11月7日に予定している東京・築地市場(中央区)の豊洲市場(江東区)への移転について、小池百合子都知事が移転を延期する方針を固めたと8月30日に朝日新聞デジタルなどが報じた。
小池氏は、豊洲市場の地下水のモニタリング調査が移転前に終わっていないことを疑問視。豊洲市場の土壌の安全性確認などが不十分だと判断した。同日午前、小池氏は報道陣の取材に対し「近々会見など開き、その場ではっきり話をする」と述べた。
26日の記者会見で小池氏は「検査結果が出る前の開場に大変、大きな疑問を持っている。日程的にお構いなしに決める当局の対応はいかがなものか」と移転延期の可能性を示唆。その上で、「決まった日程でそのまま進めていいのかを含め、私に責任があるので総合的に判断する」と、近く最終判断する意向を示していた。
小池氏は7月の都知事選で、移転について「一歩立ち止まって考えなければならない」と発言。知事就任後は移転賛成派と反対派の双方と面談し、8月16日には両市場を視察した。
また小池氏は、当初は4316億円だった豊洲市場の総事業費が5884億円に膨らんだことを問題視。加えて、間口の広さなどの「使い勝手」の点で業者らから不満の声が上がっていることも課題に挙げ、改善点を調べる考えを示している。
東京都中央卸売市場の公式サイト。移転までのカウントダウンが掲載されている
豊洲市場への移転をめぐっては、都と市場の業界団体が14年末に移転時期を決定。都は土壌汚染対策のため、地盤を掘り下げて土を入れ替える工事を実施。地下水を監視するシステムも導入するなど土壌汚染対策に約850億円を費やしている。
これまで、豊洲で過去7回実施された地下水のモニタリング調査では、その全てが環境基準値以下だった。最終調査は11月18日に始まり、2017年1月中旬ごろに結果が判明する。
朝日新聞デジタルによると、業界団体で作る築地市場協会の伊藤裕康会長は「開場を延期すると、年末年始を含む繁忙期に計画の練り直しを強いられ、経済的な負担が生じる」として、予定通りの開場を求めている。
築地市場の跡地には、2020年東京五輪・パラリンピックの幹線道路となる「環状2号線」が建設予定で、移転が延期されれば工事が遅れる可能性がある。また、共同通信は「移転準備を進めていた業者への補償問題も浮上しそうだ」と指摘している。