東京都で日本初の「SOGI基本計画」素案が発表。9月30日までパブリックコメントを募集中

「パフォーマンス」で終わらせないために必要な4つ改善ポイントと、より多くの当事者の声。

2018年10月、東京都議会で「東京都人権尊重条例」が成立。日本の首都である東京都で、「性的指向や性自認による差別の禁止」が条例に盛り込まれたことは非常に画期的なことだった。

しかし、東京都としてLGBTに関する差別や偏見をなくすために、今後どのような取り組みを行なっていくかについて、条例では「基本計画をつくる」ことを定めるにとどめ、具体的な内容は決められなかった。

そして2019年8月、東京都は「東京都性自認及び性的指向に関する基本計画」の素案を発表。これは今後3年間、東京都がLGBTに関してどのような取り組みを行うかの「計画」となる。

実は、LGBTイシューのみをフォーカスした「SOGI基本計画」を作った自治体は日本で初めて。今後他自治体や国の法整備にも大きな影響を与える可能性があるだろう。

「SOGI基本計画」の内容を見てみると、啓発や相談対応など良い点もある一方で、性的指向や性自認を理由とする不当な解雇などの「差別的取り扱い」が起きてしまった際に申し出ることができる機関がない等、条例の実効性を担保する部分に不足する点も見られた。

東京都は、この「SOGI基本計画」の素案に対しての意見を9月30日(月)まで募集中。fairでは、基本計画の評価や懸念点、そして取り入れられるべきポイントを整理した。

来年に控える東京オリンピック・パラリンピックを契機に、東京都で条例ができたことは大きな一歩だ。しかし「表向きのパフォーマンス」で終わらせず、中身の伴った実効性のあるものにするためには、一人一人が制度に関心を持ち、意見を届ける必要がある。

以下のポイントをもとに、ひとりでも多くの「声」を届け、より良い基本計画・より実効性のある条例づくりにつなげたい。

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東京都「SOGI基本計画」素案の要旨と評価、懸念点など 。PDF版はこちら
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「SOGI基本計画」の良い点

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「SOGI基本計画」の良い点
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他の自治体では、これまでも「男女共同参画」等に関する基本計画の中で、LGBTに関する施策を取り入れられることはあったが、LGBTイシュー単体で基本計画を策定するのは、東京都が初めてだ。
単独の基本計画ができるということは、それだけ力を入れて取り組みが進められることが期待できるだろう。

「基本計画」の内容を見てみると、啓発等に力が入っている点は評価できる。さらに、相談事業も力が入っており、既に条例ができた2018年10月より「性的指向や性自認に特化した電話相談」を開始。今後はSNSを活用した専門相談も検討していくという。

また、「ロールモデル発見の支援」という項目がつくられたことも興味深い点だ。LGBTの子ども・若者は特に、身近な範囲にロールモデルとなる存在を見つけることが難しい。東京都として、若年層の当事者の「生きるヒントを得ることができる機会」の提供について行政の役割を検討していくという。

このように評価できる点もある一方で、条例の実効性を担保する上で不足している点などがある。その中でも特に取り入れられるべき4つのポイントを整理した。

取り入れられるべき4つのポイント

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「SOGI基本計画」の悪い点
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「基本計画」に取り入れられるべき4つのポイントは以下だ。

①苦情処理機関をつくるべき
条例には「性的指向や性自認による差別の禁止」が入ったが、実際に差別的取扱いを受けてしまった際に申し出る・問題を解決してくれる機関がない。東京都世田谷区や豊島区では苦情処理委員会が設置されている。東京都でも、同様に差別的取り扱いに対応できる苦情処理機関を設けるべきだ。

②当事者の声が反映できる会議体をつくるべき
LGBTに関する施策を進める上で、当事者の意見を聞かずに制度をつくるべきではない。性のあり方は多様であるため、なるべく様々な属性の当事者をメンバーに入れた会議体をつくり、意見が反映されるようにすべき。

