認知症でコミュニケーションが難しくなったお年寄りの男性に、「社長、参りましょうか」と現役時代の肩書で呼びかけると、素直に聞いて歩き出してくれた。
下着を替えるのをむずかる女性に、娘時代の写真を見せて、「このかわいい人は誰」と聞くと、自分から下着を替えだした。
こんなエピソードを聞いて、現在と昔の写真を組み合わせた額縁を作って身近に飾れるといいのではないか、と考えた人がいる。
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長年、お年寄りの写真を撮影してきた写真家で、巣鴨でシニア専門写真館を開く小野庄一さん(52)だ。「現役時代の輝きを認めてあげるとお年寄りは生き生きする」と言う。
小野庄一さん
20、30代の頃、多くのお年寄りを撮影した。百歳以上の人のポートレート写真集で荒木経惟氏らも受賞した「太陽賞」を受けた。
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「100歳の美しいおばあちゃん。もし80年前に会えたら」。レンズを向けると、それぞれの過去にも思いが寄せられた。
額縁の中に、結婚式や家族旅行などの写真と、年をとってからの笑顔を組み合わせた。小野さんは「自分史額」と名付ける。
人には積み重ねた人生がある。わずか5分前のことを忘れるようになっても、身近に飾れれば、その人の生き様を尊重出来る。本人にも好影響があると信じている。
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「お年寄りに今ここにいていい、と思ってもらうことが大事だ。そのためのきっかけとして自分史額を使ってもらいたい」
小野さんはA-portで「自分史額」制作のための資金を集めている。サイトはこちら。
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小野さんが営む巣鴨のシニア専門写真館で