国家戦略特区、選定議員に竹中平蔵教授ら 雇用規制の緩和は進むか【争点:アベノミクス】

政府は、「国家戦略特区」の対象地域を決める「国家戦略特区諮問会議」の民間議員に、慶応大学の竹中平蔵教授ら5名を選んだ。竹中氏は労働規制の緩和について「岩盤規制を崩していく」と述べている。
時事通信社

竹中平蔵氏が労働規制の緩和について「岩盤規制を崩していく」と述べた――。

政府は、地域を限って大胆な規制緩和などを行う「国家戦略特区」について、具体的な特区の対象地域を決める「国家戦略特区諮問会議」の民間議員に、慶応大学の竹中平蔵教授ら5名を選出した。12月20日の菅義偉官房長官の記者会見で発表した。MSN産経ニュースが報じた。

竹中氏は政府の産業競争力会議の民間議員を務め、規制緩和推進を強く主張している。戦略特区の作業部会の座長を務めた八田達夫大阪大招聘教授、坂根正弘コマツ相談役、坂村健東大大学院教授、秋池玲子ボストンコンサルティンググループ・パートナー&マネージングディレクターも起用する。

(MSN産経ニュース「民間議員に竹中氏ら5人起用 政府の特区諮問会議」より 2013/12/20 12:07)

■竹中平蔵氏が規制緩和を進める理由

竹中氏は、小泉内閣でも構造改革を唱え、特区を推進してきた。しかし、第2次安倍内閣になった今、過去の特区がうまく機能していないと竹中氏は指摘。これまでの特区制度に足りない部分を補い、さらなる規制緩和を進めたいとしている。

自治体側から話を聞くと、やはり今の特区では使い勝手がよくなくて困っている。

東京都のヘッドクオーター特区というものがあり、法人税も減免されるような措置はあるが、ヘッドクオーターとしての会社が来てくれない。それは、例えば外国人が来てもその子供を英語で教育する小学校がないなど、仕組みがあっても現実がワークしない状況となっているため。大阪もイノベーションの特区を持っているが、同じようなことに悩んでいる。

(「産業競争力会議テーマ別会合」より 2013/04/03)

■国家戦略特区で規制が緩和される分野は

安倍首相は「世界で一番ビジネスをしやすい環境をつくる」という目標を掲げ、国家戦略特区を設立することを決めた。7日には、国家戦略特別区域法が成立。雇用や教育、農業、医療などの分野で、規制緩和を進める。安倍首相は19日、都内で講演し、来年3月を目途に国家戦略特区具体的な地域を指定すると話した。

特区の案としては、民間企業による公立学校の運営(公設民営学校の設置)や、医学部の新設などが出ている。

■「解雇特区」と反対された労働規制の緩和

一方、これまで大きな反対の声が上がっていたのが、雇用に関する規制緩和だ。これはもともと、特区内の基準を満たした事業所について、解雇の要件・手続きを契約条項で明確化したり、休日や深夜労働の労働条件の緩和するというものだった。

報道などで「解雇特区」との指摘を受けたこともあり、批判が殺到。議論をしない状況が続き、成長戦略の柱となる「国家戦略特区」の規制緩和概要には「労働時間法制」と「解雇ルール緩和」を含めることが見送られている

竹中氏は「解雇の自由化」ではなく、「雇用条件の明確化」であると指摘し、能力の低い経営者が社長に居座れないような制度作りをしたいと反論。理解を求めていた。

竹中: 「解雇の自由化」なんて誰も言っていないですよ。さっきの新自由主義と同じですよ、誰も言っていないのに、さも言ったかのような幻想をでっち上げて、それでけしからんけしからんと言うんですよ。それでもう1つけしからんのは、それで政治がビビってしまったんですよ。

私たちは「解雇のルールを法文で明確に定めよう」と言ったんです。いまは判例なんですよ。しかも古い判例で、たとえば大きな企業は、「もしもここでリストラをしたら訴えられるかもしれない」という訴訟リスクを感じるんですよ。

田原: それで、訴えられたら負けるんですよ、判例では。

竹中: 負けるかどうかはやってみなければわからないんですが、そもそも訴訟リスクを感じるから、そんなのはイヤだからできないわけですね。ところが一方ではこの判例は曖昧だから、「うちなんかは訴訟なんかされるわけがない」と思っている弱小の企業なんかは、平気でクビを切るわけですよ。訴訟リスクを感じない企業は、平気でクビを切っているんです。むしろそういう場合は、労働者の権利は守られていないんです。

だからそれを明確にしようと言っただけなんです。それを「解雇の自由化をしようとしている」と言って、それでもう、会議全体でそういう議論をするのは避けようということになったんです。

(現代ビジネス「田原総一朗×竹中平蔵対談【中】「『決められない政治』より決められない日本の経営者こそ、この国をダメにした元凶だ」」より 2013/07/08)

竹中氏はウォール・ストリート・ジャーナルのインタビューに答え、今後の労働分野の規制緩和について次のように話している。

戦略特区法では、労働規制について過去の判例にのっとったガイドラインを設置することになったが、エコノミストらはもっと明確に、できれば法律で担保するよう求めている。竹中氏も同様の見方を示すとともに、「雇用のルールについて、条件付きでできるようになったので半歩くらい前進した。重要なのは特区の枠組みをフルに使って岩盤規制を崩していくこと。いろんな分野でいろんな人に可能性与えてイノベーションにチャレンジしてもらわないといけない。幅広い分野で、ニーズがある部分に緩和をしていく」と語った。

(ウォール・ストリート・ジャーナル「戦略特区諮問会議はスピード感をもって行動を=竹中平蔵慶大教授」より 2013/12/20 15:35)

なお、規制改革会議は12月5日、世界でトップレベルの働き方を実現するためとして、労働時間規制の見直しに関する意見をまとめており、そのなかで、労働時間法制の適用除外制度の基本的な枠組みについて、議論を避けるのではなく、議論を進めるべきと提言している。

【※】竹中氏らの国家戦略特区諮問会議について、あなたは何を期待しますか。ご意見をお寄せください。

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