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周りは「敵だ」よりも「仲間だ」と思って。現役東大院生・紀野紗良さんが令和の受験生に伝えたいこと

「令和時代の受験を乗り越えるために大切なこと」とは? 現役東大院生の紀野紗良さんに聞きました。

コロナ禍の最中、昨年度に大学入試センター試験が廃止され、大学入学共通テストに切り替わりました。これまでの「知識の習得」を中心とした教育から、「主体性を持って多様な人びとと協働して学ぶ力」など、幅広い力の育成を重んじる教育へ変化。

 

新しい生活様式と教育方針の転換を背景に、受験生もまた変化を迫られています。これからの時代は「横のつながり」が受験のカギ。ライバルを蹴落とすのではなく、仲間同士で情報交換し、お互いを高め合うことが大切です。

 

現役東大院生の紀野紗良さんに「令和時代の受験を乗り越えるために大切なこと」について聞きました。

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紀野紗良(きの・さら)さん:2000年北海道生まれ。18年に地元の高校を卒業した後、東京大学理科二類に入学。同大学農学部を卒業し、東京大学大学院農学生命科学研究科に進学。環境に優しいサステナブルな素材開発の研究をしている。学業の傍ら、大学4年生までTBS系列のクイズ番組『東大王』に出演
KAORI NISHIDA

「集中できる環境づくり」と「やる気スイッチの切り替え」

―東京大学を受験しようと思ったきっかけは?

 

とある塾の特別講習で、現役東大生が受験の体験談から大学の様子まで、いろんな話をしてくれたことがあって。そのとき、その東大生がとても魅力的に映ったんです。加えて、東大は各方面に秀でた人が集まるところだという印象も受けました。それで「東大に行きたい!」と思い始めました。

 

―勉強するうえで意識していたポイントはありますか?

 

「効率よく努力すること」です。高校時代はバレエのお稽古でいそがしくて、常に習い事と勉強の両立が頭の片隅にある状態でした。だから、「量より質」を意識しました。つまり、時間がないから質で勝つしかない。

 

―なるほど。質を高めるために、どんな工夫をしていましたか?

 

「集中できる環境づくり」と「やる気スイッチの切り替え」。この2点を大事にしていました。

 

まず「環境づくり」は、その時々の自分が集中しやすい環境を整えるんです。たとえば、夏休みは静かなところでガッツリ勉強したいから、塾の自習室に行く。逆に、学校の休み時間は教室でサクッと復習するとか。そんなふうに、意識的に環境づくりをしていました。

 

「やる気スイッチの切り替え」はスマホのタイマーを使っていました。たとえば、軽めの数学の宿題であれば、15分で終わらせると決めてタイマーをセットする。終わったら5分休憩を挟んで、また次の宿題を15分する。そんな感じで分量に応じて、無理しすぎないレベルで時間を見極めながら、自分の中のスイッチを切り替えていました。

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KAORI NISHIDA

「東大生は、雲の上の存在」だと思っていた。

―大学受験で一番苦労したことは何でしょう?

 

私は地方出身なので、東京の大学の受験情報が周りに全然なかったんです。だから、情報収集には本当に困りました。

 

「どの参考書を使えば、学力を東大レベルまで上げられるのかな?」「模試はどこで受けられるの?」「受験の宿はどうしよう?」などなど……調べないとわからないことだらけで。当時は母に手伝ってもらいながら、苦労してインターネットで情報を集めました。

 

そのほか、塾の講習で知り合った友達とSNSでつながっていたので、その子たちと情報をシェアして協力もしていました。

 

―東大の合格発表を見たときは、どんな気持ちでしたか?

 

合否の発表時間が正午だったので、朝9時くらいに起きて。ずっとソワソワしながら無限に歯を磨いていました(笑)。それからシャワー浴びて、ひたすら時間を潰していて。

 

でも、どうしても待ちきれなくなって。11時45分に東大のサイトにアクセスしてみたんです。そうしたら、もう結果が出ていた! 「本当に今年のものなのか?」と思って、去年の合格平均点と今年の画面上の点数を見比べてみました。すると、去年と違う。

 

おそらく今年の結果だろうと思い、合格者のなかから自分の受験番号を探して……見つけました。その瞬間に、すごく安心しましたね。その後はすぐにリビングにいる母に見せに行って、二人でスマホを覗き込みながら喜びました。

 

―受験を乗り越えて、学びはありましたか?