③パートナーシップ制度導入のための取り組みを進めるべき
性的指向や性自認による差別を禁止しているのであれば、異性カップルと同性カップルで取り扱いが異なることは差別にあたる。既にLGBTの東京都職員が、同性カップルへの平等な福利厚生適用を求めて申し立てを行なっている
既に26の自治体でパートナーシップ制度が導入されている。東京オリンピック・パラリンピックを控え、多様性を受け入れる姿勢を示すためにも、日本の首都である東京都こそ平等に向けた制度を取り入れるべきではないか。

④企業にもっとこの条例を周知すべき
差別禁止が入った都条例だけでなく、国としても、SOGIハラやアウティング対策を企業に求める指針を策定する予定である。計画期間である今後3年間、国の制度も条例も、広く周知されなければ実効性は持たない。パンフレットの制作やインターネット等を利用して、事業者への周知を徹底すべき。

基本計画のためのヒアリング、当事者の回答者数はたった42人

「基本計画」に取り入れられるべき4つのポイント以外にも、いくつかの懸念点がある。

今回の「SOGI基本計画」素案を作るにあたって、東京都はLGBTに関する調査を実施している。しかし、調査のサンプルサイズをみると、当事者の回答数はたった「42人」だった。基本計画の策定過程が公開されていないため、どのようにこの声が反映されたのかも不明。本来は追加調査が必要ではないかと考える。

また、東京都は今後「性自認及び性的指向に関する職員向けのマニュアル」を作成すると記載されているが、どのようにマニュアルを作るのかについては説明されていない。当事者の意見を反映したマニュアルの策定を期待したい。

2019年8月、東京都で働く同性パートナーを持つ職員が、同性カップルに福利厚生を適用しないことは条例が定める「不当な差別」だとして、都人事委員会に改善を求める措置要求をした

近年は、同性カップルにも異性婚と同様の福利厚生を適用する企業が増えてきているが、その数はわずかだ。

条例で規定されている「性的指向や性自認による差別禁止」は、東京都だけでなく東京都の事業者や都民にも適用されているため、実はこの件は他人事ではなく、東京都にある企業にとっては同じように福利厚生を求められた場合に適用しなければならない根拠となるのだ。こうしたことも含めて、東京都には企業への条例の周知徹底を求めたい。

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「SOGI基本計画」に関する東京都のWEBサイト
東京都/fair

「パフォーマンス」で終わらせないために、市民の声を届ける

日本初となる東京都「SOGI基本計画」。今後、東京都下だけでなく他の自治体や、国レベルの法整備にも影響を与えるだろう。

来年に控えた東京オリンピック・パラリンピックを前に、性的指向に関する差別を禁止している五輪憲章を守り、世界に対して恥じることのない制度を施行すべきだ。

既に条例が施行されているという点で、東京都は大きな一歩を踏み出している。しかし、これを「表向きのパフォーマンス」で終わらせず、いかに中身の伴ったものにするためには、市民ひとりひとりが制度に関心を持ち、内容について一人でも多くの声を届けることが重要だ。

パブリックコメントは9月30日(月)まで。詳しい情報は東京都のWEBサイトに記載されている。

Eメールの宛先は「ikenboshu2-jinken@section.metro.tokyo.jp」。件名は「東京都性自認及び性的指向に関する基本計画素案への意見」とし、本文に「意見の該当箇所・意見内容・理由」を添えて送信できる。

プロフィール
1994年愛知県名古屋市生まれ。明治大学政治経済学部卒。一般社団法人fair代表理事。オープンリーゲイ。政策や法整備を中心としたLGBTに関する情報発信やキャンペーンを行っている。LGBTを理解・支援したいと思う「ALLY(アライ)」を増やす日本初のキャンペーン「MEIJI ALLY WEEK」発起人。

Twitter @ssimtok
Facebook soshi.matsuoka

(2019年9月16日fairより転載)