サイボウズ式:日本人は、会社にいる「時間」にこだわりすぎ。「時間=責任」は学校文化の呪縛──田端信太郎×青野慶久

マインドチェンジはなぜ難しい? どうすれば変えられる?
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サイボウズ式

7月に書籍『ブランド人になれ! 会社の奴隷解放宣言』を上梓したスタートトゥデイ・田端信太郎さんと、サイボウズ社長・青野との公開取材イベント。

第1回第2回は、働き方や子育てについての対談レポートをお届けしました。第3回では、イベント参加者からの質問に対して、お二人に答えていただきます。

質疑応答の前半は、「上司と対等に交渉するには?」「会社における責任って何?」といった悩みや問題提起をピックアップ。 日ごろから溜め込んでいたモヤモヤを解消するヒントを探ってみました。

【質問1】マインドチェンジはなぜ難しい? どうすれば変えられる?

質問者:対談の中で「優秀な人ほどマインドチェンジが難しい」という話がありましたが、具体的にどうすればマインドを変えられるのか、ご意見をお聞きしたいです。

青野:サイボウズには「質問責任」というルールがあるんです。

働いていて疑問に感じたこと、おかしいと思ったことがあれば、必ず質問しなければならない。質問しない人は卑怯者である、と。

自立をむりやり引き出すためのルールを作ったんですよ。

田端:なるほど。

青野:面白いですよ。

サイボウズのメンバー同士で飲みに行って、誰かが仕事のグチを言うと、「お前、質問責任を果たしてないじゃないか」となる。

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青野慶久(あおの・よしひさ)。1971年生まれ。愛媛県今治市出身。大阪大学工学部情報システム工学科卒業後、松下電工(現 パナソニック)を経て、1997年8月愛媛県松山市でサイボウズを設立した。2005年4月には代表取締役社長に就任(現任)。社内のワークスタイル変革を行い、2011年からは、事業のクラウド化を推進。著書に『ちょいデキ!』(文春新書)、『チームのことだけ、考えた。』(ダイヤモンド社)、会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない」(PHP研究所)。
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田端:「なんでその場で言わなかったんだ」と。それ、すごくいい話ですね。「仕事は上から与えられるものだ」みたいな考え方って、疑うことがそもそも難しいですから。

青野:ルールを決めておくと、違和感を抱いたときに、自分の意見を言えるようになります。

その一方で、意見を聞く側の人間が発言をちゃんと拾って、議論のテーブルにあげることも大事です。すると「自分の発言によって改善された」「うれしい、また言おう」という好循環が生まれます。

田端:「上司は私の辛い思いを察するべきだ」というのは、一番つまらない考え方。上司はお父さんでもお母さんでもないんだから、言いたいことがあれば言いましょうよ。

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田端信太郎(たばた・しんたろう)さん。1975年生まれ。NTTデータを経てリクルート、ライブドア、コンデナスト・デジタル、NHN Japan(現LINE)で活躍。今年2月末にLINEを退職し、ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」やPB「ZOZO」を展開する株式会社スタートトゥデイ コミュニケーションデザイン室 室長に就任。7月には著書『ブランド人になれ! 会社の奴隷解放宣言』(幻冬舎)を上梓した。
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田端:サイボウズさんの「質問責任」っていうのは、そういう「察してくれ文化」を否定しているわけですよね。

青野:そうです。みんなが同質なら言わなくてもわかる。でも今は社会が成熟して、多様性を求めはじめているじゃないですか。どこで働くのか、人生に何を求めているのか、それぞれ違う。

だとしたら、言わなきゃわからないし、言わせるように仕向けないといけないですよね。

田端:そういえば僕、7~8年前に前職で部門長だったとき、エグゼクティブコーチを付けられたんですよ。「マネジメントを放棄している」という理由で。

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田端:コーチいわく「ときどき声を掛けたりすること、現場が大変そうであればシュークリームを買っていったりすることも必要だ」と。

そうすることで、はじめて意見が言える人もいる。努力によって力を引き出すのも、部門長としての責任だと言われまして。

青野:なるほど。でもそういう人は、永遠にシュークリームが必要になってしまいますよね。

田端:ある意味、部下をバカにしていると思うんですよ。ガス抜きして、飼い慣らしているだけじゃないですか。

でも、世の中全体でみれば、そういうやり方が心地よいという人も多いですよね。良い悪いじゃなくて、現実問題として。

青野:シュークリームをだんだん小さくしていけばいいんじゃないですか(笑)。

田端:ははは(笑)。とにかく、人間いろいろだということで。

【質問2】情報収集の仕方と社外にアプローチする方法を知りたい!

質問者:田端さんは転職する過程で、どうやって情報収集しているのでしょうか? 社外の人にこうアプローチしたらうまくいった、などのエピソードがあれば教えてください。

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田端:アプローチしたい人が本を出しているような方なら、イベントなどに参加して直接質問するのが最も有効だと思います。

あと、「この人の部下になってもいいな」という人を常に4、5人は頭の片隅に入れておくべきですね。

青野:それはどういう理由で?

