韓国MERS感染はなぜ拡大したか

韓国で国家的パニックになりつつある中東呼吸器症候群(MERS)。同国初の感染者となった68歳の男性は、中東から戻った8日後にせきが出て発熱した。男性は治療を求めて4カ所の医療機関を訪れたが、それが感染拡大の始まりだった。

[ソウル 3日 ロイター] - 韓国で国家的パニックになりつつある中東呼吸器症候群(MERS)。同国初の感染者となった68歳の男性は、中東から戻った8日後にせきが出て発熱した。男性は治療を求めて4カ所の医療機関を訪れたが、それが感染拡大の始まりだった。

朴槿恵大統領は3日、MERSコロナウイルスの感染が拡大していることについて、これ以上広がらないよう万全を期すべきだと強調した。韓国国内では感染者数が増え続けており、約1300人が隔離対象となっている。これまでに2人の死亡が確認された。

MERSは、重症急性呼吸器症候群(SARS)と同様、コロナウイルスによって引き起こされる病気。2002年に世界的に大流行したSARSでは約800人が死亡したが、韓国ではMERS感染が当時の不安を呼び起こし、数百校の学校が閉鎖されている。

同国当局者によると、中東以外で最大規模の感染を招く発端となった男性は、バーレーンで農機具を販売する会社を営んでおり、5月4日に帰国するまで中東に滞在していた。

今回のMERS感染者の半数以上は、首都ソウルから南西65キロにある平沢市の病院が感染ルートであることが分かっている。男性はこの病院の大部屋に入院していた。

韓国政府に助言する感染症専門家、Kim Woo-joo氏は「最初の患者は相部屋で他の患者の近くにいた。検査のために部屋から出て、くしゃみやせきをしながら院内を移動していたことで感染が拡大したと思われる」と語った。

当局によれば、そのほかの感染者は、男性が訪れた4カ所の医療施設のうち、他の3カ所で感染した。当局は感染者が治療を受けている病院を特定していないが、平沢市の病院は閉鎖され、職員は隔離されている。

自宅隔離中である同病院の看護師の1人は、男性の入院時、MERSに関する認識はなかったとし、「男性の来院で院内感染は避けられなかった」と電話でロイターに語った。

複数の保健当局者も、病院の職員たちは男性に中東への渡航歴があることを知らなかったとしている。男性は別の病院でMERSと診断されたが、その病院でも当初はMERSの感染危険区域とはみなされていないバーレーンへの訪問しか伝えていなかったという。

男性は実際には、最もMERS感染の症例が多く、約440人の死者の大半を出しているサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)での滞在経験があった。

5月20日に自身も感染が確認された病院職員は、男性について疾病管理センターに連絡したものの、バーレーンへの渡航歴しか情報がなかったため「彼が(MERSに)陽性であることが分かるのにあまりに時間がかかり過ぎた」と語った。

平沢市の病院では、男性と相部屋だった別の患者がMERSに感染。見舞いに訪れた同患者の息子は隔離対象であったにもかかわらず、香港と中国本土に渡航し、中国でMERSと診断されて現地で入院している。

感染源となった男性は3日現在、政府指定の病院に入院し、人工呼吸器が付けられた状態。男性の妻(63)もMERSに感染しているが、容体は改善したという。

(Ju-min Park記者、翻訳:伊藤典子、編集:宮井伸明)

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