタンクは、岩手県への経済波及効果を約33億円と試算したことを8月11日に報じている。今年5月のゴールデンウィーク期間中の観光客数などを元に、同市に今年度に訪れる観光客数が、昨年比で2倍の68万8千人になるという。

さらに、9月24日の「あまロス症候群 その傾向と対策」について取材した記事では、批評誌「PLANETS」編集長で評論家の宇野常寛さんの指摘を掲載。彼は「あまちゃん」が世代を超えた人気になっていることを、こう分析していた。

「その点『あまちゃん』はテレビ世代の中高年と、ネット世代の若者をうまくつなごうとしているように思う。たとえば昔ながらの「朝ドラ」よろしく戦後日本での女性の生き方を描きながら、インターネットのカルチャーやアイドルブームも描いている。主人公のアキはエセ東北人で、実は地元を持っていない。地域の伝統が弱くなっていて、心の拠りどころは『土地より人』という言葉にもあるように非常に現代的。『あまちゃん』は昔の世界と新しい世界が共存していて、多重な構造になっています」

さて、ここまで盛り上がると気になるのは続編があるのかどうかだ。ファンだけでなく出演陣からも続編を求める声も多い。主演の天野アキ役を演じる能年玲奈さんや、種市先輩役の福士蒼汰さんも希望しているほか、NHKの松本正之会長も前向きなことを。しかし、脚本を手がけた宮藤官九郎さんにオファーはまだ来ていないようだnikkansports.comの取材に以下のように答えたという。

「面倒くさいからやらないわけじゃなく、ちゃんとやらないと納得できないので。(オファーが)ないから分からないですしね」

最終回まであとわずかで、今週に入ってからは毎日がクライマックスのような急展開が続いているが、果たしてどのようなフィナーレを迎えるのか。最後まで目が離せない週末になりそうだ。

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