田端:突然、会社がつぶれるかもしれないし、不本意な異動になるかもしれない。いまは人間関係が良くても、外から違う人が入ってくるかもしれない。

もしものときのために「代案」を考えておくことは、サラリーマンとして当たり前の備えじゃないですか?

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質問者:田端さんは常に「代案」を意識しているということですか?

田端:世の中に、自分がもっと力を発揮することができそうな会社があるのではないか、と常にアンテナを張っています。

転職のためだけでなく自分を高める上でも、同業他社の同世代にどんな人がいて、どんな仕事をしているかということに興味がわかない方がおかしい。

青野:なるほど。

田端:いきなり転職しなくても、サイボウズ式のようなメディアを見て、「あの人はこんなビジネスをやっているんだな」とか。

日頃から社外のことにもっと興味を持つべきですよ。

【質問3】「会社に行く=責任を果たす」になってしまっている?

質問者:地震や台風が来ても出勤しようとするのって、変ですよね。私は責任感の再定義が必要なんじゃないか、と思っています。

いま日本のサラリーマンは、「責任」をどう捉えればいいのでしょうか?

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田端:例えば、東日本大震災が発生したのは金曜日で、土日も日本中が混乱していた。でも次の月曜日、東京証券取引所は通常通り市場を開けたんですよね。

余震の恐怖に耐えながら、取引を行うために出社した人もいました。

青野:その出社については、肯定的に捉えている、ということですか?

田端:そうですね。市場としては極めて正しい判断でした。売りたいときに売れるって、金融市場で一番大事なことなので。

そうやって「俺は大事な金融インフラを守っているんだ」くらいの気構えを持って、主体的に出勤しているんだったら良いと思います。

青野:なるほど。

田端:でもほとんどの人は、「なんとなく、空気を読んで」出社してしまう。

青野:日本の企業は「時間」に責任を置き過ぎている感じがありますよね。何をやっているかではなく、会社に何時までいたか。

それが責任を果たしたことになり、給料として跳ね返ってくる。だから、会社に行くこと自体が責任になってしまう。

田端:それって、「出勤している限り、クビにしないよね?」という甘えと裏腹じゃないですか。

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田端:「クビにしたきゃ、すればいいですよ。でも僕は、ちゃんとやるべき仕事をやっているじゃないですか」ってビシっと言い返せない、自信のなさが表れているような気もしますけどね。厳しく言えば。

質問者:青野さんが「質問責任」を定義しているのは、そういう制度を作らないとうまくいかない、という感覚があったからですか?

青野:そうですね。サイボウズは多様な個性が生きる会社にしたいと思っています。みんなが楽しく働くためには、自立してもらうしかない。

それぞれが自己主張して、自分が欲しいものをはっきり言えるようにしないと、人と仕事がマッチングしませんから。

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田端:あと、出席重視って学校文化の悪いところですよね。出席しなくても、期末テストだけ受けて80点以上あればいいのかもしれない。

授業中に何も発言せず、心ここにあらずでも、出席するだけで評価されてしまう。

青野:学校教育によって「時間=責任」の考え方がインストールされてしまっているのかもしれないですね。

「休まなかった子が偉い」「皆勤賞おめでとう」みたいに。

あれ困るんですよ。小学校になったら、子どもを旅行に連れて行くのが大変で。

田端:そうそう、子どものほうが気にしますよね。

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青野:「平日休んで、旅行へ行こうよ」って誘ったら、「いや、学校が......」って反対されちゃって。

田端:「無理して学校に行かなくてもいいよ」と思っちゃいますよね。僕の子どもですらそうだから、かなり根強い考えなんだな、と。

青野:平成が終わろうとする今においてもなお、「皆勤賞」の呪縛があるのかもしれませんね。

【質問4】上司と対等に交渉できる人材になるためには、どうすればいい?

質問者:会社と対等に交渉することができる人材は、すごく貴重な存在だと思っています。

個人がそういう意識を持つためには何を大切にするべきでしょうか?

青野:いま「会社と交渉」という言葉を使われましたね。著書でも書きましたが、会社は幻想なんです。そこにいるのは部長や社長であって、交渉相手はモヤッとしたものではない。

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青野:そうすると、戦略が考えられませんか? 例えば「課長はデータを重視するから、こう準備しよう」とか。

誰と何を交渉するのか、明確にするのが第一歩だと思います。

田端:これは深いテーマですよね。まず、日頃から自発性がない人には、交渉ができません。

上司の立場でいえば、部下が相談にきたときに「お前はどう思う?」と聞いています。

焚きつけにいかないと、主体性はなかなか出てこないものなんですよね。

青野:なるほど。

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青野:一つ言えるのは、自発性がある人でも、すべての分野において交渉力が高いということでもないということ。

自分がこだわりのある内容じゃないと、交渉できない。まずは自ら率先して、主体性を持つことができる分野を見つけることが大事なのではないでしょうか。

第4回へつづく)

文:村中貴士/編集:松尾奈々絵(ノオト)/撮影:栃久保誠/企画:小原弓佳

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」は、サイボウズ株式会社が運営する「新しい価値を生み出すチーム」のための、コラボレーションとITの情報サイトです。本記事は、2018年8月28日のサイボウズ式掲載記事
より転載しました。