私が耳にしたアクセス解析に関する10の誤解

ここでは、私が今まで実際で聴いたアクセス解析に対する誤解とその解説を10個ピックアップしました。

Google AnalyticsやAdobe Analyticsなど、最近の企業サイトには必ずアクセス解析のツールが導入されています。一方でそれを有効活用できていない企業もまだまだ多いようです。先日もある企業から依頼され、アクセス解析の基本レクチャーを実施しました。私たちは解析専門の会社ではなく制作会社ですが、そんな会社に対しても「教えてほしい」と依頼が来るような状況ともいえます。

解析ツールの設置自体は非常に簡単です。正しく設置すればすぐデータは収集されます。しかしデータの扱い方、解釈の仕方を適切に捉えることが難しく、このことがアクセス解析の活用を困難にしています。

ここでは、私が今まで実際で聴いたアクセス解析に対する誤解とその解説を10個ピックアップしました。本エントリーを通じて、アクセス解析に対する理解が少しでも進めばと思っています。

1. 機能が多すぎて使いこなせない

アクセス解析を持て余している企業から「機能が多くて複雑で使いこなせない」という話を聞くことが多いです。確かに解析ツールには様々な種類のメニューが並んでいます。このメニューを上から順に選び、それぞれの画面上に表示されるすべての機能を使おうとすると、確かに「機能が多すぎてとても全部は使いこなせない」と思うでしょう。しかしまずは「全部使いこなすべき」という考えを捨てるべきです。全部の機能を使いこなせなくてもいいのです。

アクセス解析は仮説検証のための手段です。つまり、解析の元となる仮説がない人にとっては、そこに並んでいるのはただ数字の塊です。解析を始める前に、課題・問題の仮説を立て、その仮説の裏が取るために、どういう数字を知りたいのか、まずそれを決めておく必要があります。

例えば、大規模なサイトリニューアルであれば、事業課題から導き出されるサイトの課題、ペルソナ、カスタマージャーニーからサイト内の行動動線が事前に設計されることでしょう。ベイジで手掛けたあるアクセス解析のプロジェクトでは、アクセス解析を始める前に、以下のような資料を用い、ターゲットやサイト内動線、商材特性、外部要因、コンテンツ戦略などの整理を行いました。

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こういった青写真ができた段階で、理想のサイトと現サイトとの乖離を検証するために、アクセス解析ツールを用いるのです。このとき、アクセス解析ツールのすべての項目をチェックするわけではありません。ホームにはどのチャネルからどのくらい流入しているのか、相性がいいチャネルはどれか、コンバージョンに繋がっているユーザーと繋がってないユーザーで、最初に着地するページやその後経由するページにどういう違いがあるのか、PCとスマートフォンでは見ているページや時間帯などにどういう違いがあるのか。

事前に仮説やシナリオがあれば、確かめたいことがいくつか出てくるはずです。その調べたいことだけを見ればいいのです。そのための操作が分からないときは、ネットで検索すればだいたいのことは分かります。

アクセス解析においてまず大切なことは、目的を明確にすることです。目的を達成するのに最低限必要な機能だけ使えばいいのです。最初から多くの機能を使いこなす必要はなく、分からないことは調べながら使っていけばいいのです。

2. サイトのページビューを2倍にしたい

この類の目標設定は、企業から提示されるRFP(提案依頼書)でよく見かけます。とても勇ましい目標に見えますが、ページビューというものに関する大きな誤解を含んでいるように思えます。

何が目的のサイトかによりますが、ページビューの数字は、例えばお問い合わせ数や資料請求数などと相関することはほとんどありません。つまり、ページビューが多い/少ないことと、サイトが成果を出している/出していないこととは、ほとんど関係がないというわけです。

例えば、ページを分割して数を増やすだけでページビューは簡単に増えます。しかしページを分割してページビューを2倍にしたからといって、問い合わせが2倍に増えたりはしないでしょう。

またそもそも情報獲得意欲の高いユーザーは、UIの出来が悪くても迷いながらも耐え忍んで操作するため、訪問あたりのページビューは大きくなりがちです。このようなサイトを使いやすく改善すると、全体的にページビューが下がるという現象が起こりえます。しかし、ページビューが下がったとしても、サイトが使いやすくなってユーザーを適切に誘導できるようになったなら、それは好ましいことではないでしょうか。

