「賃上げ」政策は効果があるのか?賃上げ企業には融資行わない金融機関も...【争点:アベノミクス】

安倍首相が消費増税の表明と同時に発表した経済政策「経済政策パッケージ」は、本当に賃上げにつながるのかと懸念する声が出ている。
時事通信社

本当に賃金は上がるのか--。

安倍首相が消費増税の表明と同時に発表した経済政策「経済政策パッケージ」は、本当に賃上げにつながるのかと懸念する声が出ている。

安倍首相は10月1日の記者会見で、「企業収益の増加が賃金上昇、雇用拡大につながり、消費を押し上げることを通じて、さらなる企業収益につながるという“経済の好循環”をつくる」と話し、対策を打ち出した。これに対して「企業を優遇しても、賃金上昇につながらないのでは」と疑問視する意見が出ている。どういうことだろうか。

安倍首相は「しっかりと従業員に収益を還元していかなければ、逆に企業が損をしていく時代に変えていく」と述べ、賃金上昇を促進する政策を発表した。しかし、具体的に決まっているのは「所得拡大促進税制を拡大する」ということと、「法人税減税分が賃上げに確実につながっていくのか政策効果を検証する」ぐらいで、その他は「経済の好循環実現に向けた政労使会議」で取り組むとし、今後議論を行い決定するとされている。

「所得拡大促進税制」を拡大することは効果があるのか?

所得拡大促進税制」は、従業員の給料を一定以上拡大したときに法人税が減税されるしくみだ。会社が支払う給与支給額が、基準となる年より5%増えていたり、従業員の平均給与額が基準年より増えているなどの条件で、制度を利用することができる。

しかし、定年退職した高齢者を嘱託等の形で再雇用する場合や、若年者を雇用する場合などは、どうしても平均給与が低くなってしまうという状況が発生し、制度が利用できない場合があった。そのため今回の制度では、高齢者の雇用分は対象から除くなどの措置が盛り込まれている。

さらに、利用の条件のうち、会社が支払った給与支給額の増加分を従来の5%から、2%と下げることで、制度を利用出来る企業を増やすとした。

なお、この制度は、控除の上限が法人税額10%などとされているため、法人税を払っていない企業には適用されない。また、雇用人数を増やした際の減税措置である「雇用促進税制」を利用したときは、利用できないことになっている。

また、この制度は2013年度から始まったものであり年度も終わっていないため、当たり前であるが、現在はまだどれぐらいの効果が出ているのかは、わからない状態だ。

政府は「賃上げ監視」を行う方針

法人税減税については、下げた分が賃上げにつながったかどうかを、政府が検証するとした。10月1日に記者会見を行った甘利明経済政策担当相は、「実際にそういう行動をとったか、とらないかということの検証もできる」と話している。

また、菅義偉官房長官も2日午前の記者会見で「企業がどのような形で賃金に反映しているのか、政府でできるだけ把握できるような対応策を考えていく。賃金がどのような動きをするのか、当然精査していく」と述べた

しかし、どのようにして賃上げ監視を行うのかは、現在はまだ明らかになっていない。

インターネットの声

これらの報道に対し、インターネットでは次のような声が上がっている。

賃上げ会社には融資しない金融企業も?

一方、賃上げを行うことが、ビジネス上のデメリットと判断される場合もあるようだ。EconomicNewsは、石破茂自民党幹事長の話として、賃上げを行う企業には融資をしないとする金融機関があると指摘している。

実態として、早くも企業が運転資金や設備投資など事業資金調達のため銀行融資を受ける際に、銀行側がコスト上昇となる賃金引き上げを含む事業資金には貸し渋りをする事例がでていることを明かした。一方で、石破幹事長は「こうした問題を法規制できない」とも語り、限界を浮かび上がらせている。

(EconomicNews「賃金引き上げ会社に融資しない金融機関も」より。)

賃金の上昇はそのまま商品やサービスの価格上昇に繋がる場合もある。

安倍首相のいう「従業員に収益を還元していかなければ、逆に企業が損をしていく時代」はどのように作られるのか、「経済の好循環実現に向けた政労使会議」の今後の議論が注目される。

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