サイボウズ式編集部より:著名ブロガーをサイボウズ外部から招いて、チームワークに関するコラムを執筆いただく「ブロガーズ・コラム」。今回は、日野瑛太郎さんによる「会社の外とのつながりを作っていくことの大切さ」について。
4月は時節柄、新人向けの記事が増えるものです。インターネット上はもちろんのこと、雑誌や新聞でも「新社会人の心構え」みたいなものが多数掲載され、そういう記事を見るたびに「また新人向けのお説教か」とうんざりしている人もきっと多いことと思います。残念ながらこの記事もそういった類の記事のひとつということになるのですが、せっかくなのでなるべく会社では教えてもらえないようなアドバイスをしたいと思います。
僕がしたいアドバイスは「会社に就職したら、会社の外の人とのつながりを大切にしよう」というものです。新卒で会社に入社して新人研修などを受けると、よく「同期を大切にしろ」というアドバイスを先輩などからもらうことがありますが、僕が今回言いたいのはある意味ではこれと真逆のものです。もちろん、同期も付き合いのひとつとして大切にしたほうがいいのですが、それだけで安心してしまうのは実はとても危険です。
むしろ新入社員は、同期や同僚以上に会社の「外」の友人や知人を大切にしなければいけません。もしもプライベートも含めて飲みに行ったりいっしょに遊んだりする相手が職場の同僚や同期ばかりになっていたとしたら、それは人間関係が会社の内側に対して偏りすぎています。
会社の同僚や同期と仲がいいと短期的には得することもあるかもしれませんが、長期的な職業人生という観点ではむしろ会社の外とのつながりのほうが何倍も大切になります。会社の内側に対してしか人間関係を築くことができないと、最終的には自分の世界が会社の世界という非常に狭い世界で閉じてしまいます。
会社の世界は途方もなく狭い
新社会人になる人たちにぜひ知っておいてもらいたいのは、会社の世界は実は途方もなく狭いということです。日本には400万社以上の会社がありますが、あなたの勤めている会社はそのうちのひとつでしかありません。かなり名の知れた大企業でない限り、多くの人は名前すら知らないでしょう。会社の世界なんてしょせんはそんなものです。
ところが就職して週に5日間、朝から晩まで会社に通う生活をしていると、自分の生活の中で会社が占める割合がどんどん大きくなっていきます。そうやって会社を中心にした生活を送っていくと、いつしか自分の世界が会社という世界に同化していきます。会社の人事異動や同期の出世が最大の関心事になり、会社の業績をまるで自分の人生の一大事のように一喜一憂するようになったらいよいよ危険です。
世間の多くの人たちから見れば狭くて認識すらされていない会社の世界に閉じこもって、その世界の独自ルールで勝った、負けた、うれしい、悲しいなどとやっていてもなんだか虚しいような気はしないでしょうか。そんな狭い世界にとらわれるよりも、外の広い世界を念頭に置いて毎日仕事をしたほうがずっと前向きに働けると僕は思います。
今の会社にずっといられるとは思わないほうがいい
会社という狭い世界にだけ閉じこもることの問題点は、純粋に虚しいというだけではありません。会社の世界と同化してしまうと、たとえば転職や独立といった方法で会社の外に出る選択肢があることすら思い浮かばなくなるおそれがあります。
昭和の時代ならいざ知らず、今時ひとつの会社に一生勤め続けることを前提にキャリアを考えるのはさすがに間違っています。会社も数十年存続すれば時代の変化に合わせて事業内容は変わっていきますし、自分自身の興味や感心も変わっていきます。
その変化によって「いま自分がいるべき場所はここではないな」と思う時期はかなりの確率でやってくると思っておいたほうがいいでしょう。そういう時に重要になるのは、会社の内よりも外とのつながりです。
会社の外とのつながりがきっかけになってそのまま転職先が決まることもありますし、そうでなくても会社の外の人の話を聞くことで「自分が将来どうしたいのか、今後も今の会社でやっていくべきなのか」が明確になることもあります。
これから新しく会社で働こうとしている人たちに早くも辞める時の話をするのはいかがなものかとも思いますが、遅かれ早かれそういうことは起こります。今いる会社を辞めたくなった時に最大限よい選択をするためにも、会社の外の人間関係は大切にしたいものです。
外と比較することで見えてくるものもある
会社を辞めるかどうかはともかく、今いる会社がいい会社なのかどうかを判断するという観点でも会社の外とのつながりは重要になります。会社の外を見ることで、「比較の視点」をもつことができるようになるからです。
たとえば、今の会社のある制度がよい制度なのか悪い制度なのかは、同業他社と比べることでより鮮明に判断できるようになります。同業他社の友人と飲みに行っていろいろと話を聞いてみると、自分の会社の欠点や利点がわかるのでこれは強くおすすめです(ただし、会社の機密情報はうっかり漏らさないようにだけ注意しましょう)。同期で集まって愚痴を言い合うよりもかなり生産的だと言えるでしょう。
また、異業種の人にいろいろと話を聞いてみるのも勉強になります。異業種の人と話をすると、自分の業界ではあたりまえだと思っていたことがまったくあたりまえではなかったということに気づいたり、自分の業界のおかしいところが見えてきたりします。異業種の人の話から仕事のヒントをもらえることもしばしばあります。会社の外とつながることが、会社の内に対してもよい影響をもたらすことになるわけです。
会社の外とつながる方法の具体例
会社の外とつながりたいと思っても、会社の外にほとんど知り合いがおらず、つながる方法がわからないという人もいると思います。そこで最後に、会社の外とつながる方法をいくつか紹介したいと思います。
一番簡単で手っ取り早いのは、ほかの会社に就職した大学時代の友人づてで知り合いを増やすことです。大学時代の友人に彼らの同期を紹介してもらえば、加速度的に他社の知り合いが増えていきます。もっとも、就職をきっかけに遠方に引っ越しをした人などの場合はこの方法では難しいかもしれません。
逆に、今の会社の同期に大学時代の友人を紹介してもらうという方法もあります。いずれにせよ、ポイントは人間関係のハブになるような、社交的な人とつながることです。そういう人が主催する集まりなどに定期的に顔を出していれば、知り合いはどんどん増えていきます。この方法なら別に自分は社交的にならなくても割となんとかなるので、人付き合いが苦手な人にもおすすめできます。
他には、勉強会に出席してみるというのもおすすめの方法です。特にIT系では会社の垣根を超えて盛んに勉強会が開催されているので、自分が興味を持っている技術の勉強会をATNDやconnpassなどで検索して参加してみるとよいと思います。その際には、事前にブログなどで少しでも情報発信をしておくとそれが名刺代わりになって覚えてもらいやすくなります。
ぜひ、会社の内だけでなく外にも自分の世界を広げてみてください。
イラスト:マツナガエイコ
「サイボウズ式」は、サイボウズ株式会社が運営する「新しい価値を生み出すチーム」のための、コラボレーションとITの情報サイトです。
本記事は、2016年4月14日のサイボウズ式掲載記事新入社員が忘れがちな、会社の「外」とつながることの大切さより一部編集して転載しました。