このように、ページビューの増減はKPIとほとんど相関しません。ページビューは広告モデルのwebサイト以外では参考にならないと考えてしまってもいいでしょう。こういった成果と相関しない指標を目標にしても意味がありません。リニューアル後も成果と関係ない数字を見て一喜一憂するだけです。

3. サイトの直帰率が50%を超えていてどうにかしたい

「直帰率を下げたい」というのもよく聞く話です。サイト全体の直帰率が50%を超えているのは確かにやや高いかもしれませんが、それだけでサイトに問題があるとは言い切れません。

例えばサイトが全体で100ページあり、そのうち80ページがブログだったとしたらどうでしょう。ブログは一般的に直帰率が高く、80%を超えることも珍しくありません。直帰率が高いコンテンツが多くを占める場合、サイト全体の直帰率は当然高くなります。しかしだからといって問題というわけではありません。

また質が低い広告を大量に打っている場合にも、サイト全体の直帰率は高くなるでしょう。しかしこの時にまず見直すべきは、webサイトではなく広告です。

アクセス解析ツールにログインすると、多くの場合は以下のようなダッシュボードが真っ先に表示され、サイト全体の状態が目に入ってきます。そこにはサイト全体の直帰率も表示されています。

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しかしこのような「サイト全体の数字」は、ほぼ参考になりません。ページ、カテゴリ、チャネル、ユーザー種別などでセグメントされた情報を複数見比べないと、まともなことはほとんど分かりません。ダッシュボードだけを見て何かを判断するのではなく、情報をセグメントして細かく見ていくのが、アクセス解析の適切な使い方と覚えておいた方がいいでしょう。

4. リニューアルで操作性が向上したかを確かめたい

リニューアルの成果を実証するため、このようなことを相談されることもしばしばあります。しかし厳密にいえば、アクセス解析で操作性が向上したかを確かめることはできません。なぜならアクセス解析には「操作性」という指標が存在しないためです。これを知りたいのであれば、アクセス解析上の別の数字に置き換えて類推しなければなりません。

例えば操作性であれば、以下のような数字を追うことで、それに近い評価ができるでしょう。

  • 対象となるプロセスの平均ページビューが減った
  • 対象となるプロセスの平均閲覧時間が減った
  • 対象となるプロセスの完了率が上がった

上記の複数の指標がすべて満たされることで、操作性が上がったと判断するわけです。このように、直接的な指標がない場合には、代替する指標の組み合わせで類推していきます。それは例えば、以下のような図で表すことができます。

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ただしこれらが本当に「操作性」を表すのか、冷静に考える必要もあります。平均ページビューや平均閲覧時間が減らなくても、「操作性が良くなった」とユーザーが感じる可能性はないでしょうか。突き詰めれば、本当に操作性が向上したか知る手段として、アクセス解析は適切ではなく、同じ定量系の調査ならヒートマップ分析、あるいは定性に切り替えてユーザーテストで検証すべきかもしれません。

このように、アクセス解析では分からないこともたくさんあります。そのことが本当に知りたいなら、アクセス解析上の指標だけで無理やり考えるのではなく、別の手段を考えてみる柔軟さも大切です。

5. 検索キーワードはもう分析に使えない

Googleにログインしたユーザーは常時SSL化されているため、webサイトの訪問に使った検索キーワードも暗号化されてしまい、アクセス解析では集計されなくなっています。多くのwebサイトでは、90~95%くらいのキーワードが(not provided)と表示されているのではないでしょうか。代替手段としてSearch Consoleやランディングページを使った分析も行われていますが、キーワードグループごとの直帰率やコンバージョン率が確かめられないため、解析の効果は未知数といえます。

しかし、アクセス解析にも統計の基本的な考え方である「部分から全体を推測する」は当てはまります。例えば自然検索からの流入が月間10万セッション以上あるwebサイトであれば、その1%でも1,000前後のキーワードが見えているはずです。これらのキーワードをグルーピングし、グループごとのコンバージョン率や直帰率を比較することはできます。一か月に1万セッションしかないwebサイトでも、計測期間を1年にすれば、12万セッションになり、この1%であれば1,200のキーワードが取得できます。このくらいの数があると、部分から全体を類推することが可能になります。

