韓国で接待規制法が施行 割り勘は定着するか? その厳しい内容

政府機関がガイドラインを示し、「迷ったら割り勘」などと呼びかけている。
Woman working at home in Seoul, she's sitting on the desk of her studio working on laptop and mobile phone, South Korea.
Woman working at home in Seoul, she's sitting on the desk of her studio working on laptop and mobile phone, South Korea.
Leonardo Patrizi via Getty Images

韓国で「不正請託や金品などの授受の禁止に関する法律」が9月28日、施行された。発案した女性裁判官の名前を取って「金英蘭(キム・ヨンラン)法」と呼ばれる。

公務員とその家族に対する接待を原則、禁止する法律で、職務権限に関係なく1回100万ウォン(約9万2000円)、会食は3万ウォン(約2700円)、贈答品5万ウォン(約4600円)などの受け取り金額制限を設けている。対象は報道関係者や私立の大学教授、学校教員など幅広い。

「食事は年長者がおごるもの」という感覚が定着し、教師らへの付け届けや接待の習慣も根強く残る韓国で、韓国の政府機関、国民権益委員会がガイドラインを示し、「迷ったら割り勘」などと呼びかけている。以下はその概要。

1. 1回100万ウォン、1年に300万ウォンを超える金品を受け取ると処罰される。

公職者などが同じ人から1回100万ウォン、1年に300万ウォン(約27万円)を超える金品などを受け取ると、職務との関連とは無関係に、3年以下の懲役又は3000万ウォン以下の罰金となる。

2. 飲食3万ウォン・贈答品5万ウォン・慶弔費10万ウォンを超えてはならない

公職者などは、原則として、職務関連者から金品などを受けることができないが、円滑な職務遂行や社交、儀礼、扶助の目的である場合に限り、3万ウォン以下の食べ物、5万ウォン以下の贈答品、10万ウォン(約9200円)以下の慶弔費を受けることができる。

ただし、直接の職務関連性があり、公正な職務遂行を阻害する可能性がある場合、価格基準内であっても、飲食・贈答品・慶弔費を受けることができない。

3. 学校の教師にはコーヒー1杯でも出してはならない

学校の教師には飲食物・贈答品の提供が基本的に禁止される。日常的に提供を受ける食事や贈答品が、学生の評価に影響を与える可能性があるからだ。

韓国では5月15日が「教師の日」という記念日(祝日ではない)に定められており、学生が1万ウォンずつお金を集めて、担任の先生にプレゼントをする習慣も一部にあるが、これも法律に違反する。

4. ゴルフ接待はダメ

職務関係者とのゴルフを一種の接待とみなし、原則的に禁止した。また、公職者などがゴルフ会員権の所有者とゴルフをしたとき、グリーンフィー(コース使用料)優遇などの割引は、金品授受に該当するとして許可されていない。

公職者などが正当なグリーンフィーを払ってゴルフをすることは許される。

5. 迷ったら「割り勘」を

「職務関連性」の概念が曖昧なため、個別事案が法の適用対象なのか、判断に迷う事例が少なくない。

これに対して権益委は「迷ったら割り勘を」と勧めている。権益委の関係者は、「公職者など多くの人が食事をするとき、頭数で割り勘するのが原則だ」と話す。

6. 不正な請託を受けたら、最初は拒絶して、2回目は申告する

公職者などが最初に不正な請託を受けた場合、不正な請託だという事実を知らせ、これを拒絶する意思を明確にしなければならない。それでもまた同じ不正な請託を受けた場合、所属機関長に申告しなければならない。

不正な請託を受けた公務員については、公正な職務遂行のため職務の一時停止、職務代理の指定、転任などの措置を行うことができる。

7. 提供者も法人も処罰される

誰でも公職者などに金品などを提供したり、金品の提供などを約束した場合、罰金または刑事処罰を受ける。また、法人所属の役職員が、業務に関して不正な請託をした場合、法人も罰金を科されることがある。

8. 配偶者が受け取った金品も報告する

公職者などの配偶者も同一人物から1回100万ウォン、1年に300万ウォンを超える金品などを受け取ることができない。公職者の配偶者が受け取った金品も、公職本人への金品とみなされる。

公職者などは、配偶者が職務に関連して金品などを受け取った事実を知った場合、申告しなければならず、申告義務を履行しなければ罰金や刑事処罰となる。

9. 外部で講義するときは、あらかじめ申告して、基準額だけ受け取る

公職者などが外部で講義をするときは、講義の要請があったことや明細などを所属機関長にあらかじめ書面で申告しなければならない。

また、公職者等が過剰な報酬を受け取った場合、これを所属機関長に書面で申告して返納する必要がある。公職者などが申告や返納を履行しなければ、500万ウォン以下の罰金を支払わなければならない。

外部講義の報酬上限額は、閣僚以上は1時間あたり50万ウォン(約4万6000円)、次官級は40万ウォン(約3万6000円)、上級公務員30万ウォン(約2万7000円)、それ以外の公務員は20万ウォン(約1万8000円)。ただし報酬の総額は講義時間に関係なく、1時間の上限額の150%を超えてはならない。

また、私立学校の教職員、学校法人の従業員、報道機関の役職員が外部講義などをした場合の報酬上限額は、1時間当たり100万ウォンだ。

10. 不正な請託・金品授受は申告すれば保護される

誰でも第三者から不正な請託を受けたり、金品などを授受したりした事実を申告した場合、身辺の保護を受けて、2億ウォン以下の報奨金や30億ウォン以下の補償金を受けることができる。

ハフポスト韓国版に掲載されたものを翻訳、加筆しました。

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