サイボウズ:社員を縛らず、選択肢を広げて社員に決めてもらうのが新しいカイシャ──サイバーエージェント、ほぼ日と語ってみた

「失敗を経験した人材が辞めてしまうのは、会社にとって損失」
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新しいカイシャの姿をテーマに、サイボウズが主催した「チームワーク経営シンポジウム」。パネル1では堀江貴文さんを迎え、これからの働き方と教育について議論しました。

パネル2では、モデレーターにBUSINESS INSIDER JAPANの浜田敬子さん、パネラーにはほぼ日の篠田真貴子さん、サイバーエージェントの曽山哲人さん、サイボウズの山田理が登場。

カイシャと私たちの理想的な関係とは......? 人事制度と組織作りを中心に、登壇者が語り合いました。

失敗を経験した人材が辞めてしまうのは、会社にとって損失

ステージにいるお三方の会社は、ベンチャーとしてスタートして、試行錯誤しながら、組織作りや人材育成をしてきたと思います。

まずは曽山さん。サイバーエージェントはどのような組織作りをしているんですか?

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曽山:僕が入社した頃は20人だった従業員数が、いまや8500人になりました。ただ、過渡期といいますか、退職率30%以上の期間が上場直後の2000年頃から3年ほどあったんです。

優秀な人から辞めていってしまう危機感から、役員で話し合って新たな人事制度を考えました。それが「実力主義型終身雇用」です。

実力があれば、若手でもどんどん抜てきします。だからといって、実力がないと会社に居られない訳ではなく、価値観が合っている人を終身雇用で守るという考え方に沿ったものです。

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曽山哲人(そやま・てつひと)。1974年、神奈川県生まれ。1998年上智大学を卒業後、株式会社伊勢丹(現:株式会社三越伊勢丹ホールディングス)に入社。1999年サイバーエージェントに入社。インターネット広告事業本部統括を経て、2005年に人事本部長に就任し、2008年に取締役就任。著書に『クリエイティブ人事』(光文社新書)、『強みを生かす』(PHPビジネス新書)がある。
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浜田:実力主義ではあるものの、社員にとっての「安心」を担保している、と。

曽山:そうです。年功序列制度を撤廃し、実力のある人を抜擢する。一方、ちゃんと安心してチャレンジできる会社を目指しました。

僕らは年間10社ほど子会社を設立し、新卒入社して数年の若手を社長に抜てきしています。この中で5年後まで生き残っているのは、6〜7社です。

浜田:生き残れなかった会社の人材は、どうなるのでしょうか。

曽山:次もチャンスを与えるようにしています。

なぜなら、失敗から学べることは大きいからです。失敗経験をした人材が辞めるのは、会社にとって大きな損じゃないですか

弊社には、「挑戦した敗者にはセカンドチャンスを」というミッションステートメントもあります。

浜田:チャレンジと安心は、相反しないということですね。

曽山:セットだと思います。だから、失敗した人の次の配置転換の時には、できるだけ本人の希望を聞くようにしています。

当社社長の藤田(*)も「失敗している本人は恥ずかしくて辛いのだから、よくねぎらってあげて」と言っています。

(編注:藤田晋さん。サイバーエージェント代表取締役社長)

クリエイティブな組織を作るなら、管理部門もクリエイティブにならないといけない

浜田:ほぼ日は、すごく穏やかで居心地の良さそうな印象があります。みんな糸井重里さんが大好きという感じ。採用の倍率もすごく高いですよね。

篠田:そうですね。ありがたいことにたくさん応募いただくのと、そもそも1回あたり少数しか採用できないので。

ただ、入社したとしても、万人に向いている職場ではないと、わたしは思っています

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篠田真貴子(しのだ・まきこ)。1968年生まれ、東京都出身。1991年慶応義塾大学経済学部卒、日本長期信用銀行(現新生銀行)に入行。米コンサルティング大手のマッキンゼー・アンド・カンパニーやスイス製薬大手のノバルティスファーマを経て、2008年東京糸井重里事務所に入社。2009年から取締役最高財務責任者(CFO)に就任。
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浜田:というと?

篠田:弊社はクリエイティブな仕事、つまりアイディアをチームで生み出し続ける会社です。そのため、社員1人ひとりへの期待値が高い。

わたしが入った10年前は、組織というより個人事業主が集まっているような状態で、仕事も属人的でした。

浜田:熱量が高い人が自由に仕事をすることで成り立つ集団だったんですね。でも、そういう会社はマネジメントが難しくないですか?