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アクセス解析は基本的に「正しい数字を把握する」ためのツールではなく、「大雑把な数字の傾向を見る」ためのツールです。そのため、「見ることができなくなった 分析できなくなった」と安易に考えるのではなく、見ることができる情報を活用して推測できないか、という視点を持つとよいでしょう。そうることで、より活用の幅が広まるはずです。

6. 離脱率を改善したのにお問い合わせが増えなかった

クライアントの口からこのような言葉が出てきた場合、まず直帰率と離脱率の区別がついているか確認しましょう。理解したうえでこのように考えている場合には、離脱率に対する認識や期待が間違っているということになります。理由は単純です。離脱率は、コンバージョン率/数と関係ない、というだけのことです。

離脱率とは、離脱数をページビューで割った数字です。この場合、分子の離脱数は訪問数だけ発生します。100の訪問があれば100の離脱が起こります。一方、分母のページビューは、訪問数と相関しません。100の訪問に対して200なことも1000なこともあります。離脱率は、単にページビュー次第で増えたり減ったりします。そしてページビューは先ほどお話ししたように、コンバージョンとほぼ相関しません。その場合、ページビューから抽出された離脱率もまた、コンバージョンと相関しないのです。このケースでは、離脱率に目を付けて改善した行為自体が適切ではなかった、ということになります。

アクセス解析は、いくらオペレーションに習熟し、用語の意味を理解していたとしても、その指標が持つ意味や特性が分かってないと、有益な結論が得られません。意味や特性を理解し、それは果たして成果と相関する指標なのか?と常に疑問を持ちながら考え続けることが必要です。

7. リニューアルしたら直帰率が1桁になって大成功

きちんとリニューアルを行い、それが狙い通りの成果を出せば、当然数字が良い方向に変わるでしょう。直帰率は分かりやすい数字であり、リニューアルが成功して改善することも多いです。しかし、過去に数件、リニューアルによってサイト全体の直帰率が10%以下に急落したケースを見たことがあります。

担当の方は「大幅な効果が出た!」と喜んでいましたが、私はすぐに「これはおかしい」と思いました。いくら効果が出たとはいえ、サイト全体の直帰率が1桁というのは異常と思えたからです。サイト全体では参考にならないのでセグメントして見たのですが、やはり極端に低い直帰率ばかりでした。設定ミスを確信して再調査を求めたところ、案の定、Google Analyticsのタグが2重に設定されていることが分かりました。(ちなみにこれは、お客様側でタグ設定した案件です)

このようにタグの2重計測は分かりやすい例ですが、間違った分析をしているのに、気付かずに解釈してしまうケースはしばしば起こりえます。

例えばセグメント機能は間違いやすい機能の一つです。セグメント機能はカスタマイズできるのですが、集計の基準をユーザベースにするか、セッションベースにするかで、数字が大きく変わります。セグメント機能には以下のように、右側にそのセグメントのユーザー数が表示されるようになっていますが、これも意図しない設定をしてしまうからこその機能でしょう。しかしそれでも複雑なカスタマイズをしたときは、いくつかのレポートを表示し、意図した計算結果になっているかを確かめる必要があります。

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このように、アクセス解析ツールが出力している数字を単純に見ているだけでは、判断を誤る可能性もあります。設定を変えたとき、セグメントを変えたときなどは、それが意図した設定になっているか確認する必要があります。特に極端な数字や想定と大きく外れた数字が計測された場合には、すぐに一喜一憂するのではなく、まずオペレーションミスを疑ってみましょう。

8. 改善したのにコンバージョン率が下がって問題だ

コンバージョン率は目標にされやすい指標ですが、コンバージョン率を目標にすべきケースは、実はそれほど多くないと感じます。

例えばサイトを改善して流入が増え、本来顧客にならない訪問者が増えると、コンバージョン率は下がります。それでも同じコストのままコンバージョン数が増えているのであれば、事業上は成功のはずです。例えば以下の図のような状況は、企業にとって望ましい状況のはずですが、コンバージョン率を基準にすると、事業への貢献度が下がったかのように見えてしまいます。

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また、流入が減る様なリニューアルを行ってしまい、結果的に購買動機の強い訪問者だけが残るような特性のwebサイトになると、コンバージョン数は下がるがコンバージョン率は上がる、という現象も起こります。

