"愛すべきマンネリ"『笑点』が50年間愛されるワケ
4月30日に『笑点』(日本テレビ系)の看板司会者・桂歌丸が“引退”を発表。その翌日5月1日放送の同番組が、平均視聴率20.4%と今年最高を記録し、話題を呼んだ。早くも各所で「次の司会者は誰か?」との声も囁かれているが、何より驚異的なのは、1966年5月15日の放送開始から50年を経過する『笑点』が、今なお多くの人の心をとらえて離さないという事実。
“おなじみのスタイル”が世代を超えて愛されているその人気ぶり、中毒性、さらには文化性とはいったいどんなところにあるのだろうか。
◆不変の『笑点』の番組構成は、日本人の潜在意識レベルにまで浸透
『笑点』と言えば日曜の夕方、おなじみのオープニングテーマ曲に合わせて、アニメ風の出演者紹介、それから司会者が収録会場(だいたい後楽園ホール)の客席に座って、演芸ゲストを呼び込む。ゲストは旬の芸人(漫談、漫才、マジック、モノマネなど)で、CMを挟んでメインの大喜利、司会者による締めの言葉で終了(4代目司会者・故三遊亭圓楽さんの“といったところで笑点お開き……”が印象深い)という流れ。この演芸ゲストと大喜利の2部構成は、かつては3部構成の時代もあったし、収録会場も年に4回ほどは地方会場だったり、今年4月10日放送の演芸ゲストがRADIO FISHの「PERFECT HUMAN」で、中高年中心の客が引き気味だったり……という“異変”が時々あるぐらいで、基本的な構成は不変であり、普遍なのである。
「かつての三遊亭楽太郎さん(現6代目三遊亭圓楽)の歌丸師匠の“ハゲ・年寄りイジリ”から、圓楽師匠(4代目)の“寄席・若竹ネタ”(自費で寄席を作ったものの多額の借金を抱え閉鎖)や“山田くん、座布団○枚取って!”(各種バリエーションあり)といった一連のお約束ネタ、そして毎週日曜の午後17時30分からの30分番組(1968年5月~1996年3月までは17時20分からの40分番組)という放送時間まで含めて、この『笑点』の構成は、もはや日本人の潜在意識レベルにまで組み込まれてると言っても過言ではないでしょう。よく朝のニュース番組のコーナーの時間帯で、歯を磨く、トイレに行くなど、タイムスケジュールが決めている人が多いと言われますが、『笑点』も『サザエさん』(フジテレビ系)と同様、日本人それぞれに1週間の締めくくりの番組になってるんです」(バラエティ番組制作会社スタッフ)
◆視聴率3冠に君臨する日テレの“日曜最強布陣”で先鋒・笑点の重要度
この『笑点』から始まる一連の高視聴率番組、『ザ!鉄腕!DASH!!』『世界の果てまでイッテQ!』『行列のできる法律相談所』は、視聴率3冠に君臨する日本テレビの“日曜最強布陣”。特に『笑点』はこの鉄壁の流れを形成する“先鋒”に位置するだけに、ある意味ヘタに変えてはいけない番組でもあり、結果として変わらないこと自体が、安心して楽しめる番組にもなっているようだ。テロップやCG全盛期の作今、相変わらずの“カツラネタ”や“手書きフリップ”などの小道具を使った“アナログ回答”も、中高年のファンにはおなじみであり、老若男女を問わず、思わずほっこりさせてくれるのである。
そんな『笑点』にも、何度か“危機”が訪れたことがある。そのほとんどは“司会者問題”であり、3代目司会者・三波伸介さんが急逝した時や、4代目司会者・三遊亭圓楽(5代目)の病気療養時(大喜利司会は歌丸が代役)は、看板司会者が不在であり、林家こん平、林家木久扇など、レギュラーの高齢化による休演も最近では目立つ。そして昨年から、背部褥瘡(じょくそう)や腸閉塞で入退院を繰り返す歌丸の休演。司会者交代説が浮上するのも無理がない状況だったが、多くの視聴者やネットユーザーから拒否反応があり、「(外部から新規の司会者を迎え入れるのではなく)大喜利のメンバーの中から選んでみては」という声も多いことから、大喜利レギュラーによる司会者持ち回り制で乗り切ったのである。
そして今回の桂歌丸師匠の勇退。5月22日の生放送分をもって、歌丸司会時代は終わりを告げるが、後任の司会者は未定。いずれにしろ、新司会者に最大級に求められることは、今までと“変わらない”『笑点』の継続であることは間違いないだろう。一方で、新機軸・刷新を求める声もあるかもしれないが、何と言ってもこれまでの50年間の実績は絶大であり、もはや番組の構成自体はDNAのように元型化している。今後の『笑点』も、時代に適応しながら、“安心”で“安定”した笑いを保つべく進化していってもらいたい。
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