篠田:はい。個人で強い動機をもつ人たちが、会社組織として一体となるにはどうすればいいか。ほぼ日の組織運営の、変わらぬテーマです。

クリエイティブな集団をマネジメントするには、管理部門がどれだけクリエイティブになれるか。それが大事なポイントです。

浜田:管理部門がキーだと。

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浜田敬子(はまだ・けいこ)。1989年朝日新聞社入社。前橋・仙台支局、週刊朝日編集部などを経て99年からAERA編集。記者として、女性の働き方・雇用問題、国際ニュースを中心に取材。2014年から編集長。2016年5月から朝日新聞社総合プロデュース室プロデューサーとして新規プロジェクトの開発などに取り組む。2017年に同社を退社し、現職に就任。
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篠田:通常の管理部門のアプローチは、できるだけ属人性を排除して、誰がやっても確実に同じアウトプットが出ることを目的にしがちです。

でも、ほぼ日は「個」が光るほどチームが強くなるタイプの会社。つまり、大事なのは属人性をいかに守るかなんです。

浜田:具体的には何をしたのですか。

篠田:たとえば経費精算のような作業は、「やらされるもの」というより「仕組みがあったほうが安心で楽」になるよう考え、管理部門からこまめに情報を取りにいきました。

要は、1人ひとりが余計な心配をせずに、バンバン打席に立てるように仕組みを作り、社員がクリエイティブな力をより発揮してほしいという狙いだったんです。

浜田:なるほど。

篠田:もう1つ大切なことがあります。それは、社内の個々のつながりをいかに豊かにするか、です。

命令された業務をこなすだけでは、仕事に対するモチベーションが弱いじゃないですか。

浜田:ええ。

篠田:「この人と協力して、こんな仕事に挑戦したい」といった欲求が自然に発生し、それがどんどんつながっていく環境でありたいです。

例えば、社内全体でくじ引きだけで決める席替えをしています。部署も関係なく席が決まるので、私の周囲には編集者や商品開発担当者がいるんです。

席が近い人同士で雑談する中から企画チームが生まれることもあります。

「インターネット的」な社会が組織を変えた

山田:ほぼ日さんって、すごくインターネット的ですよね。

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山田理(やまだ・おさむ)。1992年大阪外国語大学卒業後、日本興業銀行に入行。2000年サイボウズへ転職し、責任者として財務、人事および法務部門を担当し、同社の人事制度・教育研修制度の構築を手がける。2014年からグローバルへの事業拡大を企図し、アメリカ事業本部を新設し、本部長に就任。
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山田:上下関係がなく、社員同士の関係が横に広がるようなイメージがあります。おもしろい人のところにおもしろいものがぶわっと集まっていって、おもしろくなくなったら、次ー!って離れていく。

ただ、このような動き方をするには、社員1人ひとりにどんなことができるのかを、管理側の人が把握しないといけない。個人のリソースがわからなければ、さまざまな仕事を割り当てられませんから。

浜田:社員が増えれば増えるほど複雑になるので、大変そうですね。

山田:でも、インターネットを活用して、情報交換を密にすれば、リソースの把握が簡単にできる。すごく現代的ではないでしょうか。

曽山:「インターネット的」という言葉に付け加えると、今はマネジメントの良し悪しがすぐにバレる時代なんですよね。

たとえば、僕が部下にパワハラをしたら、すぐにSNSで広まってしまう。

篠田:ええ。

曽山:逆に、ちゃんと真っ当にやっている人は光る。信頼構築の上で才能が発揮できる。そんな環境がある時代なのに、多くの企業はそれに気づけていない

信頼できるフラットな関係を築けている会社とそうでない会社には、大きな隔たりがありますね。

篠田:まさに、信頼は大切ですね。あと、人を操作する感覚がもうダメなんですよね。

ほぼ日では「チーム」という、部や組織を横断した集まりで動くことが多いです。自らの動機で集まり、得意・不得意による役割分担はあれど、そこに意味のないヒエラルキーは生まれない

リーダーは判断することが仕事ですが、あくまでそういう分担だということに過ぎません。えらいわけではないんです。

これからは「社員をゆるく囲い込むこと」がトレンドになる?

浜田:わたしはたくさんの会社を取材していますが、正直、みなさんの会社はすごくレアです。

大企業はどちらかというと、社員を会社のものと思っている。彼らの時間やスキル、人脈もすべて会社の資産として、支配したがるのが一般的です。

曽山:サイボウズは、社員みんなの意見を聞いているんですよね。聞くうちに、カチンとくることはないんですか?

山田:まあ、なりますよね(笑)。

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山田:ただ、今の時代、会社が社員の意見を聞かず、支配しようものなら簡単に辞められてしまいます

いわゆるベンチャー企業は、大企業と違って人材が集まりづらいので、社員が離職することにめちゃくちゃナイーブです。

浜田:はい。

山田:だから、サイボウズでは育休・産休制度を作るときも、どれだけ必要かわからないけれど、6年は取得できるよ、というルールにしました。

だって、社員が帰ってこないよりは、6年後に帰ってくるほうが絶対いいじゃないですか。

複業も「できないなら辞めます」と言われるくらいなら、半分のリソースでもいいから残っていてほしい。

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浜田:なるほど。サイボウズがつくった数々のルールは、実は囲い込み政策なんですね。

山田:ある意味、囲い込みです。ただ、囲い込み方がどんどんゆるくなってきてる(笑)。

曽山:ゆるい囲い込みは、これからのトレンドになりそうですね。

会社に合う・合わないは、選択肢を広げた上で社員に決めてもらう

浜田:社員に対して、会社に合っていないなとか、辞めてほしいなと思った場合は、どうしていますか?

