バーチャル・リアリティは、うつ病の画期的な治療法になるかもしれない。

バーチャル・リアリティを用いた療法で、うつ病患者が自己への愛着を深めることができるかもしれない。

新しい研究によれば、バーチャル・リアリティを用いた療法でうつ病患者が自己への愛着を深めることができるかもしれない。

はたして、バーチャル・リアリティはうつ病への新たな治療法になり得るのか?

2月15日にブリティッシュ・ジャーナル・オブ・サイキアトリー・オープンに掲載された新しい研究によると、バーチャル・リアリティ療法によってうつ病患者は自己への愛着を深め自己批判を減少させ、抑うつ症状がおさまるようになる可能性があるという。

「自己への愛着を持つことは精神的苦痛を和らげるために重要なことで、その愛着心なしでは苦しみは次第に増していき、耐えられない状態になってしまう」。ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの健康心理学教授でこの研究筆頭者のクリス・ブレウィン博士はハフポストUS版にメールで説明した。

「うつ病、そして他の精神疾患患者の多くは、他人に対しては十分に思いやりの気持ちを持てる一方、自分に対して愛着心を持つことが非常に困難であるということが分かってきた」。

予備研究として、15人の成人うつ病患者がバーチャル・リアリティ療法のセッションを3回受けた。この療法は、あらかじめ健康なボランティアに施されている。

そのセッションでは、患者にバーチャル・リアリティのヘッドセットを付けてもらい、等身大のアバター(分身)の視点を疑似体験させる。自分自身のバーチャルな分身を作り出すことで、患者は自分の動きを、まるで鏡を見るように、外から眺めることができる。

”具象化”では、参加者は8分間のセッションを受け、悲しみにくれている子供のアバターを慰めるように指示される。患者が子供に向かって優しく語りかけると、子供は落ち着き、次第に泣きやむ。次に今度は患者自身が子供の姿になり、慰めている自分自身の大人のアバターに耳を傾ける。

泣いている子供を慰める大人の役を演じる研究参加者

参加者たちは週1回のバーチャル・リアリティ体験のセッションを3回受けた。そしてその療法が終わった1カ月後、情緒や精神状態についての質問に答えた。参加者のうちの9人がうつの症状に緩和がみられた報告し、うち4人は症状が著しく軽くなったという。ある患者はセラピーを受けた後、日常生活で以前より自己批判をしなくなったと語った。

「子供を慰める、その自分自身の言葉を聞くことによって、患者たちは間接的に自分にも同情の気持ちを注いでいるのです」とブレウィン博士は言う。「目的は患者が自分自身にもっと同情の心を持ち、自己批判的な心を和らげるように導くことでしたが、前向きな結果が出ました」。

過度な自己批判は時にうつを引き起こす大きな要因となる。この点に焦点を当てた治療法として、バーチャル・リアリティ療法は大きな効果がある可能性がある。

「バーチャル・リアリティのシナリオに、患者はひとりでに反応します。これは自分への愛着や、セラピストからの同情心を受け入れる近道かもしれないと、私たちは考えます」とブレウィン博士は言う。「バーチャル・リアリティは遠方からでもアクセスできるので、セラピストに会いたがらない人にとっては有効な療法かもしれません」。

サンプルが少なく、対照実験がなかったので、研究成果としてはまだ初期の段階だ。それでもこの結果は、今後の研究に有望な根拠と方向性を示している。

「バーチャル・リアリティは、とても有効な新しいタイプの治療法となる可能性を秘めています。今回の研究結果を元に、さらに技術の開発に努めなければなりません」とブレウィン博士は述べた。

この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。

【関連記事】