エボラ出血熱、世界で蔓延するデマ 空気感染する? 臓器が溶ける?

エボラ出血熱について、よく誤解されていることについて本当のところを明らかにしておこう。

西アフリカでエボラ出血熱が大流行しているが、病気に関するデマや噂話がはびこり、医療従事者が海外で仕事をする妨げになり、アメリカでは必要のないパニックや被害妄想を呼んでいる。エボラ出血熱について、よく誤解されていることについて本当のところを明らかにしておこう。

デマ: エボラウイルスは空気感染する。水中でも、日常的な接触でも感染してしまう。

真実: エボラウイルスは、感染者の体液が被感染者の粘膜に触れることで感染する。つまり、血液や汗、尿といった体液の中にあるエボラウイルスが目や口、鼻孔、耳、生殖器部や傷口に接触しない限り、感染はしない。

言い換えれば、感染はすれ違う程度の通常の接触ではなく、より頻繁な接触がある場合にのみ起こる。西アフリカで患者が多いのは、頻繁に接触する医療従事者や身内の患者の世話をする家族が感染するからだ。

先週、アメリカ疾病管理予防センター(CDC)はエボラ出血熱関連のページを更新し、感染者との通常の接触は「リスクが低い」とした。CDCでは「通常の接触」を「推奨されている防護服を着用しないで約1メートル以内、あるいは長時間室内や医療地域内で接触」、もしくは「推奨されている防護服を着用しないでエボラ出血熱患者と直に瞬間的に接触(握手など)」と定めている。

公衆衛生の環境が整っている先進国の病院では、マスクや手袋、保護服や隔離室といった予防策を取ることで簡単に感染を防ぐことができる。

西アフリカの医療従事者は地域の住民に、石鹸と水で手洗いし、患者は家族で世話をせずに診療所に連れてくる、感染のリスクを最小限におさえるためにエボラ出血熱で死んだ人々の遺体は埋葬する、などの重要性を教えている

デマ:ラテンアメリカからの移民の子供は、アメリカにエボラウイルスを持ち込む可能性がある。

真実: ばかばかしい噂だ。こんな噂が広まったのは、共和党のトッド・ロキタ下院議員(インディアナ選出)のおかげだ。

彼は8月4日の地元ラジオ番組で「家族のいない移民の子供を自由にしたら、アメリカの公共衛生上の危険を引き起こす」という誤った情報を流したと、nwi.com. が伝えている。

ロキタ氏は、同僚との会話をラジオで次のように語ったという。「彼が言うんだ。『考えてみてくれ、エボラ感染の拡大とその他あらゆることについて、公共衛生の観点から知る必要がある』って。あ、いや、これは私が付け足したことで、彼が言ったことではないが。いずれにしても、移民の子供たちの状況を知る必要がある、と彼は言っていたよ」

アメリカ難民定住局の代表は即座にロキタ氏の間違いを指摘した。定住局の代表は、西半球ではエボラウイルスの病気に感染した者はこれまでにいないことをnwi.comに伝えている。

デマ: 国際医療チームがエボラウィルスを西アフリカに持ち込んだ。

真実: あまりにひどいこのデマが、実はエボラ出血熱の問題を長引かせているのかもしれない。

世界保険機構(WHO)は、国境なき医師団 (MSF) がギニアの森林地帯にエボラウイルスを持ち込んだとの非難を受け、任務を中断する羽目になった。CDCは、地域の部族長や心霊療法を行う者、長老と交渉し、エボラ出血熱の症状と医療機関で適切な治療について正しい教育を行い、こういったデマに対抗しようと組織的に取り組みを進めている。

ペンシルバニア州にある女子大「ブリンマー・カレッジ」の歴史学者で、アフリカーナ研究を行っているカララ・ンガラムルメ准教授は、エボラ出血熱の死亡率が伸びる一方の現状では (現在約55%で、今後も上昇が予想される)、病気についての誤解もあることから、村人が懐疑的になるのも無理はないだろうと述べる。

「人々はエボラ出血熱の治療法は存在しないと聞かされます。医療施設に連れて行かれた者は死ぬことになる、感染すれば助かる者はいない、と思うのです」と、ハフィントンポストUS版の取材に対し、ンガラムルメ准教授はメールで応じた。「多くの村人がこんな風に、病院には死ぬために行くのだと思い込むのも無理はありません。あるいは病院で彼らは殺されている、と言い出すも当然の成り行きでしょう。噂は大きくなるものなのです」

デマ: エボラウイルス感染患者をアメリカに連れてくると、危険が大きい。アメリカの不動産王ドナルド・トランプはアメリカ人のエボラウイルス感染患者を治療のためにアメリカに連れ帰ることに反対している。トランプは次のようにツイートしている

”アメリカはエボラ感染者の帰国を許可してはならない。人助けのために遠く離れた場所に行く人々は素晴らしいが、事の重大さを受け入ればければならない!”