曽山:まず、合っていない事実を伝えるのが必要でしょうね。本人にきちんとフィードバックすること。これをサボっている会社が多いのではないでしょうか。

直接伝えて、社員自身が変わろうとするなら、きちんとサポートします。

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篠田:ほぼ日の人事評価における基本的な考え方は、自己評価です。

自分への評価を客観視する力を身につけたいので、長らく自己評価を採用しています。

浜田:え、そうなんですか?

篠田:ええ。もちろん、仕事は他者から評価されて初めて成立するものです。

しかし、その過程では、自分の仕事を自己評価しながら進めなければなりません。

仕事の質を高めるには、自己評価の精度を上げて、他者の評価とすり合わせることが必要です。

しかし、経験が浅いと、自己と他者の評価がどうしてもズレてしまう。

浜田:そうですね。一致させるのは簡単ではないと思います。

篠田:そのため、面談では「あなたはまわりから、こう受け止められている」と、まっすぐ伝えるようにしています。

それを聞くことで、1人ひとりが自問自答を重ね、自己と他者の評価と向き合っていきます。

浜田:なるほど。

篠田:自己評価と他者評価のズレでいうと、そもそも自分がやりたいことと、他人から求められていることが食い違うことも少なくありません。

短期的には、周りから求められることをしっかり返すことで、信頼を重ねます。

でも長期的には、本人に強い動機があれば、どんなことをしてでも、自ら打席を作ろうとしますよね。動機さえあれば、いずれ他人を巻き込んででもやろうとするはずです。

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山田:サイボウズの場合は、会社側が選択するのではなく、社員に決めてもらいます。

理由は2つあって。まず、会社の理念に合う・合わないは0か100かの話ではなくて、グラデーションがあるからです。100合う人もいれば、10合う人もいる。

浜田:人によって度合いが異なる、と。

山田:次に、会社に依存するような囲い込みをすると、雇用し続けないといけない責任が生まれます。

社内の仕事と評価だけに染まると、外に出るためのスキルがなくなってしまう。

僕らは会社側も社員側も、依存し合う関係から解放したいと思っています。複業を許可すれば、社外でも通用するスキルが身につくでしょう。

浜田:むしろ会社側から選択肢を用意する、と。

山田:会社に合う・合わないで辞めさせるというより、選択肢を広げ、フィードバックした上で、その人自身に選んでもらっていますね。

「会社を変える」前に、自分がどう変わるか

浜田:ここからは青野社長も交えて、観覧者の方からの質問に回答したいと思います。

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参加者:上層部が組織をよくしたいと思っている会社もあれば、そうではない会社もあります。

後者の場合、古い体質を変えたいと考えても、末端にいる平社員の立場ではなかなか難しいと感じています。

個人が草の根活動をすることに、どれだけの意味があるのでしょうか?

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曽山:難易度が高いのはたしかでしょうね。その上でまずやるべきは、周りにいる人を変えることです。

そして、対象範囲をどんどん広げていきながら、その中でも立場の高い人をどれだけうまく巻き込めるかが大切だと思います。

逆に、そこまでやって変わらないのであれば、会社を辞める選択肢もあります。

別にあなたの才能は、その会社だけで発揮されるものではないはず。自分の才能を安売りしないほうがいいですから。

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篠田:会社を変えることに対して、本当に強い動機があるのでしょうか。その点をもう少し突き詰めて考えたほうがいいかと思います。

「会社を変えたい」と言いながらも、なぜ変えたいのかを考え抜いていない人が意外と多いんじゃないかな、と。

たくさん面接を受けて、たまたま入っただけの会社に、なぜそこまでコミットしたいのかを客観視してみてはどうでしょうか。

山田:会社に違和感を感じたときは「会社を変える」か「自分が変わる」かのいずれかだと思います。

キャンプファイヤーにたとえると、中央でたくさんの人が楽しんで歌っているのに、変える努力って本当に必要なのかなと思います。

自分が気持ちよく働けるところに場所を変えたほうがいいこともあるでしょうし。

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青野:「会社を変える」と何気なく言いますが、会社はいわば、バーチャルな存在で、実体はない。

実際に変えることができるのは、自分であり、周りの人です。そうした事実から逃げないことが大切なのではないでしょうか。

そしてやはり、一番変えられるのは自分自身というのを覚えておくといいかな、と思います。

浜田:会社を変えると言っても、その手前でいろいろと考えなければならないですね。登壇者のみなさん、ありがとうございました。

文:園田菜々/編集:杉山大祐(ノオト)/撮影:栃久保誠

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」は、サイボウズ株式会社が運営する「新しい価値を生み出すチーム」のための、コラボレーションとITの情報サイトです。本記事は、2018年6月6日のサイボウズ式掲載記事
より転載しました。