ページビューほどではありませんが、コンバージョン率も基本的には事業上のKGIと相関しにくい数字であり、多くの場合、真に気にすべきはコンバージョン数です。もしくは、コストに対するコンバージョン数(CPA)です。このように、事業上の成果をきちんと相関する指標を設定しないと、せっかくのアクセス解析も事業に活かすことができないでしょう。

9. 一番アクセス数が多いホームから手直ししたい

ホーム(トップページ)というのは、サイトの顔になるページであり、多くのサイトでは最もトラフィックがあるページとなっていることでしょう。それ故に、webサイトのパフォーマンスに問題があると、真っ先に改善対象にされてしまいがちです。しかし、ホームを優先的に改善すべきかどうかは、訪問の多さだけで決めるべきではありません。

例えば、ホームへのランディングは訪問の40%を占めるが、直帰率は30%以下、一方のサービス紹介の各ページへのランディングは訪問の15%ほどだが、直帰率は70%を超えているような場合。

ホームは直帰率が既に30%以下であり、これ以上の改善効果は見込めません。一方サービス紹介は直帰率に改善の余地があり、ここから手を付けた方がコンバージョン数の増加に繋がる可能性が高いでしょう。

しばしば、「ホームからのコンバージョン率が高いので、やっぱりホームの改善が最優先だ」といった話になることもあります。しかし改めて分析すると、問い合わせ目的で再訪問する人がホームを使うから結果的にホーム経由のコンバージョン率が高くなっているだけ、ということも多いです。こういうユーザーはホームがどんな出来でもそれなりにコンバージョンしてしまうので、やはり改善して大きな効果は望めません。

このように、単純に訪問数が多い、サイトの顔となるホームだから大事、と安易に決め付けるのではなく、トラフィックの規模、改善の可能性、改善の容易さなどを総合的に判断して優先順位を決めなくてはなりません。

10. SEOをやってもコンバージョンに繋がらない

ユーザーや集客レポートにもコンバージョン率やコンバージョン数を表示した列があります。例えば「チャネル」を選ぶと、以下のように右側にコンバージョンの列が表示されます。

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これを見ればチャネルごとのコンバージョン率/数が手っ取り早く確認できます。しかし注意しなければならないのは、ここで見えている数字はコンバージョンが発生したセッションのみの集計結果ということです。

例えば、再訪問してからコンバージョンすることが多いサイトの場合、コンバージョンしなかった1回目の訪問はコンバージョンの数字として当然ながらカウントされません。しかし、再訪問時にコンバージョンしているのなら、1回目の訪問とそれに使われたチャネルも評価されるべきでしょう。

例えば一回目の訪問で自然検索がよく使われて、二回目の訪問ではあまり使われない場合、自然検索で訪問するユーザーはコンバージョンに寄与していない、と見えてしまう可能性があります。

こういった複数の訪問をまたいだ分析をするために、コンバージョンするまでの複数の訪問経路をレポーティングした「コンバージョン経路」や、コンバージョンの起点・終点を詳細に分析できる「モデル比較ツール」といった機能が用意されています。

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しかしこの2つの存在を知らないと、単純にコンバージョンしたセッションだけでチャネルの価値を判断し、改善の優先度・重要度を見誤ってしまうでしょう。

アクセス解析は、レポートの意味をきちんと理解していないと、誤解する可能性があります。なんとなくメニューを触って、それっぽい数字やグラフを見て満足するのではなく、言葉の定義や各メニューの使い方などをきちんと理解して使わなければ、本当に有用な情報を引き出すことができません。

冒頭では「すべての機能を使いこなす必要はない」というお話をしました。それは確かにそうなのですが、これは言葉の意味や成果への影響を短絡的に判断してもいいという話ではありません。「これはどういう意味なのだろう?」「もっと他に相応しいレポートがないのだろうか?」と疑問を持って、調べながら使っていく必要があります。

まとめ

現在は、あらゆる職種において、データの裏を取ることが求められる時代です。デザイナーもエンジニアなどは、アクセスログの見方をある程度知っておかなければ、まともにディスカッションに加わることができないことも多いでしょう。

アクセスログを見ること自体は簡単です。しかし難しいのは「適切に見ること」と「良いアイデアを導き出すこと」です。これは一朝一夕で身に付くわけではありませんが、上記のような誤解や失敗の例から、そのコツを少しは掴めたのではないでしょうか。このエントリーがその一助になれば幸いです。

(2017年11月21日「ベイジの社長ブログ」より転載)