真実: 兵隊を戦場に置き去りにするのがトランプ氏のやり方のようだが、彼のツイートは、エボラ出血熱が蔓延するなか、何が最も命取りになるのか、彼が何も理解していないことを表している。

エボラウイルス感染拡大の理由は、それが特別に強いウイルスだからというわけではなく、西アフリカのヘルスケアが他の地域に比べ劣っているためだ。

手袋、衣服、マスク、適切な衛生基準と隔離設備があれば、医療従事者をエボラウイルス感染から守るには充分だ。しかし、エボラウイルス感染が広がる国では正しい治療を行い、患者を隔離するために必要な備品や施設が備わっていない。

ルイジアナ州ニューオリンズにあるチューレーン大学のウイルス研究家ダニエル・バウシュ氏は、アメリカの国営放送「ボイス・オブ・アメリカ」に出演し、長い戦争と貧困の影響で、シエラレオネやリベリアのような国は特に感染症予防が脆弱だと述べた。

「シエラレオネやリベリアの病院に行くと、医療従事者から『手袋がありません』『清潔な注射針がありません』と言われることは珍しくありません。エボラ出血熱や、それと類似したマールブルグ病は、長期の社会不安、そして政情不安により公共衛生制度が衰退した地域で起こっています」

デマ: あなたの体がエボラウイルスを克服したとしても、ウイルスを他人にうつしてしまうことがある。

真実: 通常、エボラ出血熱の症状を発症している人からのみ人に感染する。

今回の感染拡大中に亡くなった唯一のアメリカ人は、リベリアの総人口よりも多いミネソタ州の出身者だ。ミネソタ州の住民の不安に対処するため、ミネソタ州保険局感染症科長のアロン・デブリーズ氏はこの問題について、地元NBCと共同制作Kare11のインタビューに答えた。

デブリーズは、熱や頭痛、嘔吐、下痢といったエボラウイルス感染症の症状が出ている人だけが他人にウイルスを移す可能性があることを強調している。しかし、WHOはエボラウイルスを保持していた男性は回復後であっても、最長7週間は精液からウイルスを伝染させる可能性がある、と注意を促している

デマ: 今回、はじめてエボラ出血熱が発生した。

真実: 今回が史上最大の感染拡大であることは間違いないが、初めてではない。

このウイルスは1976年にコンゴ民主共和国ではじめて確認された。この時は318人が感染し、88%の致死率だった。それ以来、エボラ出血熱はアフリカ大陸周辺で断続的に発生している。WHOによると、2000年には425人、一番最近では2012年に57人が感染している。

8月11日の最新調査によると、2014年に感染が確認されて以来、リベリア、ギニア、シエラレオネ、ナイジェリアで1848人がエボラウイルスに感染し、1013人が死亡している。

デマ:エボラウイルスは抗菌作用のあるもので対処することができる(玉葱やコンデンスミルク、その他…)

真実: 抗菌作用のあるものでバクテリア菌に対処することはできるが、ウイルス感染には効き目がない。

今のところ、エボラ出血熱の治療法もワクチンも存在しない

そのかわり、ZMappと呼ばれる試験的血清がある。これは抗菌作用を持ち、ウイルスをブロックするように作られている。2014年のエボラウイルス感染症発生前には、猿を使った動物実験だけで、臨床試験は行われていなかった。アメリカ人のエボラウイルス感染者ケント・ブラントリとナンシー・ライトボルはこのリスクを受け入れ、この未承認薬を使用することを決めた。そして、最新の報告では、症状の改善について慎重ではあるが楽観的な見通しが伝えられている。しかし、この薬が彼らの回復にどんな役割を果たしているのか(あるいは果たしていないのか)は未だ不明だと、とワシントン・ポストは伝えている。

デマ:エボラウイルスは臓器を液状化し、それによって体内出血が起こる。

真実: エボラ出血熱の症状は目、耳、鼻、口からの出血が含まれるが、これらの症状の発生率は20%だ、とボストン医療センターの病院内伝染病学准教授で、ボストン大学国立新伝染病研究所感染対策科所長の医師ナヒド・バデリア博士はハフィントンポストの取材に対して述べている

人の内蔵が液体化することはない。しかし、人はエボラ出血熱で死に至る。これは通常、このウイルスが多臓器不全とショック状態を引き起こすためである。エボラウイルスは血管を軟弱化し、内出血ないしは外出血を引き起こすことも理由として挙げられる。このウイルスは通常出血を押さえる働きをする血液凝固を妨げる。

English Translated by Gengo

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