 

「自分が思ってもみなかったことが叶う。そんな可能性が人生にはある」ことを、受験を通して知りました。

 

実は、小学生の頃は「東大生は、雲の上の存在だ!」と思っていたんです。「自分にはなれっこない」と本気で思っていました。だけど蓋を開けてみれば、今は自分がその「東大生」になっている。

 

だから自らの選択と努力によって、人生は柔軟に変わり得る。すべての努力が実るわけではないけれど、人生は可能性に満ちている。受験を乗り越えた今は、そんなふうに考えられるようになりました。

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KAORI NISHIDA

「周りは仲間だ」ということを忘れないで。

―センター試験が廃止されて入学共通テストに変わりました。今の受験生に求められるのは、どんな力だと思いますか?

 

入試制度が変わることで、試験内容や配点にも変化が加わりました。また、今後は試験科目に「情報」が増える可能性があるとも言われています。今の受験生は、そうした変化に柔軟に対応しなければいけない。つまり、受験生に求められるのは「対応力」だと思います。

 

対応力を発揮するためには、「何が変わるのか」をいち早く知ることが重要です。情報を知ることで、対策ができる。そして対策をすれば、心の安定につながります。

 

だから、常に更新される受験情報にアンテナを張り巡らせて、インターネットやSNSを通じて情報収集することが大切だと思います。

 

―コロナ禍の影響で、受験生はより孤独感を味わいやすいのでは。メンタルケアはどうすべきでしょう?

 

私の場合は、つらい感情を言葉にして母に聞いてもらうことで、ストレスを軽減していました。また、SNSでつながっている友達と近況報告し合ったり、励まし合ったりしていました。孤独を感じやすい受験期こそ、友達とのつながりは大きな支えになると思います。

 

今だとTwitterで勉強アカウントをつくっている受験生も多いですよね。たとえば、Twitterの勉強アカウントに学習アプリのリンクを貼って。「アプリでもつながりましょう」と、普段の勉強量をシェアし合ったりしている。

 

SNSだと学校が違っても、同じ目標を持つ人同士でつながることができます。その点で、Twitterの勉強アカウントは理にかなっていると思います。SNSを上手に使えば、友達と情報交換しながら切磋琢磨できる。そして、メンタルケアにもなる。活用しない手はないのでは。

 

また「STUDY WITH ME(YouTubeなどで自分の勉強している様子や、手元の道具などを配信する動画)」を見ながら勉強するのもいいですよね。リアルで集まりづらい今のご時世でも、みんなと一緒に勉強する喜びや達成感を味わうことができると思います。

 

―受験の制度や学習のスタイルが変わっても、体調管理の重要性は変わらないと思います。紀野さんは、どうしていましたか?

睡眠と食事に気をつけていました。とくに食事は5大栄養素をバランスよく摂取できるよう、母が献立を考えてくれていました。

 

たとえば、学校からそのまま塾へ行って、夜まで講習を受けるときは、お弁当とカロリーメイトをセットで持たせてくれて。お昼はお弁当、夜は塾でカロリーメイトを食べて、家に帰った後に夕飯を食べる。みたいな感じで栄養バランスが偏らないように気をつけていました。

 

そのほか、息抜きにはチョコレートを食べたり。ただし、家の食事やカロリーメイトのような栄養補助食品で5大栄養素をバランスよく摂る。それは紀野家のルールでした。

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5大栄養素がバランスよく摂れるカロリーメイト。左からブロック、リキッド、ゼリーの3タイプがある。「リキッドやゼリーは、緊張している試験当日の朝にも喉を通りやすく、栄養も摂れていいのでは」と紀野さん
KAORI NISHIDA

―最後に受験生へアドバイスを一言お願いします。

 

同じ大学を志望する人であっても、その人は敵ではなく、味方にも十分なり得るということを忘れないでほしい。

 

受験期は不安になることも多いと思います。私自身もそうでした。だけど不安なときこそ、同じところを目指している人からの言葉は、やる気に火がつく一番の燃料になる。それに、困ったときに一番頼れる存在にもなってくれます。

 

だから「周りは敵だ」よりも「周りは仲間だ」と思って受験に臨んでほしい。そんなふうに思います。

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KAORI NISHIDA

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写真:KAORI NISHIDA

取材・文:midori ohashi